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星めぐりの対談(前編)

Wool Strings with Table Music Meetingの新曲"星めぐりの船"のリリースに際して、今回の新曲がどのように制作されたのか、などについて、実験的にWool StringsアメダとTable Music Meetingイシハラトシユキの二人で、zoomを使ってちょっとだけ対談してみることにしました。基本、文字起こし機能を使って文字起こししているので、不思議な感じになっている部分もありますが(多少は補正してます)、ご容赦ください。慣れないことをしてみた二人のやりとりを楽しんでいただけたら幸いです。
A:アメダ I:イシハラ です。

まずは「星めぐりの船」をお聴きいただいてから、お進みください!

いきなり注釈ですが、基本的な情報だけ先に補足しておきます。今回の楽曲は基本的にアメダが作詞・作曲をしました。2018年頃に録音していたメモを今年になって掘り起こし、手直しした後にざっくり録音したデモをTable Music Meetingに聴いてもらい、事前準備をした上で8月に録音合宿に臨みました。その後、様々なやりとりをして楽曲は完成しました。アートワークはTable Music Meetingイシハラトシユキによるものです。それでは、いってみましょう!

アートワークについて


A:始めますか?えっと、あんまり決めてないんですけど。
I:ええー。そうですね。
A:アートワークの話をちょっと聞きたくて。よろしくお願いします。ファイルのやり取りで聞いてはいましたが。あの、割と何年も前に作っていたってことで。

「星めぐりの船」アートワーク - 石原敏行


I:そうですね。なんかいつもは絵を描くと、忘れないように制作年を絵のどこかに記しておくんですけど、、ちょっと待ってくださいね(原画を持ってくる)そんな大きくないんです。小さい絵なんですけど。だいたい右下とか左下にサイン書くんですけど、全然記録が残ってなくて。だから何年前かっていうのがそんなにわからないんだけど。でも明らかにコロナになる前です。絵画教室で教えている鉛筆デッサンのような絵は描いていたんですが、それ以外の個人的な絵は描いてなかったから、三年くらい、自分のための絵は描いてなかったかもしれないです。コロナになってから、世の中ざわざわしててまあそういうテンションじゃなくて、描かなかったので。
A:あんまりこう展示やろうとか、そういう感じじゃなくなっちゃったんですかね。
I:もう全然なくなっちゃったですね。自分が中心となって人を呼んじゃっていいのか、みたいなことになるじゃないですか。そうすると。
A:やっぱり展示やるっていうきっかけとかがあると、描きやすいみたいな。
I:そうですよね。なんか。普段これやったら面白いんじゃないか?みたいなことはなんかメモ程度に。スケッチブックとかに描いたりしてるけど。
A:はいはい。仕上げていくモチベーションみたいなのがないと、っていうのが、やっぱりそれがめちゃめちゃ僕もあって。ほとんどずっとそうなんですけど。メモ的な音楽で言うと、そういうデモっていうか、デモにも満たないようなものは結構あるけれど、やっぱりコロナの中ではそれすらも少なかったですけど。

記録しつづけるということ


A:今回の"星めぐりの船"っていう曲は、あの"come wind come rain"の時あたりで、デモというかメモを録音していて。結構、今回の録音合宿に行った時も言ったと思うんですけど、自分でいいのか悪いのか全然わからなくて。まあ自分にしては相当なんていうんでしょう。振り切れてる感じの、たて乗りっていうんですか、わかんないけどあの、スネアがこう。
I:そうですよね。もうずっとね、タンタンいってて(笑)Woolさんのそういう曲を初めて聴いてとても良いなと思ったんです。
A:あの曲のデモはスネアとか入ってなかったんですけど、とはいえ、ギターのコードのパターンからすると、ドラムを入れたらそうなるかっていうのがあって。
何年かに一回ぐらい、自分のそういうデモ未満のメモみたいなものを聞き返すことがあって、しょうもな!って閉じることが多いんですけど、これは結構あのなんていうか、結構Table Music Meetingと一緒にやった方が面白いよなって、思いついた。コロナがね、あの完全に明けた?とかわかんないですけど、今やったらいいかもしれないなって。前作とのつながりって意味ではあるのかなっていうか、メモを録音していたのがその時だから、あることになっててもおかしくないなとは思うんですけど。
I:なんか何の気なしに、でもやっぱり記録しといたかしてないかっていうのは全然違うじゃないですか。創作のアイデアって何らかの形で記録してないのに覚えてることって、まあほとんどないですよね。やっぱり、しょうもないことでもなんか記録してあったりすると、それを頼りに思い出せるけど。実はすごい良いこと思いついてたのに、何にも記したりしないんで、ほんと忘れるから。それこそこんな風に文字起こしみたいに残ってれば全部後で見返せるんでしょうけど、そんなことしてる暇もないでしょうから。やっぱり、なんかの拍子に何かにしといたものしか形にはならない。だから、そういうタイミングで誘ってもらえて、コロナ明けたからっていうタイミングで一緒に何かしたら面白いんじゃないかな、と思ってたところ共同制作の話をこちらに投げてもらえたんで、嬉しかったですね。何かしたいとは思っていても自分から何かやろうっていう、まだそんな重たい腰が上がるような感じにもなってないタイミングだったんです。

