生物分類技能検定2級動物部門の学習に大切なこと
先日、生物分類技能検定2級動物部門に関し、合格体験記を書きました。今度はこれまでの勉強を振り返り、私のような素人・初学者が合格を目指すときに大事であろう事柄をまとめてみました。反省して『ああすればよかった』のようなことも含みます。ギリギリ合格の素人ですので、このような投稿を書くべきではないと思いつつも、素人・初学者だからこそ誰かの役に立てる可能性もあるので、私なりのメソッドとして書いてみます。
過去問をやる
どの資格試験でも当たり前ですが、この検定でも過去問は大変重要です。最近販売されている過去問には4年分しか掲載されていないので、可能であればさらに遡って過去問を入手した方が良いと思います。私は合格まで3年を要したこともあり、
・2級動物部門:2015~2021年までの7年分
・3級:2015~2021年までの7年分
の過去問を持っていて、選択肢を勉強のソースとして活用しました。植物部門や水圏生物部門の過去問も持っているのは合格体験記に記載したとおりですが、2級動物対策としては不要かと思います。
この検定では、過去問がそのまま出ることはほとんどありませんが、どのような問題が出題されるのか、出題される種が何であるかなど、出題傾向を把握できます。例えば昆虫は日本の在来種だけで数万種いると思いますが、出題されることが多いのはメジャーな種・希少種・外来種です。数万種の同定能力が問われているわけではないです。それ以外の種が出題されたとしてもみんな間違えるか、運を試されてるだけです。また、過去に選択肢として出題された種は、それが正解肢でなくとも調べたほうが良いです。選択肢も重要な勉強のソースです。
なお、古い過去問は、現在の視点で正解がないパターンがあります。例えば規制に変化が生じて、当時は正答だったが、現在は正答が存在しない問題が存在します。時には過去問の解答を疑うことも必要です。
図鑑を揃える
過去問を使い倒すにも、図鑑が必要です。おそらく2級動物部門に挑戦する方は、興味の範囲内ですでに図鑑を持っていると思います。ですが興味の範囲外についても、図鑑が必要になります。図鑑はある程度なんでもよいと思いますが、属や学名の記載があったほうが良いです。また、写真やスケッチが多く使われているもの、識別方法の解説があるものはもっと良いです。ただし、そもそも哺乳・両爬・鳥・魚・昆虫で出題傾向が異なるため、図鑑の選択にあたり『このような図鑑がよい』という画一的な指針はないです。試験対策観点では哺乳・両爬・鳥・魚・昆虫の出題傾向に沿った図鑑を揃えたほうが良いのかもしれませんが、図鑑は試験後も使用するので、深く考えすぎずに、一冊を使い倒す方針が良いと思います。一冊を使い倒すという意味では、掲載種数が多すぎる図鑑よりかは程々の図鑑のほうが使いやすいと思います。
図書館にも図鑑があると思いますが、私は図書館に行くのが面倒なので図鑑を手元に取り揃えました。図書館が近所にあったり、職場や学校に図鑑がある方はそちらを活用しても良いと思いますが、図鑑の発行年は気にすべきです。図鑑の分類が古く、現在の分類とは異なる場合があるからです。例えば最近の分類見直しとしては、ウグイス科がキクイタダキ科やムシクイ科などに細分化されたり、サギ科がコウノトリ目からペリカン目に再分類されたりなどがあります。他にも多数あるので、図鑑は新しいものを使用するに越したことはありません。
ネットを活用する
規制は都度変わるため、過去問だけでなく国内希少野生動植物種、環境省レッドリスト、特定外来生物一覧をネットで参照して目を通しておくことが必要です。各学会より目録の一部がネット公開されいてるケースもあります。目録をみると最新の分類を確認できます。Wikipediaは手元の図鑑に載っていない種を調べたり、生物学や生物の分類を調べる際に役に立ちます (情報が古い可能性があるので、その点は留意が必要です)。
生物の分類に関していえば、図鑑や資料が採用している目録や学説、和名はまちまちであり、さらに時間経過で学説の主流が変わることもあり、表記の揺れに慣れておく必要があります。こういったことに慣れるのにもネットは有用です。図鑑一冊だけでは一点の表記しか掲載されていない場合があり、対応しきれません。例えばモグラの目を食虫目・モグラ目・トガリネズミ目・トガリネズミ形目・真無盲腸目のように、資料によって異なる表記がされている場合があります。仮に試験で食虫目・モグラ目・トガリネズミ目・トガリネズミ形目・真無盲腸目のどれで問われても、答えられるようにしたほうがよいです。余談ですが、目録を参照するかぎり真無盲腸目が最新ですが、過去の出題では異なる表記になっています。そして『真無盲腸』より『食虫』のほうが市民権を得ているためか、『食虫類』のような表記も多いです。
