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第5回 教育委員会の職務権限

第5回です。

 今回は教育委員会の職務権限についてです。
 はい、毎度おなじみ「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」(地教行法)から行きましょうか。

地方教育行政の組織及び運営に関する法律(抄)

 (教育委員会の職務権限)
第二十一条 教育委員会は、当該地方公共団体が処理する教育に関する事務で、次に掲げるものを管理し、及び執行する。
 一 教育委員会の所管に属する第三十条に規定する学校その他の教育機関(以下「学校その他の教育機関」という。)の設置、管理及び廃止に関すること。
 二 教育委員会の所管に属する学校その他の教育機関の用に供する財産(以下「教育財産」という。)の管理に関すること。
 三 教育委員会及び教育委員会の所管に属する学校その他の教育機関の職員の任免その他の人事に関すること。
 四 学齢生徒及び学齢児童の就学並びに生徒、児童及び幼児の入学、転学及び退学に関すること。
 五 教育委員会の所管に属する学校の組織編制、教育課程、学習指導、生徒指導及び職業指導に関すること。
 六 教科書その他の教材の取扱いに関すること。
 七 校舎その他の施設及び教具その他の設備の整備に関すること。
 八 校長、教員その他の教育関係職員の研修に関すること。
 九 校長、教員その他の教育関係職員並びに生徒、児童及び幼児の保健、安全、厚生及び福利に関すること。
 十 教育委員会の所管に属する学校その他の教育機関の環境衛生に関すること。
 十一 学校給食に関すること。
 十二 青少年教育、女性教育及び公民館の事業その他社会教育に関すること。
 十三 スポーツに関すること。
 十四 文化財の保護に関すること。
 十五 ユネスコ活動に関すること。
 十六 教育に関する法人に関すること。
 十七 教育に係る調査及び基幹統計その他の統計に関すること。
 十八 所掌事務に係る広報及び所掌事務に係る教育行政に関する相談に関すること。
 十九 前各号に掲げるもののほか、当該地方公共団体の区域内における教育に関する事務に関すること。
 (長の職務権限)
第二十二条 地方公共団体の長は、大綱の策定に関する事務のほか、次に掲げる教育に関する事務を管理し、及び執行する。
 一 大学に関すること。
 二 幼保連携型認定こども園に関すること。
 三 私立学校に関すること。
 四 教育財産を取得し、及び処分すること。
 五 教育委員会の所掌に係る事項に関する契約を結ぶこと。
 六 前号に掲げるもののほか、教育委員会の所掌に係る事項に関する予算を執行すること。

 地教行法第30条の話は改めて書きたいとは思いますが、今回は省略します。
 第21条で限定列挙されていますが、第19号で包括規定になっていることから、実際には第22条で規定されているもの以外について幅広く推定されているものとなっています。

 さて、平成19年の地教行法を含む教育3法の大改正で生まれた職務権限の「特例」ですが、次のような条文です。

 (職務権限の特例)
第二十三条 前二条の規定にかかわらず、地方公共団体は、前条各号に掲げるもののほか、条例の定めるところにより、当該地方公共団体の長が、次の各号に掲げる教育に関する事務のいずれか又は全てを管理し、及び執行することとすることができる。
 一 図書館、博物館、公民館その他の社会教育に関する教育機関のうち当該条例で定めるもの(以下「特定社会教育機関」という。)の設置、管理及び廃止に関すること(第二十一条第七号から第九号まで及び第十二号に掲げる事務のうち、特定社会教育機関のみに係るものを含む。)。
 二 スポーツに関すること(学校における体育に関することを除く。)。
 三 文化に関すること(次号に掲げるものを除く。)。
 四 文化財の保護に関すること。
2 地方公共団体の議会は、前項の条例の制定又は改廃の議決をする前に、当該地方公共団体の教育委員会の意見を聴かなければならない。

 平成19年の改正(平成20年4月1日施行)時に、現行の第2号及び第3号が規定されました。その後、平成31年4月施行の「文化財保護法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」により文化財の保護が追加、令和元年6月7日施行の「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」により特定社会教育機関が追加されました。
 これは、平成19年改正の概要によると、「スポーツ及び文化行政について、地域の実情や住民のニーズに応じて、「地域づくり」という観点から他の地域振興等の関連行政とあわせて地方公共団体の長において一元的に所掌することができることとする趣旨」から、「条例で定めることにより、地方公共団体の長がその事務を管理・執行できる」こととしたとしています。

