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部下の人々がすごい良い製品を作っていたので、どんどん深みにハマっていった


 このシリーズ記事の最初の方で書いたが、オフィス家具は昔はスチール家具と呼ばれた。材料の多くがスチール製であったからであるが、木製中心の家庭用家具と違い、堅牢性が求められることをよくあらわしている。時代は移って今やオフィス家具にも木製品が多様に使用されるようになり、近年はほんとに茶色い家具が多くなったものだと感じる。カジュアル化の象徴だ。

 一般的にオフィス家具のメーカーでは、木製家具の生産自体は外部委託になることが多い。MDFとメラミンの天板などは自社のプラントで生産されることも多いが、いわゆる箱モノや脚モノといった家具でとりわけ表面材が木製である製品は、比較的小規模な工場で手作業多めで作られることが多い。理由は簡単、傷つきやすく繊細な扱いが要求されるからだ。こういった事情から、サプライチェーンの終盤に位置する日本のオフィス家具メーカーにとって、木工家具とは手作業かつ小規模で作られる製品、というのが常識だった。今回の一連の源流の旅で認識を改めたのは、確かに表面材に近い工程になると手作業・小規模になるが、その前工程が想像以上に大きなプラントを要するモノだということだった。そのことが非常によくわかるので、ぜひ源流の旅1〜5を参照してほしい。

 北東北の旅だったSeason1についでSeason2と位置付けた中部地方への旅は前回の下呂温泉を経て今回静岡を訪れている。撮影日はよく晴れており、富士山がよく見えている。関西出身の身としては、東京はじめ関東一円で富士山が見える場所というのが思った以上に多いなという印象を持っていたが、静岡から臨む富士山はそのレベルでは全くなく、流石に近くて迫力があった。

 北東北の製材工程のダイナミックな機械加工から一転、今回の製造現場は規模こそ小さくないが、手作業がグッと多くなり、オフィス家具メーカーにとって馴染みのある雰囲気だった。一方、共通していたのは経営者の方含め若い世代が多いことで、順調に世代交代が進んでいることを物語っている。自分が歳をとってきただけの話かもしれないが。

 規模的に小さくない、といったのはこの製品は狭い場所では生産しにくいことを意味している。下呂温泉のアルミ部材の工場からは分割されたパネル状の天板が入ってくるが、ここでは納入先で組み立てるサイズに実際に組み立てて研磨を行う。そのため今回の展示会用製品やショールーム用製品では9.6メートルのサイズのものを組み立てねばならず、それだけのスペースが必要ということになる。建屋自体に余裕がなければ受けられない仕事だ。

 これまで“耳”と呼んでいる長手方向のエッジは紹介してきたが、短手方向もだいぶ凝っている。その組み付けを今回見ることができた。水平面の表面材と一体感を出すために短冊状にスライスしたものをつなげエッジ材にしてアルミ部材面に接着する。誠に面倒で気を使う工程ではあるが、一枚板感を出すための工夫としては秀逸なこだわりだ。無垢材のテイストでありながら無垢材では絶対できない形状を実現して高い強度が求められるオフィスユースの製品を作る、という製品の趣旨に則している。演出と言われればそれまでのような気もするが、木製品独自の弱みを克服しないことには用途が広がらないではないか。「あたかも一枚板のように感じる」ということが価値なのであって使用感を楽しんでほしい。

 だんだん製品に近づいてきているのでこっちもテンションが上がってしまう。前回の記事で言及した展示会は2週間ほど前に開催され、予想以上の来場者で盛り上がった。中心にドンと据えたこの製品は堂々たる主役であって、来場者の関心も高かった。前回までの動画も製品の近くで流してもらい嬉しかった。興味を持って立ち止まっている人に私自身も積極的に構造や工夫を動画を見せながら嬉々として説明してしまった。

 中部地方の旅は前回と今回の2本で終え、いよいよファイナルシーズンとして東京編を編集中だ。こんな本数の動画を制作する予定ではなかったのだが、私自身ハマってしまった。たった三桁の視聴回数でしかないが、誰かに見てもらえていると思うとただ嬉しい。



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木と金属が合体した異形のパネルはいよいよ天板としての仕上げ工程へ。手触り重視のReal Woodテイストはこの繊細な工程で紡ぎ出される。最後は手の感触ー Season2中部地方天板加工の旅、2話目。 

00:14 ヤンチャな耳のとりつけ

 00:46 素地仕上げー触りたくなる 

01:32 厚突だからこそ出る節

 02:13 木工から見た凄さ 

02:45 ここは譲れない、年輪エッジ 

03:15 研磨は手の感触

 03:58 2枚合わせはガンが長い 

04:20 旅行記 

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