A:なんかでも断続的にあのsoundcloudにセッション音源を上げてたじゃないですか。続けてるんだなっていうのはいいなと思って。

I:あの断続的というか、まぁ本当にセッション、なんていうかあれが本当に自分一人じゃない、今の一番楽なところというと変だけど。まあ3人集まってただ遊ぶってことはあんまないんで、せっかく集まったらなんかやっとこうか、っていう感じで。
特に厳密に色々決めずに3人で楽器を触っているのを録音すると良いか悪いかは別として何やら音のある時間が記録されるじゃないですか笑
A:いやでもあのすごいね。今更ですけど、不思議な感じですよね。音楽作んなきゃ、とかっていうのとまたちょっと違うじゃないですか。

編集者的な感覚


A:僕は議事録を整える、みたいなそういう作業が、欲しい時ってあって。
I:アメダさんわりとそういうなんていだろう。なんか総合的な、こう責任感のあるところがありますよね。編集者的な、編集長的な。何だろうデザインとか。
A:この間メールで、石原さんが「エディトリアルな」っていう言葉を使われてて、エディトリアルってなんだっけと思ったんですけど。
I:デザインで言うと、文字のレイアウトとか、どういう風にどういう順番で持ってったらその雑誌が面白くなるかとか、ページの構成とか。「編集」ですね。その辺はでも音楽作って、曲順考えるとかそういうのとまあ似てるというか。それに加えて、座談会的なところもなんとなく記録しておきたい、みたいなことも出てくるから(※今回の対談のことです)、なんかすごいそれこそ雑誌っぽいなっていう感じはしますね。編集長みたいな。
A:雑誌を作りたいなぁとは思ったことあんまりないんですけど、なんでしょうね。さっきの話の続きで言うと、その音楽だけ作っていれば幸せっていうタイプではないのは確かで。音楽作ったらそれをどう見せるかとかっていうところも考えるのは好きですけど。絵は描けないし。
I:でも本当にまだ出会う前っていうか、本当にそれこそWool Stringsで初めてCDを作った時は完璧に全部自分でやってるじゃないですか。あとジャケットの写真とかも、自分で撮ったか分からないけど、そういうのを選定して文字入れてジャケット作ってましたよね。
A:はい(※初期の作品のアートワークの写真は友人のアリイズミサヤカさんなどから提供してもらって、気ままに加工してジャケットにしていました)

I:同じような感覚かもしれないです。
A:石原さんもやってたじゃないですか。
I:まあ、パッケージングするまでが面白いっていうか。僕はパッケージングしたら終わってもいいかな?ぐらいになるのが、もう少しアメダさんは広がりがあるかなと。あんまり僕、外に向かってないから。なんかもっともっと聞いてほしいとか、まあないっていうか、聞いてくれたら嬉しいけど、別にがっかりさせると悪いから。誘いませんみたいな。
A:いや、その辺は難しいですね。
I:でも全然僕としてはそういうアメダさんみたいな感覚の方がいいよなと思います。作った以上、やっぱりもっと見せたくなれなれよ、自分。って自分には思います。
A:その辺は本当15年前から自信がないっちゃないし。好きなようにやればいいだろう、って思っているとこもある。変わってない。Myspaceしかなかったときに、Myspaceで音源をアップしていろいろ書いてた時の方がやっぱシンプルだったな、とは思っていて。今ちょっと広すぎますよね。
I:ああー分かります。なんかそういう感覚ってありますよね。なんかこう狭い世界のときの方が幸せだった、みたいな気持ちがあった。

