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第7回 教育委員会の職務権限(3)

第7回です。
前回、平成19年改正の経緯については整理しました。
文化財については、文化庁が所管なので、中教審ではなく、文化審議会で整理されています。
文化審議会文化財分科会企画調査会で審議された「中間まとめ」において、
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/bunkazai/kikaku/h29/chukan_matome/pdf/chukan_matome.pdf

文化財が「保存」から「保存と活用」にシフトし、

Ⅳ.その他推進すべき施策
 (1)地方公共団体の体制充実 なお,文化財保護の所管は教育委員会となっているが,景観・まちづくり行政や観光行政など他の行政分野も視野に入れた総合的・一体的な取組を可能とするため,地域の選択で首長部局も文化財保護を担当できるような裁量性の向上についても検討が必要である。ただし,平成25年12月13日文化審議会文化財分科会企画調査会報告「今後の文化財保護行政の在り方について」において挙げられている,文化財保護に関する事務の管理・執行において担保すべき観点(専門的・技術的判断の確保等)を十分に勘案して検討することが必要である。

とされました。これを受けて、平成29年12月8日に文化審議会から「文化財の確実な継承に向けたこれからの時代にふさわしい保存と活用の在り方について(第一次答申)」が出されました。今までの経緯が分かるものとなっていますので、ちょっと長いですが、引用します。

Ⅳ.地方文化財行政の推進力強化
 2.地方文化財保護行政の所管
 現在,地方公共団体における文化財保護に関する事務については教育委員会が管理・執行することとされている(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第21条)。ただし,教育委員会と首長の協議により,教育委員会が所管する事務の一部を,首長部局に委任若しくは補助執行させることができることとされているため(地方自治法第 180 条の7),この仕組みを活用して,教育委員会外に文化財担当部局を設置している地方公共団体もある。文化財を除く文化に関する事務は平成19 年の制度改正により首長部局に移管が可能となったが,文化財保護に関する事務についても,地方公共団体の判断により移管ができる仕組みとしてほしいとの声が地方公共団体から上がっている。
 今後,都道府県や市町村が地域に所在する文化財に関して計画的な取組を進めていくなど,地方文化財行政を更に強化していくに当たり,芸術文化分野を含む文化行政全体としての一体性を確保したり,景観・まちづくり行政,観光行政など他の行政分野も視野に入れ総合的・一体的な取組を可能としたりすることが重要となると考えられる。このため,地方公共団体の選択で首長部局も文化財保護を担当できるような仕組みとすべきかどうかについて検討を行った。
 文化財保護の所管に関しては,これまでも教育委員会制度全体の見直しの中で議論があったところであり,平成 25 年 12 月 13 日文化審議会文化財分科会企画調査会報告「今後の文化財保護行政の在り方について」で整理されたとおり,文化財保護に関する事務の管理・執行において担保すべき観点(文化財保護に関する事務に係る専門的・技術的判断の確保等の四つの要請)を十分に勘案することが必要である。このことを踏まえ,今後とも,文化財保護に関する事務を教育委員会が所管することを基本とすべきである。
しかしながら,文化行政全体としての一体性や,景観・まちづくり等に関する事務との関連性を考慮し,各地方公共団体が文化財保護に関する事務をより一層充実させるために必要かつ効果的と考える場合は,四つの要請に対応できるよう各地方公共団体において環境を整備しつつ,条例により,首長部局において文化財保護に関する事務を執行・管理することを可能とする仕組みとすべきと考えられる。
これによって,文化財の保存と活用の両面から取組が一層進めやすくなると考えられるが,活用面の取組が文化財の本質的価値の毀損に至らないよう,文化財保護に関する事務の執行・管理に当たっては,一段と深く留意することが必要である。
 このため,事務を首長部局に移管することとする場合には,四つの要請に対応するための環境の整備として,現在は任意で地方公共団体に設置できることとされている地方文化財保護審議会に関して,文化財に関して優れた識見を有する者により構成されることとし,必ず置くものとすることを制度上も明確にする必要がある。
 また,地方文化財保護審議会は文化財保護法第 190 条において,諮問に応じるだけでなく,建議(将来の行為に関し自発的に意見を申し出ること)の権限を有することが規定されているが,地方公共団体によって運用にばらつきがあるといった指摘もあることを踏まえ,地方文化財保護審議会が,当該地方公共団体における文化財行政の進捗について適切に報告を受けながら,必要な場面で効果的に機能するよう運用を強化することが必要である。
 加えて,文化財担当部局への専門的な知見を持つ職員の配置の促進や,配置された職員の専門性向上のための研修等の充実,コンプライアンスの徹底,文化財行政に係る透明性の向上,学校教育・社会教育担当部局との日頃からの緊密な連携・協力関係の構築等が強く求められ,これらに総合的に取り組むことにより,四つの要請に適切に対応することが必要である。

