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星めぐりの対談(後編)

こちらの記事はWool StringsとTable Music Meetingによる「星めぐりの船」という楽曲のリリースに際して行った対談の後編です。前半を未読の方はぜひご覧ください。

日本語の歌について

I:2008年くらいの時(※Wool StringsとTable Music Meetingが活動を開始した年です)と比べると、今の方が日本語と英語の歌との差が、あんまなくなってきたかなっていうことは思いますね。洋楽という境もだいぶなくなってきたかな。そこが分かれていることでいい思いをしていた人も多分いるんでしょうけど。
A:この前、コーネリアスと坂本慎太郎がオーストラリアで一緒にライブしたりしてるのを見てすごくいいな、と思いました。
I:そうそう、なんか日本人が英語わかんなくても洋楽を楽しんでるように、外国人も同じように日本語を。当然日本語の方が自分が思い通りの内容は伝えられるわけだから。なんかそれでできるなら、一番いいような気はするんですけど。
A:あと、Lampがインドネシアでライブしている、お客さんがiPhoneで撮ったような映像を観て、感動したんですよ。日本語の歌をインドネシアの方たちが合唱してるんです。Lampのサブスクでの再生回数がものすごいっていうのも結構最近よく目にするんですけど。「ひろがるなみだ」っていうソフトロックっぽい曲調の曲なんだけど、めちゃめちゃ盛り上がってるんですよ。

A:歌詞は日本語の方が書きやすいんだけど、どうしても英語の方が収まる気がする曲っていうのはやっぱりあって。
I:そうですね。言葉からイメージする方が多いけど、最終的に落とし込む時は音が先にある感じですね。音に合わせて言語を選ぶっていうか。
A:そうそう。やっぱり特に自分の声で歌っていてこれ違うな、っていうのはすぐにわかる。これ無理して日本語で歌おうとしてるなっていう風に気づいちゃうと、もうダメって。そういうのね、不思議ですよね。外国の方からしたら分かりづらい感覚だと思うんですけど。
でも日本語で面白い感じの曲作れた方がいいんだろうなっていう感覚もちょっとあるんですけど。無理して変なイントネーションで英語で歌うよりは。
I:今回の日本語の歌詞の曲はすごいいいと思いました。単純に全く英語出てないですよね?カタカナ英語すら出てないですよね?
A:ああーそうですね。
I:日本語で言うとなんていうアーティストかわかんないけど、ロシアのミュージシャンでKate NVっていう人がいるんですけど。その人がすごい単純な歌詞で、バックトラックはね、なんかちょっと80年代のYMOとかみたいな電子音が鳴るみたいな感じなんです。それのなんか鳥ちゃんの絵みたいなジャケットのやつを買って聴いてるんですよ。それがなんか野菜と果物が道端にコロコロとか、そんな歌詞なんですけど。

A:日本語で。
I:日本語で歌ってるんです。だからこれ、日本人が英語で歌っているのがこんな風に聴こえてんじゃないかなとも思って聴いてるんですけど。あんまり日本語として上手には歌えてないけど、ちょっと面白く聴こえるんですよね。音楽的であれば、そんな内容とか歌詞っていうか、「歌いたい内容がある」から歌う、っていうこともあるからなんとも言えないけど、その作品の世界とか作品として言葉とか歌詞を考えた時に、そんなに意味とか必要としてなくて、「あ、なんかこんな野菜や果物が道端にコロコロ言ってるんだけでも、こんな面白いいい曲になるんだな」と思って。単純に日本語なんだけど、外国人が歌っていることで、すごい新しく感じたんですよ。
インドネシアで受けているLampの話と、僕がそのKate NVを聴いて新鮮だと思っている感覚って一緒なのかなという気がします。英語だからいい、日本語だからダサいとかそういうのはもう全くなくなったなって感じはしてます。別に日本語だからダサいと思ってたわけでもないし、英語だからかっこいいと思ってたわけじゃないけど。
A:英語の曲ばっかり聴いてるから英語が乗りやすい曲を作りやすいんじゃないか、っていうのはあるのかな。
I:そうですね。
A:という一方で、日本語の曲もたくさん聴いてるし、ちょっとその辺はわかんないですけど。
I:ただ、一つの音にたくさんの意味を込められるという意味では、英語の方が入るとは思うんです。一音に対して一つの単語で意味が結構。

