ガンマ・ガンマ・ドンドコガンマ(オーレンジャー 第37話~第38話)
漢字で書くと「顔魔神」とでもなるのだろうか。奇妙で大きな古びたお面に、それは姿を隠している。金色の鍵を額の鍵穴に差し込んで、魔法の呪文を唱えると、マントを纏った巨神が姿を現す。時代がかったセリフ回しの彼は、おとぎ話のランプの精よろしく、願い事を何でも叶えてくれるのだという。条件はただ一つ、その願いが彼の気にいる楽しいものであるかどうかだ。
というわけで、ガンマジン登場の前後編である。
第37話「拙者ガンマジン」
オーレンジャーの大ファンで、特に裕司と親しくしている少年・悟。せっかく現像してもらった裕司との2ショット写真をいじめっ子たちに破り捨てられてしまい、しょんぼりしている彼の目の前に、ひとつの不思議なお面が現れる。導かれるように鍵を回すと、現れたのは巨大な騎士・ガンマジンだ。
六億年前からやってきたリキが「自分の時代でも一度見たことがある」と述べていたが、それが本当ならガンマジンはさらに古い時代のものということになる。なんだかサムライのような言葉遣いをしているが、もしかして江戸時代辺りにも復活したことがあったのかもしれない。封印されている間の外界のことには疎いらしく、悟に教えられて初めてオーレンジャーの存在を知ったようだ。
悟の望みにより、あっという間にいじめっ子たちを片付けたガンマジン。気を良くした悟は、次に「オーブロッカーのコックピットに乗ってみたい」と願い事をする。何とも子どもらしく夢のあるお願い! ガンマジンは快諾し、悟の願いをかなえるために行動を開始する。ランプの精なら指を一回鳴らすだけでたちまちコックピットを作り上げてしまうところだが、どちらかというと物理タイプであるガンマジンにそんな魔法は使えない。
というわけなので、ガンマジンはいそいそとオーブロッカーを鹵獲しに出かける。ロボの格納場所を聞き出すためならば、たまたま見かけた裕司を誘拐・監禁するのもお茶の子さいさい。ガンマジンのやり方は求めるものに向かって最短距離をガンガン突き進むものだが、人の心の機微をすべて無視した上に成り立っているのがなんとも「神」らしい。悟の大好きな裕司兄ちゃんを拐して強引に口を割らせようとすることと、悟の願いをなんとしても叶えて喜ばせようとすることは、ガンマジンの中では特段矛盾などしていないのである。
オーレンジャーたちはボンバー・ザ・グレートの新たなる刺客、バラポリスへの対応でてんてこまいである。警察署長に扮したバラポリスと警官隊に扮したバーロ兵たちは、吾郎たちに向かって銃を撃ちまくる。メンバーを一人欠いての戦いでは、オーレンジャー側もなかなか埒が明かない。
悟の助けによってなんとか逃げ出してきた裕司が合流し、一同はオーブロッカーを召喚。巨大化したバラポリスに立ち向かうが、そこに機は熟したとばかりに飛び込んできたのが他でもないガンマジンである。彼の目的はオーブロッカーただ一つ。必死にやめるよう叫ぶ悟に「今乗せてあげるから」とニコニコ笑いかけ、ガンマジンはオーブロッカーに攻撃の構え。この全く話を聞いてくれない感じ、またしても「神」ムーブと言わざるを得ない。
地上の悟には、ガンマジンとその鍵を狙うボンバー・ザ・グレートの魔の手が迫る。ガンマジンの存在はバラノイア帝国でも有名らしい。リキの時代に姿を見せているのだから、そのころ人間から分派した機械生命体であるバッカスフンドたちが知っているのも当然か。
第38話「魔神はつらいよ」
ブルドントがガンマジンを手中に収めたのを見て、ころっと態度を変えてすり寄ってくるアチャとコチャ。さっきまでボンバー・ザ・グレート命とわめいていたのが嘘のようである。現金な二名が即座に態度を変えてしまうほど、ガンマジンの強大さはバラノイア帝国内に知れ渡っているようだ。
涙を流しながら「ただ一度オーブロッカーのコックピットに乗ってみたいだけ」とガンマジンにねだるブルドント。その身体には一本の管が繋がれており、管の先ではアチャが懸命に手押しポンプを押している。ポンプによって押し出された水は管からブルドントの顔面に至り、まるで涙のように彼の顔を濡らすのである。どうやらバッカスフンドは、ブルドントのボディに自力で涙を流す機能など搭載しなかったようだ。ダダッダー。
ボンバー・ザ・グレートに鍵を奪われてしまった悟は、もはやガンマジンのご主人様ではなくなってしまった。それでも悟はひとりの友として、倒れた木に足をはさまれながらも、巨大な友人に呼びかける。いわく、悪いことと良いことのわからないガンマジンなんて大嫌いだ、と。
はっとしたようなガンマジンはやっと悟に向き合い、彼を倒木から助け出す。ただ人の望みをかなえるだけの鏡のような神であったガンマジンに、楽しい/楽しくない以外の判断基準が生まれた瞬間である。
そこへ追い打ちをかけるように、ブルドントがうっかり本音を漏らす。今にもオーブロッカーを討ち果たそうとするバラポリスに向かって、「それを破壊するのは自分だ」と声を張り上げてしまったのだ。
一度聞き入れた願い事はご主人が替わらない限り原則キャンセルできない決まりのガンマジンだが、例外として、彼を騙すような願い事については叶えなくてもよいことになっている。「オーブロッカーのコックピットに乗れればそれだけでいい、悪いことなんてしない」と懇願したあの時の涙は全て嘘! 結局、怒れるガンマジンにお仕置きされるブルドントである。あともう一歩詰めが甘かったなあ。
ガンマジンの使う魔神一刀流の奥義は、斬撃にも刺突にもあらず、刀身から出た光線で敵を拘束し、びたんびたんと引きずり回して叩きつけるというワイルドな大技である。それは剣技と言えるのか?
ともあれバラポリスは倒される。オーブロッカーがガンマジンに執拗に狙われることも無くなった。めでたしめでたしと行きたいところだがそうもいかない。これだけやらかしたウッカリ最強戦力であるガンマジンは、再びお面にその身を封じ、悟の前から飛び立っていくのであった。
鍵による封印解除やお面がマントになるギミックなど、どう考えても玩具映えしそうなガンマジン。おそらくだが、いつかの未来はそこそこ近距離なのではなかろうか……。
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