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第11回 Eの悲劇/研修は誰がするのか

第11回です。タイトルは気にしないでください(笑)。
さて、現在、私は教育委員会事務局に出向を命ぜられた扱いとなっています。
私のような教委職員は、誰が研修を行うのかというと、毎度おなじみ地教行法では、

 (教育委員会の職務権限)
第二十一条 教育委員会は、当該地方公共団体が処理する教育に関する事務で、次に掲げるものを管理し、及び執行する。
 八 校長、教員その他の教育関係職員の研修に関すること。

となっています。事務局職員は? というと、学陽書房の本条の逐条解説において、

1 「教員」とは、教特法(教育公務員特例法)第2条第2項に規定する教員をいう(法一八4)。
2 「その他の教育関係職員」とは、公民館、図書館、博物館等の職員のほか、指導主事、社会教育主事その他の事務局職員その他教育事務に従事する職員をいう。

となっています。
はい、私は「その他の事務局職員」という扱いですね。
この条文を引くまでもなく、地方公務員法では、

地方公務員法
 (研修)
第三十九条 職員には、その勤務能率の発揮及び増進のために、研修を受ける機会が与えられなければならない。
2 前項の研修は、任命権者が行うものとする。
3 地方公共団体は、研修の目標、研修に関する計画の指針となるべき事項その他研修に関する基本的な方針を定めるものとする。
4 人事委員会は、研修に関する計画の立案その他研修の方法について任命権者に勧告することができる。

地方公共団体が定める方針により、「任命権者」が行うものとされています。
任命権者は、同じく地方公務員法で、

 (任命権者)
第六条 地方公共団体の長、議会の議長、選挙管理委員会、代表監査委員、教育委員会、人事委員会及び公平委員会並びに警視総監、道府県警察本部長、市町村の消防長(特別区が連合して維持する消防の消防長を含む。)その他法令又は条例に基づく任命権者は、法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律並びにこれに基づく条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、それぞれ職員の任命、人事評価(任用、給与、分限その他の人事管理の基礎とするために、職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行われる勤務成績の評価をいう。以下同じ。)、休職、免職及び懲戒等を行う権限を有するものとする。
2 前項の任命権者は、同項に規定する権限の一部をその補助機関たる上級の地方公務員に委任することができる。

となっていますので、教育委員会(教育長ではありません)は、任命権者です。
つまり、教育委員会事務局職員は、教育委員会が研修を行うこととなりますが、地方公共団体の悉皆研修や職階別研修などで、各執行機関の職員も入っている例が(特に小規模な地方公共団体では)多いのではないでしょうか。
ここで出てくるのが地方自治法です。

地方自治法
第百八十条の七 普通地方公共団体の委員会又は委員は、その権限に属する事務の一部を、当該普通地方公共団体の長と協議して、普通地方公共団体の長の補助機関である職員若しくはその管理に属する支庁若しくは地方事務所、支所若しくは出張所、第二百二条の四第二項に規定する地域自治区の事務所、第二百五十二条の十九第一項に規定する指定都市の区若しくは総合区の事務所若しくはその出張所、保健所その他の行政機関の長に委任し、若しくは普通地方公共団体の長の補助機関である職員若しくはその管理に属する行政機関に属する職員をして補助執行させ、又は専門委員に委託して必要な事項を調査させることができる。ただし、政令で定める事務については、この限りではない。

この協議は、地方公共団体の長、委員会又は委員のどちらからでもできることとされています。
この協議に基づく委任又は補助執行は、地方公共団体によっては、協議内容を例規集に掲載しているところもあります。

市長と教育委員会との地方自治法(昭和22年法律第67号)第180条の2及び第180条の7の規定に基づく協議について(福岡市)
https://www.city.fukuoka.lg.jp/d1w_reiki/reiki_honbun/q003RG00001024.html

