インクルーシブ教育の理想と現実

インクルーシブ教育の理想と現実

昨年のことになってしまいましたが、
12月4日に東京大学大学院教育学研究科附属
バリアフリー教育開発研究センター
の主催の「インクルーシブ教育定例研究会」
zoom会議に参加させていただきました。

その日は、講師として文部科学省特別支援
課長の山田泰造様が講話されていました。
その中で私が関心のあった山田課長の発言
と、発言の根拠になっている資料と併せて
私個人の意見を記載します。

なお、資料につきましては
参議院議員浜田聡事務所のご協力をいただ
き、この時の山田課長の発言の根拠となって
いる資料の提供を要望し、文部科学省から
提供いただきました。

●『4.27通知』について
4.27通知とは、2022年4月27日に文部
科学省から各教育委員会に出された通知で、
「特別支援学級在籍の生徒が通常級で過ごす
時間数の上限は半分以下」というものです。

これに対して山田課長は下記のようにその
理由を答えています。

・効果的な交流及び共同学習ができるため
 には半分が限界だろう。
・教師の人数も(必要だから)配置されている
・通常級に在籍しても適応できているのであれば
 通常級へ異動させるべき。
・半分以上通常級で授業を受けれる生徒はできる
 だけ通常級で学ばせてほしい。
・むしろインクルーシブを促すための通知
・保護者と本人の意思の尊重については最終的な
 決定は教育委員会が行う


下記の資料を見てください

この文部科学省が実施した調査によると、
調査を実施した10の地方自治体の学校で
小学校3年生以上の特別支援学級の生徒が半分
以上通常級で過ごしているという結果になって
います。

この結果を、予算を割り当てる文部科学省側
からみると、かなり多くの学校が教員の人数
確保するために通常級でも指導可能な子ども
も恣意的に特別支援学級に在籍させ、教員数
を多めに確保しているのではないか
ということなのではないかと考えられます。

このデータを見て感想は色々あると思いますが、
「通常級で過ごす時間がこんなに多いのが普通
なの?」というのが私の率直な感想でした。

私は現在は静岡県浜松市にいますが、
特別支援学級在籍している生徒、自閉情緒で
知的に課題がない子でも、保護者からの要望が
あっても年間に1回も交流が実施されていない
というケースが何件もあります。
それからするとちょっと驚きの数字でした。

しかし、資料を読む見てもらうと分かりますが、
調査を実施した10の自治体のうち2つが
大阪府・大阪市でした。

大阪では、以前から積極的に障害者を通常級の
中で交流させるという教育方針で取り組まれて
きており、言ってみれば、日本国内において、
インクルーシブ教育の先端を行っていると言っ
てもいいと思います。

調査対象となった他の自治体の実情は私はあま
り詳しくありませんが、大阪と同様、イン
クルーシブ教育が比較的進んでいる自治体が選定
され、調査されたのではないかと。

山田課長は、現在、通級については、本来必要な
人数の教員が予算の関係で割り手られていないが、
令和8年には通級には13人に1人が必ず確実に
着くことが決まっているので、できるだけこちら
の制度を利用してもらえるように、半分以上、
通常級で過ごすことができるのではれば、通常級
へ異動し、通級の制度を積極的に活用してほしい。

ということでした。
通級を推進することが、文部科学省が想定する
「インクルーシブ教育」教育のようでした。

なんとなくすっきりしない感じではあるものの、
特別支援教育の推進、インクルーシブ教育、予算
といった解を、ここに見出そうとしているという
ことは、
「理屈として」私は理解することはできました。


 

 

最後に、驚きの発言がありましたので紹介します

・臨時教員の特別支援学級に配置される割合は
 正規職員の2倍
・正規は10%臨時は20%台後半

この件、私のいる浜松市では、いくつもこういった
実例や相談が寄せられていましたが、文部科学省
としてもその実態をつかんでいました。

下記は 令和4年1月31日公表 「教師不足」に
関する実態調査の資料からです。


表の下の(3)小・中学校の学級担任の雇用形態
別内訳のところに臨時的任用教員との特別支援
学級を受けもつ割合が記載されています。

期限付きの先生は断れない。正教員は断る。
そういう人事に甘んじる校長。山田課長としても、
この押し付けあっているような実態が起きている
ということを伝えることで暗に教育現場や教師
たちに牽制しているのかもしれません。

だったとしたら、そこは、もっと
はっきり言ってほしいところです。

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