テクノミュージックとの共通点

A:この間録音しに行って、その場で言えなかったんですけど、びっくりしたのはあの、四つ打ちのなんかこう、だんだん電子音が開いていって閉じていく、みたいな音源を聴かせてもらったじゃないですか。なんかデジタルなやつ。「ああいうことを人知れずこの人はやってるんだな」と思ってびっくりしました。
I:なんかそういうの好きなんですよね。あの、それこそテクノとかハウスとか、なんか異様な憧れがあります。そういう電子音楽に対して。もともと音楽に本当に興味持ったのはテクノからだと。そんなにでもテクノ自体にはどっぷり入ってないんですけど。音楽ってこういうもんなんだって思う瞬間って、多分何回かあると思うんですけど。最初はユニコーンかわかんないけど、ロックというか。ユニコーンが面白いと、そこからちょっと広がって。そのあとポストロックとかそういうところで、こんな面白いんだって思わせてくれると。なんか歌としてすごい歌とかそういうのはまた別で、感覚としてこういうふうに音楽と接していいんだって思わせてくれるのがあると、その中にテクノみたいなものに対してずっと憧れがなんかあるんですよ。発表してないけど、そういうことは結構やってます。楽しんだから良しとしてるだけなんです。
A:いやーいいですね。
I:なんかその辺だと、今回生音で録音したら生音の録音ってやっぱ面白いなと思って。やっぱマイクを使って人が演奏している音を録るのもすごい面白い。
A:場の空気とかも録れますからね。
I:そうそう。あとは今回は割とバラバラにとったけど、一緒に録ったりする音っていうのも全然違った特別さがあるじゃないですか。前に”come wind come rain”でやった”windy day”で、まだ曲が全部できてない状態でセッションした音源とかあるじゃないですか。
A:はいはい。
I:割とみんな思ったより上手く演奏してて割と僕、その曲好きでその録音も時々聞くんだけど。
A:僕もこの間四年ぶりぐらいに聴いてびっくりしました。普段は極力聴き返さないようにしてて。
I:ああーそうですか。もうあれすごい好きです。
A:楽しい曲でしたね。あのおまけのやつ(※CDを購入してくださった人向けの特典として、soundcloud上で限定公開のEP"Strange Village"を制作しました。CD持ってる方で気付いてなかった方は、ぜひ)もちょっと気になって全部聴いたんですけど、むちゃくちゃやってましたね笑

"Strange Village EP" - Wool Strings with Table Music Meeting

I:そうそう生音でっていうか、以前にtable music meetingとしてリリースした”train passing through our heart”っていう曲があって、それももともとなんだろう。table music meetingも根本にはバンドだけど、曲の発想としてはテクノみたいな感じが多分あるんですよ。

A:はいはい。
I:ずっとテクノの感覚で作ってるから。
A:結構John Faheyみたいな感じの。
I:そうです。ミニマル。その辺とテクノがなんか似てるなと僕は多分思ってて。
A:Jim O’rourke的な解釈ですかね。
I:ミニマルミュージックとしてやっていくのも、ブルースみたいなカントリーみたいなものも感じるっていうか。その繰り返しの中で。
A:なんかこのギターで低音ずっとボンボン弾いてる感じとかね、四つ打ち的にやっぱ通じるものがありますよね。
I:そうですね。そういう感覚はどっちがどっちってわけでもないけど、自分の中では先にテクノの方が、そういう感覚を感じたからだけだと思うんですけど。
その延長でアメダさんが「こんなことやってるんだ」って言ったそっちの曲もやってるんだけど、ギターとかドラムとかって弾くと自分のものになったって気がすごいするけど、テクノを打ち込んでも、それが自分のなんだという確信がなかなか得られないんですよ。「聴いてください」っていうものにはあんまりならないっていうか。
A:なんかわかります。自分の刻印感があんまりないみたいな。それってなんか、この前デビッドホックニー展見てちょっと思ったことなんですけど、iPadで描いた絵って、その刻印を感じるかどうか、みたいなのは人によってあるんじゃないかなって思ったんです。アナログとデジタルの違いって言っちゃうと、ちょっと二極化しちゃうんですけど。
I:僕はね、どっちかっていうと、多分そのアメダさんが感じてるのとはそのホックニーの展示を見て思ったのは逆かもしれなくて、特に絵って昔からあのデジタルアートの仕組みと似てるんだなと思ったんですね。絵の捉え方っていうか、その考え方。なんかデザインに近いっていうか、ホックニーのって。例えばシャガールとか、もうちょっとドロドロした感じ、いかにも油絵って感じのするものは、デジタルとあんまりあわないし変な感じになる気がするんだけど。なんかもともと感覚が画像に近いんじゃないかなと思って。
A:ということはiPadで描くっていうのも必然的っていうか。
I:やっぱりさまになってるなと思うんですよ。他の人がやるとこのくらいで発表できないと思う。そうそう、だからさっきの話で言うと、電子音楽は機材とかその周波数のこととかあんま知らないで作っちゃいけないのかなって気がする、よくわかんないそういう感覚が自分にはあって。
A:なんかわかりますよ。そのアナログでざっくり録った音と、電子の世界だけで録った音ってやっぱ違うと思って。
I:手応えが感じにくいんですよね。でも憧れはあるからこういうのをこういうふうにしてみたい、っていうのをやれるようになりたいとか、そういうことを解消するっていう作業はたまにしてるんですが、その例えば、同じ音がどんどん開いていって閉じるっていうだけのことを、ちゃんと自分でできるように環境が作れるかとか、そういうのを現実の中でクリアしたいとか、そういう欲望はあるから、それをたまにやってるっていうか。
A:さすが、すごいです。僕にはできないです。
I:だから、それは自分と決着をつけただけっていうか。
A:なんか、美味しい料理を作って自分が食べて美味しかった、みたいな感じに近いんじゃないですかね。
I:ほんとそうだと思う。たまたまそういう機会があって、その音源の話になると、そういえばそういうのがあった、っていうことができるだけか。

、、、元々オチをつけようと思ってふたりで喋っていたわけではないですが、この記事もどこで閉じればいいのか、よくわからない感じになってしまいました笑

というわけで、前編から間が空いてしまいましたが、これにて「星めぐりの対談」は終了です。なんとなく、こんな風な空気感から「星めぐりの船」は出来上がったんだな〜と受け止めていただければ幸いです。

Wool StringsとTable Music Meetingは来年もまたこんな感じで、ゆるやかに音楽を作っていくと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

それではみなさま、良いお年をお迎えください。

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