 この中で、「地方公共団体の判断により移管ができる仕組みとしてほしいとの声が地方公共団体から上がっている」という文言があります。具体的には、平成29年度の地方分権提案募集において、鳥取県・山口県・徳島県及び大分県より、「文化財保護に関する事務の所管」について、教育委員会と首長部局の選択制を可能とする制度改正を求める提案がなされたとのことです。

第一次答申に向けた検討課題「地方公共団体における文化財保護行政事務の所管」について
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/bunkazai/kikaku/h29/12/pdf/r1397658_16.pdf

これを受け、先述のとおり法改正がされ、平成31年4月1日から施行されました。

文化財保護法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律等について
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/1402097.html

そして、「地方公共団体の長が文化財保護を担当する場合、当該地方公共団体には地方文化財保護審議会を必置とする」という、分権のために義務付けをする改正がされました。(文化財保護法第190条第2項)

これでも端折りましたが、このあたりは、(公財)地方自治総合研究所の上林陽治さん(twitter @tokoroshu)による詳しいレポートがあります。
http://jichisoken.jp/publication/researchpaper/128/No.128_275-303.pdf

最終的には、法施行時の通知に、記載があります。

文化財保護法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律等の施行について(通知)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/pdf/r1402097_24.pdf
(テキストが抜けない…)

第八 地方公共団体における文化財の保護に関する事務の所管関係
 一 趣旨
教育委員会が管理・執行することとされている地方公共団体における文化財の保護に関する事務について、景観・まちづくり等の他の行政との一体的な施策の推進の必要性等を踏まえ、条例により、これらの事務を地方公共団体の長が管理・執行することを可能とすることとした。
二 条例による文化財の保護に関する事務の移管
 ㈠ 地方公共団体は、条例の定めるところにより、当該地方公共団体の長が、文化財の保護に関する事務を管理し、及び執行することができることとしたこと。(改正法による改正後の地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和三一年法律第一六二号。以下「地教行法」という。)第二三条第一項第三号関係)
 ㈡ ㈠の条例の定めるところによりその長が文化財の保護に関する事務を管理し、及び執行することとされた地方公共団体(以下「特定地方公共団体」という。)は、条例の定めるところにより、文化財に関して優れた識見を有する者により構成される地方文化財保護審議会を必ず置くものとしたこと。(法第一九〇条第二項関係)
  〇 地方公共団体の長が管理・執行することができるのは、文化財の保護に関する事務の全てであり、事務の一部については、従前のとおり、地方自治法第一八〇条の七の規定により、教育委員会は、当該地方公共団体の長の補助機関である職員等に委任し、あるいは長の補助機関である職員等をして補助執行させることができること。
  〇 地教行法第二三条第一項において、文化財の保護を除く文化に関する事務(第二号)と文化財の保護に関する事務(第三号)とを並列して規定しているのは、前者のみ又は後者のみを地方公共団体の長が管理・執行することを可能とする趣旨であること。

つまり、文化財以外の文化に関することは、条例の制定とそれに伴う手続(地教行法上のものを含む。)のみで足りるのに対し(実は一部あります。この件については次回以降で)、文化財に関することは、地方文化財保護審議会の設置条例も必要となるということです。また、文化と文化財を分けて管理執行できることとする趣旨ということです。

まだ続きます…

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