1 キャンプとファイヤーと私・突
「あ゛あ゛あ゛あ゛~過ごしやすい季節がきた~」
朝、というか昼近く、林の拠点で目覚めると涼しい風が窓から入ってきた。
神の島はもちろん近くにあるクダヤも気候は比較的温暖なのだが、ようやく暑さが落ち着いてきたようだ。
激しくない四季って感じ。激しかった日本、元気してるかな。
「なに」
「おわわわ」
私が顔を洗いながらもうっすらしんみりしたのがわかったのか、分裂光球保護者が私をお手玉にして遊び始めた。お手玉1個しかないけど。
「おわわわーはは! おわわわーはは! チカチカさん、次高めにして! 高め!」
心臓がひゃっとなる~!
「ぴ」
「キュッ」
「え~? 2人も入ってくるの~? なにそれ~? いいけど~?」
お手玉にでもなんの?
気にせず保護者お手玉を楽しんでいると、空中でポンポンされている私にキイロがびゅんとすれ違ってきたり、ジャンプしたロイヤルがぎりぎりで交差してきたりした。
「うわっあっぶな! ぶつかるかと思ったじゃ~ん! わーはは!」
入ってくるってそういう事か。楽しいわ。
「キャン」
「その足の短さじゃ無理だよ~後で遊ぼ~」
「キャン!」
「マッチャに投げてもらうの? 痛い目に遭っても知らないよ~?」
「フォーン」
「いいの? じゃあお願いしま~す」
まあ案の定、マッチャに投げ飛ばしてもらったダクスは変な横回転を見せながら私に思いっきりぶつかってきたよね。ダクスフリスビー結構痛い。なんで横回転すんだ。保護者の仕業か……?
保護者お手玉は楽しかったが、私がしんみりした理由を話すまでポンポンが継続されたのでちょっと酔った。うえ。
でも正直に「日本の激しかった気候に思いを馳せていました」と話したらもう用済みだとばかりにそのままベッドに落とされた。悪人! 悪惑星!
なのでそのまま甘やかしとウロコひんやりを堪能する為ボスに走り寄った。
「うい~ボスのひんやり気持ちいいね~」
「コフッ」
「ナナの甲羅も良い感じ~」
「クー」
エンが遠くからこっちを見てるけど今はもふふかはちょっと……なんだ。楽しさで体が火照ってるから今はちょっと……なんだ。
近付いてこないあたり気を遣われてんな……。優しい。ボスのウロコでがんがんに冷やして後で飛び掛かりに行くわ。
「はる、ランチ営業」
「あ、ヴァーちゃん達来るんだ」
ちょうどいいや。美味しいランチを作ってもらお。やったね。
「今日は過ごしやすいから外でご飯かな~? じゃあ汗かいたしぱぱっと木の滝シャワーでも浴びてくるかな~。よし、今日は5分切るぞ!」
「ぴちゅ!」
「キャン!」
「コフッ」
「キュッ!」
「クー」
「フォーン」
「やるぞお!」
声援やんややんやのモフ達を引き連れ木の滝に向かう。
高速シャワーに高速体拭き、それに高速着替えで5分か……岩ゲートで一瞬で拠点だから……いけるか……?
というか木の滝からの帰り道、ボスに裸状態のままでくわえてもらって風で乾かすのもありかもしれない。人間の知り合いには絶対に見られたくない姿だけど神の島だから安心。
で、結局、最初から裸のままボスにくわえて木の滝まで超速で連れて行ってもらい、その勢いのまま木の滝をくぐってターンして島のお家に戻るという戦法のおかげで4分35秒(惑星計測)で林の拠点に戻る事ができた。新記録。
全身は濡れているが汚れがしっかり落ちたかどうかはわからない。
「髪が濡れてるじゃないの。ほら、こっちにいらっしゃい」
適当に髪をまとめヴァーちゃん達を出迎えたらすぐにヴァーちゃんに身だしなみ力の無さに気付かれた。
数人のおじいちゃんはばっと散らばって林に消えたからきっと髪に飾る花でも探しに行ってくれたんだろうな。孫待遇アザス。
「少し涼しくなってきたから気をつけないと」
「へい」
髪の毛をタオルでわしゃわしゃご年配の女性に乾かしてもらっている私。元20代大人女性。
しかも途中、ふっと現れたキイロ守役様によるふわっとバサ羽ドライヤーで乾かしてもらえた。何故今ふわっと……?
ふわっと魔法の影響を受けてヴァーちゃんが吹っ飛ばなくて本当に良かった。対私限定コントロール可能魔法だから。
吹っ飛んでも華麗な着地を決めて興奮しそうだけども。
でもまあ興奮はしてたみたいで、髪の毛が結婚式の2次会並みの盛られ具合だったので後から合流してきたアルにちらちら見られた。
コメントしていいやつだからね、これ。
しっかしサンリはいつもどうやってランチタイムを嗅ぎ付けてくるんだ?
「良い天気だし今日は外で食うか」
「それ楽しそうです!」
腕筋肉すごいダニエルおじいちゃんが腕まくりすると、視界の隅で領主も腕まくりしていた。
領主は誰彼構わず勝負を挑むんじゃないよ。
いつものようにもたもたしていたら仕事を振ってもらえたので、アルと一緒に火おこしの見張りをする。大切な仕事。
「みんなで焼きながら食べるんですかね? 楽しみですね~」
「は、はい」
今日はバーベキュー! ホタテ焼いて食べたい。バター醤油で食べたい。
「過ごしやすくなりましたね~」
「は、はい」
「アレクシスさん達は今日は来ないんですか?」
「は、はい。守役様の島に……」
「そっか~」
「は、はい」
いかん、そろそろアルが限界だな。話しかけるのやめよう。めっちゃ困ってる。
「ヤマチカさん、このスープを混ぜてもらっていいですか~? 味見もお願いします」
「混ぜます味見します」
「アルバートは俺と野菜を切るぞ」
「お、おう」
ナイスタイミングカセルさん。良い仕事するな~ほんと。
「こちらの味見も頼む」
「うわっ、領主様もうそんなに作ったんですか!?」
もう飲食店開きなよ。すごいよ。ランチタイムの厨房1人で回せるよ。
ヴァーちゃんも加わり椅子に座りながらきゃっきゃとスープを混ぜたり味見をしたり高速食材切りを見せてもらっていると、熱い思いがふつふつと。
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キャンプとファイヤーと私
続編小説~私とモフモフと過保護の日常~のどこに繋がってるのか不明なお話。 いつかの話なのか、正統派続編なのか。とりあえずキャンプとファイヤ…
LOVE&PEACE&WORLD&MOFU