教育委員会制度の見直しに伴う学校教育以外の分野の在り方について
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo1/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2013/08/27/1338909_01.pdf

 「管理し、及び執行することとすることができる」という文言が持って回った言い方ですが、行政手続法などにも「することとすることができる」という表現があるのですね。
 さて、「条例の定めるところにより」という文言が出てきましたので、条例を見てみましょう。

市原市教育に関する事務の職務権限の特例に関する条例
https://www.city.ichihara.chiba.jp/reiki_int/reiki_honbun/g020RG00001226.html

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号)第23条第1項の規定により、教育に関する事務のうちスポーツに関する事務(学校における体育に関する事務を除く。)は、市長が管理し、及び執行することとする。

市原市はスポーツのみの規定ですので、本文は条建てしていません。

富良野市教育委員会の職務権限に属する事務の管理及び執行の特例に関する条例
https://en3-jg.d1-law.com/furano/d1w_reiki/H427901010004/H427901010004.html

 (趣旨)
第1条 この条例は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号)第23条の規定に基づき、富良野市教育委員会(以下「委員会」という。)の職務権限に属する事務の管理及び執行の特例を定めるものとする。
 (職務権限の特例)
第2条 次に掲げる教育に関する事務は、市長が管理し、及び執行することとすることができる。
 (1) スポーツに関すること(学校における体育に関することを除く。)。
 (2) 文化に関すること(文化財の保護に関することを除く。)。

 平成19年改正の部分についての規定ですが、「することとすることが『できる』」と条例で定めると、では実際にはどうするのかというところに疑問が残りますね。

京田辺市教育に関する事務の職務権限の特例に関する条例
https://www.kyotanabe.jp/reiki/reiki_honbun/k113RG00001465.html

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号)第23条第1項の規定に基づき、次に掲げる教育に関する事務は、市長が管理し、及び執行することとする。
 (1) スポーツに関すること(学校における体育に関することを除く。)。
 (2) 文化に関すること(次号に掲げるものを除く。)。
 (3) 文化財の保護に関すること。

 文化財の保護まで加わりました。こちらは3号までありますが、条建てしていません。

三条市教育事務の職務権限の特例に関する条例
https://www.city.sanjo.niigata.jp/section/reiki/reiki_int/reiki_honbun/r182RG00000786.html

 (趣旨)
第1条 この条例は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号。以下「法」という。)第23条の規定に基づき、教育に関する事務(以下「教育事務」という。)の職務権限の特例について必要な事項を定めるものとする。
 (市長が管理及び執行をする教育事務)
第2条 市長は、次に掲げる教育事務を管理し、及び執行するものとする。
 (1) 公民館、図書館、三条市リージョンセンター、三条市諸橋博士漢学の里、三条市歴史民俗産業資料館、三条市下田郷資料館及び三条市丸井今井邸の設置、管理及び廃止に関すること(法第21条第7号から第9号まで及び第12号に掲げる事務のうち、これらの機関に係るものを含む。)。
 (2) スポーツに関すること(学校における体育に関することを除く。)。
 (3) 文化に関すること(次号に掲げるものを除く。)。
 (4) 文化財の保護に関すること。
 (委任)
第3条 この条例に定めるもののほか必要な事項は、規則で定める。

 これまでの条例は列挙する場合でしたが、こんな大胆な(申し訳ありません)条例もあります。
彦根市地方教育行政の組織及び運営に関する法律第23条第1項の規定に基づく職務権限の特例に関する条例
https://www.city.hikone.lg.jp/section/reiki_int/act/frame/frame110001611.htm

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号)第23条第1項の規定に基づき、市長が、同条各号に掲げる教育に関する事務の全てを管理し、および執行するものとする。

 ん、同条各号…
 これは、法律が対象範囲を変更したら、自動的に市の体制も変えるということなのでしょうか。
 特定社会教育機関の改正時は、公布の日から施行でしたので、対応が大変そうですよね…。
 それはさておき、前の三条市もそうですが、主語が「市長は(が)」になっています。「事務は」となっているものとの差異がありますね。

 職務権限の特例は、論点が多岐にわたりますし、事務作業も大変なので改めてまた書きたいと思います。

 ご意見、ご感想お待ちしています。

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