モノをつくること

A:今回ポストカードを作りたいっていう話をいただいて、すごいいいなって思ってて。

星めぐりのポストカード


I:ああ、そうだ。なんかそういうことすると、ちょっとやる意義が出てくる気が自分もして、なんかちょっと面白いこと見つけたかもな、とは思ってるんですけど。
A:ちゃんとこの世に存在してるのがいいですよね。
I:そうそう、だからそのなんていうかサブスクだけど、出すためにポストカード作る、ってことは面白いかもしれない。
A:2008年に始めた時も、フリーダウンロードっていうのがあって。なんか似たような状況かわかんないんですけど、あのモノを作らないでフリーダウンロードすることの是非、みたいなのあったなって今急に思い出したんですけど。今ね、フリーダウンロードっていう考え方がもうすでになくなってますよ。
I:だって聞けますもんね。別にそんなことしなくても。フリーダウンロードって逆にある意味負荷がこっちにはかかりますから、サブスクだったら別にこっちの容量を取られることないけど、フリーダウンロードってそのために自分の容量を差し上げなきゃいけない感覚になります。
A:確かにそうですね。
I:今となってはだけど、昔だったらフリーなの?ラッキーみたいな感じはまだあったけど。
A:確かにダウンロードして、そのSpotifyとかApple Musicじゃないところで聞くっていうのは、もう手間になってるから。またその意味も変わったなと思うんですけど。話少し変わるんですけど、今コーヒーのことを色々調べてて、焙煎とかもしていて。
I:いやー。面白いですね。それ。
A:音楽と単純に比べちゃいけないんですけど、コーヒーはパッケージがちゃんとあって、なんとかブレンドとか考えるのとかって楽しくて。ちょっと音楽作るときの感覚を思い出すんですよね。名前をつけるのがね。やっぱ僕好きなんですよ。
I:ああ、それずっと言ってますよね。名前から入っていくっていうか、言葉から働き始めるというか。
A:そうなんですよ。そんなにね、音楽から始めるタイプじゃないんですよ。

アートワークについて、再び


A:聞きたかったのは、あの絵がこう、今回の「星めぐりの船」にふさわしいと思った理由が何かあるなら、ちょっと聞きたいなと思ったんです。
I:これね、僕が個人的に自分だけのレーベルみたいなのを作ろうと思ってた時があって、それのロゴみたいにしようとしたんですよ。
A:確かにレーベルのロゴっぽいですよね。
I:なんかその自分のそういうのやろうとしてた時に描いた感覚と。
A:実はなんですけど、"each other tracks"っていう曲を前に作って、その時、あのかなり前に買わせてもらったマキさん(※Table Music Meetingのメンバー)の絵が頭にあったんですよ、当時。