 (総務企画局長の補助執行事項)
第4条 委員会は,次に掲げる委員会の権限に属する事務のうち,福岡市教育委員会事務委任規則第2条各号に掲げる事務を除き,総務企画局長に補助執行させる。
 (1) 職員(福岡市立学校職員の給与に関する条例(昭和29年福岡市条例第12号)の適用を受ける職員(高等学校の事務職員を除く。)を除く。以下本項第2号,第5号及び第7号において同じ。)の研修の実施に関すること。ただし,福岡市職員研修規程(昭和51年福岡市達甲第4号)に定める研修に限り,職場研修及び自主研修を除く。

札幌市だと、協議結果の文書が掲載されています。

教育委員会事務の補助執行について(札幌市)
https://www.city.sapporo.jp/ncms/reiki/d1w_reiki_nonframe/H331909160139/H331909160139_j.html

札幌市教育委員会事務の遂行上の利便を図り、次に定めるとおり貴職に補助執行願うことについて、市長と協議が整つたので、よろしくお取計らい願います。
総務局長
 (4) 職員(教育職員を除く。)の研修に関すること

規則で規定している例もあります。
今治市長と委員会等との間における事務の補助執行に関する規則
https://www.city.imabari.ehime.jp/reikishu/reiki_honbun/r059RG00000088.html

 (市長の補助機関たる職員への補助執行)
第3条 教育委員会は、その権限に属する次の各号に掲げる事務を市長の補助機関たる職員に補助執行させる。
 (1) 職員の研修の計画及び実施に関すること。

なお、教育職員の研修については、地教行法上の特例も定められています。

 (研修)
第四十五条 県費負担教職員の研修は、地方公務員法第三十九条第二項の規定にかかわらず、市町村委員会も行うことができる。
2 市町村委員会は、都道府県委員会が行う県費負担教職員の研修に協力しなければならない。
 (中核市に関する特例)
第五十九条 地方自治法第二百五十二条の二十二第一項の中核市(以下「中核市」という。)の県費負担教職員の研修は、第四十五条並びに教育公務員特例法第二十一条第二項、第二十二条の四、第二十三条第一項、第二十四条第一項及び第二十五条の規定にかかわらず、当該中核市の教育委員会が行う。
 (中等教育学校を設置する市町村に関する特例)
第六十一条 市(指定都市を除く。以下この項及び附則第二十八条において同じ。)町村の設置する中等教育学校(後期課程に定時制の課程のみを置くものを除く。以下この条及び附則第二十八条において同じ。)の県費負担教職員の任免、給与(非常勤の講師にあつては、報酬、職務を行うために要する費用の弁償及び期末手当の額)の決定、休職及び懲戒に関する事務は、第三十七条第一項の規定にかかわらず、当該市町村の教育委員会が行う。
2 市(指定都市及び中核市を除く。以下この項において同じ。)町村が設置する中等教育学校の県費負担教職員の研修は、第四十五条並びに教育公務員特例法第二十一条第二項、第二十二条の三から第二十二条の五まで、第二十三条第一項及び第二十四条第一項の規定にかかわらず、当該市町村の教育委員会が行う。
3 中核市が設置する中等教育学校の県費負担教職員に係る第五十九条の規定の適用については、同条中「第二十二条の四」とあるのは、「第二十二条の三から第二十二条の五まで」とする。

政令指定都市については、以前は同法の第58条に規定されていましたが、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成26年法律第51号)(第4次一括法)により、「都道府県から指定都市への事務・権限の移譲等」がされたことにより第58条が削除され、

地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(第4次一括法)の概要
https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/doc/04ikkatsu-gaiyo.pdf

政令指定都市は、地方公務員法に立ち返って、任命権者である政令指定都市教委がすることとなっています(もともと地教行法第58条でそうだったのが、給与負担まで政令指定都市が行うこととなり、人事権の一切を政令指定都市が行うこととなったことから、当該規定が削除されたものです)。

市町村立学校職員給与負担法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000135

ちなみに、給与負担に伴う財源については、国庫負担金及び税源移譲により行うこととされたところです。
県費負担教職員の給与負担等の移譲について
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyuyo/__icsFiles/afieldfile/2017/09/14/1394392_02.pdf

県費負担教職員制度の見直しに係る税源移譲について
https://www.soumu.go.jp/main_content/000770533.pdf

案外、税による充足率が低いのですね(という感想です)。

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