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社内SEの苦悩① 社員教育の後悔

社会人5年を過ぎた頃、つまりIT企業に勤めて5年ほど経った頃から、将来、社内SEになりたいと思ってた。

IT業界から逃げたい気持ちがひとつ、もうひとつはパソコンで苦しんでいる人を助けたい(そして感謝されたい、必要とされたい)と思っていたから。

当時も今も、プログラムができない人間が社内SEになれる確率は低い。
その当時も今も、求人票で出ている社内SEの要件は・・・

なんちゃら”開発”の経験が何年以上で~パソコン・ネットワーク運用全般を任せられる方~”

なんていうのがほとんどで、開発未経験者はまず無理だ。
※そもそも開発できなきゃ社内SEじゃない!という人もたくさんいると思う。

ところが、いくつもの幸運に恵まれ、私は今の会社の社内SEのポジションに潜り込むことができた。

このときは本当にうれしかった。自分は間違いなく”勝ち組”だと思った・・・というか時々忘れるが、実は今も勝ち組だと思っている。

ただ、勝ち組だと思っている社内SEのポジションにいるからといって、全く苦しいことはないかというと、それとこれとは話は別。毎日、キッチリ苦しい思いをしている。

社内SEになって12年、実はこれまでの積み重ねで後悔していることがある。

社内SEになってうれしすぎて、ついつい頼ってくる社員を甘やかしてしまったこと・・・もう少し言うと、私自身が時代の流れを読めてなかったこと・・・

私は社内SEになれたとき、すごく燃えていた。
パソコンで苦しんでいる人を助けるんだ!

トラブルの電話が来るとすぐに対応した。遠隔操作を駆使し、また現地へ飛び回り、至れり尽くせりの対応をした。寝る間も惜しんで対応した・・・というかIT業界にいた私にとって、夜遅くなるなんて慣れたもの・・・というかとても楽。

自分のスキルの50%程度の力で解決できる問題がほとんどだから、量は多いがストレスがない。心が疲れない。IT企業時代は自分の力100%出しても、こなせない課題が山積していたから、ストレスばかり・・・それに比べれば夜が遅いくらい余裕だった。そもそもIT企業時代はもっと夜、遅かったし・・・

解決すれば、社員から感謝される。”ありがとう”と言われる。何よりのご褒美・・・気分が良かった。

そして私はこう考えるようになった。

お金を稼ぐ人はお金を稼ぐことに全力を尽くしてもらう。彼らがITのことを覚える時間があるくらいなら、その分お金を稼いでもらおう。ITのことは私が全てサポートする。

社内でパソコンの障害や設定方法のヘルプを求められたとき、その人に対応の仕方を教えることなく、遠隔操作や現地訪問で全て私が解決した。

もちろん運用レベルの話は、ゆっくり丁寧に教えたが・・・

ところがその積み重ねをした結果、今現在、私はとんでもなく苦しい思いをしている。

全ては時代の流れを読めてなかった、自分自身のせいだ・・・

社員のITリテラシーが育ってない


営業の人はお金を稼ぐ、パソコンの面倒は私が見る・・・役割分担、適材適所だ!

そう信じてやってきたが・・・

12年前、パソコンでやる作業は今と比べて少なかった。いや、正確には当時でも実は多いな・・・と思っていた。これ以上至れり尽くせりの対応は難しいかも・・・でも、自分が成長すればまだ行けるな・・・そんな風に思ってた。

それから12年、ほぼ全ての業務がパソコンでやることになった。しかも年々新しいツールが入ってくる。新しいものは漏れなくIT技術とワンセット・・・つまり、社内SEのみの力で、全ての面倒を見切れなくなってきた。

その上、ビジネスの世界にスマートフォンが入ってきた。

会社携帯壊れちゃった、電話帳のバックアップ、どうやったら戻せるの?

会社から使えと言われたアプリ、やってなかった・・・どうやって初期設定するの?

ID・パスワードなんだっけ?

そんな基本的な質問が殺到する。

そしてスマホは遠隔操作ができない。口頭と出来合いのマニュアルで対応するしかない。

そう、社員ひとりひとりがある程度のITリテラシーを持たなければ、業務が回らない会社になってきた・・・というか、そういう世の中になってきた。

そして結果としてこの12年、私はその社員教育を怠ってきた。

現在のビジネスマンに必須スキルであるITリテラシー、それを高める勉強の機会を、私は奪ってたのだ。

私は社内SE以外の社員が、ここまでITリテラシーを求められる世の中になるとは思っていなかった。

今、思うと本当に勉強不足だった。


ただ・・・全てを後悔しているわけではない


実は説明は難しいが、全てを後悔しているわけではない。

当時私はIT企業から転職したばかり、自分がこの会社にとって必要な存在であることを示す必要があった。

こいつは使える、こいつは会社にとって必要だ・・・そう思ってもらいたい一心だった。

そしてパソコンで苦しんでいる社員にとって、至れり尽くせりの対応をする私の存在は、とても使い勝手が良く、便利だったと思う。
※実は転職理由は、今の会社にかなり迷惑をかけたものだった・・・その失点も取り返す必要があったのだが、その話はいずれ機会があれば・・・

そうやって地道に積み重ねた信頼がなければ・・・適当に手を抜いた対応を続けていれば・・・どこかのタイミングで、

”こいつは不要”

と、NOを突き付けられただろう。

まずはこの会社で生き残ること、そしてせっかく手に入れた社内SEの地位を手放さないこと・・・私は、他の社員に自分の力を見せつける必要があった。

会社に生き残り、どうしてもやりたかった社内SEの地位にしがみつくため、こいつは会社に必要だと思われる存在になった・・・そしてその代償として、社員のITリテラシーが低いという非常にまずい状況を、作り出してしまったのだ。

ただ・・・兎にも角にも12年、社内SEとして会社に生き残ることは成功した。

この代償は、この会社で生き残りながら、これから少しずつ返して行こうと思ってる。

いつか、「この会社の社員はITリテラシー高いね・・・」と言われるようになるために

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