I:ああ、それ僕もそれも思い出しました。その曲、それ飾ってもらってたのをよく覚えてます。以前の家だ。

空へまきに - 石原真季

A:そうですね。これすごいいいです。ちなみにこれ「空へまきに」っていうタイトルがついてる。星と船っていうのは、少なくとも"each other tracks"と共通しているモチーフになってて、ちょっとかぶりすぎてるかもしれないなっていう気もしたこともあるのと、あと「星めぐりの歌」っていう、とても有名な曲があって、それともかぶりたくないなっていうのがあって。ちょっと、歌詞は感覚的なところがあるんで説明はできないんですけど、あの曲自体どうかっていうところもそうだし、ちょっと今回はあのかなり石原さんに委ねているところが大きいなって思っているところがあって。聴いてもらって、いいって言ってもらえて本当嬉しかったし、今回のアートワークもすごいしっくり来たんですけど、なんでしっくり来たのかって言われるとちょっとなかなかうまく説明できないんですけど。
I:でもそこは僕も一緒ですよ。なんかこれ描いたなっていう覚えがあって、この曲のアートワークに使ったら新しくいい意味ができそうな感じがするって思って。
A:あの星っぽすぎず、船っぽすぎないなっていう感じ。すごいいいですよね。
I:そうそう。思い出した。あの合宿中に、アメダさんの歌詞をみんなで読みながら喋る、みたいな時間が少しあったじゃないですか。その時に、絵本を例えた話を僕は確かして。なんか絵と文字があったとき、ブタさんがいました。っていうところにブタさんの絵が描いてあったって、面白くないじゃないですか。それと一緒だなと思ったんですよ。新たにジャケットを描こうとしたらやっぱり星と船を描いちゃうよな、と思って。
A:ああ言ってましたね。曲の中で何回も言うので、「星めぐりの船」はよく。
I:あの絵をジャケットにどうですかと提案した時には、あ、これいいんじゃない?ってぐらいしか思わなかったんですよ。でも、なんかそういうことができる時が一番多分自分としてはいいなって思うんですよ。
A:楽しいですよね。その既存の、そのために作ってたものじゃないものと、それらを合わせると、なんか新しい何かが生まれてるんじゃないか?って思える時が、すごい。
I:そうそう。これも自分で気に入ってるんだけど、結局使ってないなっていうのは、それこそアメダさんがこの曲作った時と同じような感じで、作った覚えはあるけど、どっか置いてあって、あ、じゃあ今じゃね?って思ったっていうのは、自分的にはしっくりきたっていうのが、うまいこと伝わったかなっていうところが、良かったかなと思います。これとこれ合わせていいんじゃね?って、そうすればあんまりもう悩む必要ないっていうか、変更がきかない感じがすごい好きだなっていうか。以前作っていたこれがこうだから、これ以上手加えない方が絶対いい、みたいな価値観。
A:そういうのって、ハマったときはもうハマってるし説明できないし、ハマんないときはハマんないから、ハマんないとしか言いようがない、みたいなそういう感じですよね、
I:そうですね。だから、これどうですか?って聞いた時に、割と早めにいいリアクション来たから良かったなと。
A:それは、でも曲聞いてもらったときも同じことを思ってて。
I:ああ。だからその辺は今話して、たまたまだけど、同じようなことをこちらもこれ使ってもらえてよかったし、みたいな感じはありますね。それで人がどうどうか、まであんまり考えないで済んだところが一番良かったかな。
この曲に関して言えば、自分がやりたいというか、アメダさんから「どうですか?」ってボールが飛んできたからまあ投げ返せたっていう良さがあるけど。共同制作する上で、こういう風にできれば一番いいかなと思います。

歌詞について


I:そうそう、曲に関して言えば、アメダさんは歌詞に触れられるのはあんま好きじゃないけど、「星めぐりの船」っていう割には割とネガティブなニュアンスが結構ある気がして、なんか面白いなって思ったんですよね。
A:そうですね。
I:だからそこは突っ込まれても自分でもよくわかんないし、っていう話になっちゃうとは思うんですけど、どこまでわかんなくて、どこまで意識してわかんないふりしているのか、本当のところは分かりませんが笑
A:あの、そうですね。すごいポップな曲調の割に結構、孤独ですよね。なんかね。
I:主人公の人は割と孤独だなぁと思います。
A:僕は一人って言ってますもんね。
I:「星めぐりの船」ってタイトルからすると、なんかもうちょっとふわっと救われるみたいなのが来るかな?と思うじゃないですか。
A:そうですね。"each other tracks"の方がまだちょっと水彩画っぽい世界観だったり。別にどっちが好きとかじゃないんですけど、今回の方が結構内面って感じしますね。その辺はちょっとね、難しいですけど。
I:あと日本語の歌詞でパーッと来たのもいいなと。
A:この曲はでも、英語は絶対ありえないなって感じですね。それはどっちかというと音楽的な要因っていうか、これ英語載せるのすげー大変だなって思ったので。英語でもできなくはないと思うんですけど、うまく発音することはできないから、そこは特に最初から英語っていう発想はなかったんですけど、まあそうですね。あまり明るくはないと思います。明るくないっていうか、あの何でしょう?パッと見、明るい感じの言葉も結構使ってる割に、よく見ると結構暗いんじゃないか?っていう感じに結果的になってるところは
いいなと思ってますね。なんか別にパッと見、そんな暗くないんですけどね。
I:そうですね。
A:何でしょうね?絶妙ですね。これ、暗さが出てるということでしょ?でもなんか、その最後の一段落の「音楽は目に見えなくても〜」っていうところが、よくわかんないけど前向きな感じもするし。
I:そうですね。前向きな意思がそこは急にありますよね。
A:「急にどうした?お前」っていう。
I:まとまりとして、そこだけ顔を上げてる感じがいい。
A:その手前でなんか起きたんだろうなっていう感じはしますね。
I:ああーでもこうやって他人みたいに、その歌の中の人について喋るなら話しやすくていいじゃないですか。
A:いや、ほんとそうですね。英語で書いた方がそんな風にできなくて、もっと気になっちゃうんですよね。文法的にこれおかしいんじゃないかなとか、時制はちゃんと整合してるかなとか、思うんだけど日本語だとそういうことを考えなくていいから。

(つづく)

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