メジャーな種を知る
これを把握するのがとても難しいです。これこそプロと素人の最大の差と思われます。最後まで悩まされました。例えば写真問題で問われる種は、
①ある程度の大きさを持ち (目視で同定できるレベル)、
②フィールドでよく見かける種 (日本全国とは限らず地域的な場合もあり) や、
③数が少なくとも知っておくべき種 (生態系の頂点にいる種など) 、あるいは
④プロなら知っておくべき種 (規制に関連する種など) で、
⑤他の種とは明らかに識別可能な特徴のある種 (姿かたちと撮影場所が分かればそれだけで同定可能な種)
が出題されやすいです。②③あたりがメジャーな種たる条件になると思いますが、②③に該当するかどうかは、図鑑を眺めても載っていることは少ないです。主観に頼る以外には、観察頻度を全国で計測しない限り分かりませんので、当たり前といえば当たり前です。
野外に出れば、地元の鳥類や昆虫類なら観察できます。それがメジャーな種である場合は大いにあります。自然が教科書になります。ただし、自己の経験に基づき『自分は見たことがない』→『フィールドであまり見かけない』→『だから試験に出ない』とする論法は正しくないので、注意が必要です。それを補う手段として、哺乳・両爬・鳥・魚・昆虫がすべて載っているような、簡易な生き物図鑑に載っているか否かは、メジャーであるか否かを区別するための指針の一つ (情報ソースの一つ) になり得ます。なお、観察頻度が書かれている鳥類図鑑はありまして、こちらは大変重宝しました。
参考書を探す
共通問題では動物だけでなく、一般的な生物学、植物、水圏生物、進化、分類学、生態系、調査業務、標本作成、学名の命名ルールなど、広い範囲が出題されます。生物学については、私は高校生物を履修してないため知識がなく、大変苦労しました。中学生物・高校生物が直接試験問題になることは少ないですが、多くの事項を理解する上での基礎になると思います。あとは分類学や海洋生物学の本 (読み物) を参考にしました。ブルーバックスやサイエンスパレット (丸善)、科学のとびら (東京化学同人) あたりの本は参考になる図書が多いです。他にはビオトープ管理士のテキストは生態系の理解に役立ちました。共通問題 (全20問) には捨てるのがもったいない問題が結構あるので、共通問題対策は割と重要かと思います。
あとはとにかく覚える
この検定ではテキストがないし、過去問には解説がないし、過去問からの出題はあまりないし、図鑑をうっすらぼーっと眺めていても記憶として定着しないし、素人・初学者ができることとしては、出題傾向を分析し、インプットし、覚えたことを繰り返しアウトプットするしかないです。さらには図鑑をみて周辺領域まで手を出す必要があります。私は勉強1年目で118時間程勉強しましたが、それだけでは勉強しきれず、試験に間に合いませんでした。結果はスケッチ抜きで58点 (スケッチ0点)。118時間というのは月~金毎日2時間ずつ勉強しても3か月かかる分量です。それでも合格には足りませんでした。
もっとも、大学や専門学校等で生物を勉強されている方や、そもそも業務に従事されている方は、短期間で合格できる可能性があります。私はITエンジニアですが、その業務経験のおかげで、情報処理技術者試験のテキストや過去問を斜め読みして、何度か数打てば合格する感覚をもっています。1か月150時間の業務量だとするならば、1年間で1800時間の経験を積めるわけですから、どの資格でもプロが有利なのは当たり前ではあります。素人は経験を勉強で補うしかないです。
この検定は競争試験ではないので、素人・初学者でもあきらめずに勉強していればいつかは合格します。私は3年かかりましたが、もっと早く合格できる方もいると思います。皆様のご健闘を、陰ながら応援しています。
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