鎌倉を歩く
冬です。
大寒波がやって来るというニュースを聞いて震えています。
寒いのは好きだし、雪も降ってくれたら嬉しい。
わたしはまだ学生なので、天候の悪さで身動きが取れなくなることをそれほど恐れていないのだと思う。
でも生活が破壊されることは望んでいない。
生活が支障が出なければ、雪も台風もときどき来て良いよ。
旅行の計画を立てている。
大学の後期の授業はもう終わるのだけれど、塾講師のバイトで受験生を抱えているので、旅行に行けるのは受験が終わって3月に入る頃になる。
ひとりで旅行をしてみたい。
というより、旅行に誘えるほどの仲の友達がほとんど皆無なので、家族と行かないのであればひとりで旅行するしかないというのが現実である。
同じ理由でディズニーリゾートにもそこそこの期間行っていない。高校生の時はいちばん頻繁に行っていたけれど…。
あとはゼミでの旅行がある。3月に2回。草津と銀山。ありがたい!
冬期講習のバイト代が心強い。色々な所へ行きたい。
旅行の質というものについて考えている。
ゼミで課外へ行くと、毎回裏道的な場所を巡ることになる。民俗学の先生のゼミなので、伝承の地や、路傍のお地蔵さんや、古道(つまり山道)を見て回るのだ。
この間の共通テストの日は学校が休みだったので、鎌倉散歩と題された課外企画が開催された。
大船駅に10時集合。との連絡を見て、まさか大船から鎌倉まで歩くのか…?と思っていたら、そのまさかであった。
鎌倉は山に囲まれた自然の要塞で、大船駅はその山壁の外側に位置する。県道があるけれど、このゼミでそんな温い回り方をする訳がなかった。
大船駅から、建長寺を経由し、長谷にあるフレンチトーストのお店へ向かうのだという。
まずは大船駅から常楽寺へ。
お寺の裏側には、北条泰時と、彼を手助けした宮姫(か?)が祀られている。
常楽寺から住宅地の坂を上っていき、山を切り倒した古道を渡る。
地層が剥き出しになっていて、どうやって掘り出したのだろうかと考える。
現代に生きるわたしたちは、あまりにも簡単に生きている。こんな山を削るようなことはとても出来ないと思った。
さらに住宅地の急坂を上って、六国見山森林公園へ入っていく。すでに休憩したい気分だが、ここから頂上近くの展望台までずっと階段が続く。
ゴネて、グリコで階段を登った。段数は数えていなかったけれど、「グリコ」で進めても進んだ気がしないくらいに道のりは長かったし、それぞれが駆け引きを行えるようになるくらいにはジャンケンをした。
展望台からは相模湾と富士山が見えた。
登ってきたのとは別の山道を進んで、山を降りていく。
一度住宅街へ出て、「石かわコーヒー」というお店で美味しいアイスコーヒーを買う。先生のおすすめである。
なぜホットではなくてアイスなのかというと、山道を歩いて体温が上がっていたからである。
その日のわたしはバケットハットにチェックのロングコート、ブラウンのハイネックのセーターに白いワイドパンツという出で立ちであった。
まじで暑い。
これは普通の鎌倉観光向けの格好だ!!!!
アイスコーヒーの、美味しいこと…。
山道も一段落かと思ったら、これからさらに一山越えて建長寺に降りていくらしい。
もう一度山登りである。
わたしも体力は無いが、卒論明けの先輩たちはよりしんどかったのではないかと思う。
息も絶え絶えに嶺を伝う狭い道をまた登っていって、展望台へ、再び相模湾と相見える。
目下には寺社が見える。
こんなに騒いでいるが、標高は150m程度だし、比較的定番のハイキングコースだという。
そう、「ハイキング」なのだこれは!
騒いでいるのは「鎌倉散歩」という企画名に裏切られたからで、さらに我々が文学部一行だからである。
足の筋肉を震わせながら石段を下っていくと(やっと下り…!)、建長寺の奥にある半蔵坊へ出る。
半蔵坊とは天狗のことらしく、天狗の石像が数多く置かれていた。
やって来る参拝者を天狗たちが山の上から見下ろす構図であるが、わたしたちはさらにその上から降りてきたので、実質神の使いとかである。
建長寺の入口までやってくると観光客も多くいて、ようやく人里に戻ってきた感覚がした。
時刻は14時。
目的地のフレンチトーストの予約時間が迫っていたので、建長寺から鎌倉駅まではバス、そこから長谷まではタクシーに乗ることにした。ありがたい。
先生はグルメで、ゼミのあとはいつも必ず美味しいお店を予約しておいてくれる。
今回は坂下のパンスイーツ専門カフェ「café recette(ルセット)」というお店らしい。
靴を脱いで古民家をリノベーションした店内に入ると、木の家具が上品に佇む落ち着いた空間があった。
歩き疲れた足を解して、開放的な気分になる。
1番人気の「究極のフレンチトースト」を頼むと、しばらくの待ち時間があって、やがてひと目で育ちが良いとわかるフレンチトーストがサーブされたのだった。
美しい正方形のパンには極上の焼き目がついていて、その上にスライスアーモンドとピスタチオが散らされている。最高!
分厚い生地が卵液に浸って、信じられないくらいふわふわの食感になっていた。優しい甘さだった。
これが天上の幸せだ…!
先生と先輩たちはこのあと極楽寺へ行き、夜にはお蕎麦の懐石を食べに行くのだというが、わたしはバイトがあるのでここで帰ることになる。
さらば蕎麦。
山に囲まれた都・鎌倉にとって、山はこの世とあの世の境であったという。
あるいは、由比ヶ浜がかつて処刑された遺体の捨て場であったとか。
今日は鎌倉の「地獄」を巡って、最後に「浄土」へ行く、そういう趣旨の散歩だったのだ。
で、どうだろうか。
「旅の質」の話である。
ものすごく充実している。
良質の旅というのはこういうものなのだと思う。
こういう旅を経験してしまって、リゾートホテルに泊まって有名な観光施設をちょいちょいと訪れていた過去の旅行が急激に薄いもののように思えてきた。
うん、思い出の価値が下がったというよりも、なんであのときの旅行でこれをやってこなかったんだ…!という気持ちである。
旅行に行った回数はあれど、旅行での経験には乏しい、という自覚を得るに至ったのである。
そして、これから計画するひとり旅が生易しいものになってはならない!
もう少しましな旅行を企画できるようになりたい!!!!
ということで、ひとり旅編に続く…!
追記
「水星の魔女」をあっという間に見終えてしまって、ガンダムの過去作に手を出し始めました。
おもしろいよ〜〜
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