リサジューを使ったほうが良い訳

 音楽でも音声でもいいんだけど、宅録環境で最も重視されていないのがモニター環境だと思っている。モニターていうのはなにもスピーカーとかヘッドホンだけではなくて、メータの類を含んでいる。つまり、出音を人間の耳だけでチェックするのは非常に危険ということ。しかし残念ながらメーターをきちんと装備している宅録環境を揃えている人はそれほどいないようではある。今回はあまたある(そして必要な)音声モニターの一つとして「リサジュー」を取り上げる。

リサジューってなに?

 リサジューとは、左と右の音量をそれぞれグラフのX軸とY軸に割り当てた2次元グラフで「リサージュ」と呼ばれることもある。が「リサジュー」が正しい。今回はソフトウェアベースのリサジュー「WaveSpectra」を利用した。サウンドインターフェースは中華製の1個500円くらいのやつだったので、ゼロ点が合っていないのはご愛嬌ということで。

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(Wikipediaより)

1KHzの正弦波を表示する

 1KHzの正弦波は「基準信号」とも呼ばれており、多くの音響機器のテスト用に利用される。信号レベルは場面によってまちまちだが、簡易的に使うなら特に大きな問題にはならない。下の画像が、基準信号をリサジューに表示させた状態である。​

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 この信号は1KHz -10dBの正弦波を左右のチャンネルから再生(デュアルモノの状態)しているのだが、左右の波形(=音のレベル)が一致しているのでほぼ右上45度に傾いた直線となる。左右の波形がずれていると、下図のような表示になる。

1KHzずれ

 左右の正弦波のピークがずれているので、楕円形を示すようになる。ズレが大きいほど楕円が大きくなる。どちらかのチャンネルに数サンプルのディレイ(遅延)を掛けることで正常化できる。ただし、オーディオインターフェースなどの性能によっても左右されるため、信頼できる機材で調整してから試験を行うほうがいい。また、左右の波形が180度ずれているばあいは「逆相」となり、斜線の傾きが左上を向くようになる。この場合、左右の位相(波形の基本的な向き)が真逆になっているため、とくにセンターに寄せるボーカルなどが空間に広がって聞こえるようなり、所謂「定位が悪い」「定位しない」状態となる。これが楽曲である場合、FM放送ではカラオケになってしまう。

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音声を表示させる

 一般的な楽曲をリサジューで表示させたのが下図である。左右に音の広がりがあるため、右上に傾きつつ、全体に広がるような波形を示す。この波形が大聞く広がるほど、ステレオ感の強い音声であることが目視できる。

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 音声レベルが高すぎて一定以上の数値になると、いわゆる「クリッピング」を起こす。これは「それ以上大きな音を扱うことができない」状態で、「飽和」「音割れ」などと呼ばれることもある(特にアナログでは「音が割れている」と表現されることが多い)。この状態をリサジューで示すと次のようになる。

画像6

 音声レベルがそれ以上高くならないので、直線として表示される。ただし、この図では表示倍率を下げて表示しているので、実際には画面の外にグラフが出ていってしまう(このため表示倍率が変えられる)。
 この状態になると、耳で聞いても「音割れを感じない」場合でも信号はクリッピング(最大レベルオーバー)しているので、全体のレベルを下げる必要がでてくる。1つ前の画像のように、図形が自然な曲線で表示されるようになるまでひたすらレベルを落とすことになる。

リサジューが必要な訳

一般的なVUメーターやピークレベルメーター(最近だとラウドネスモニター等)では、音声レベルは表示されているものの、音が割れているかどうかを判断するのは非常に難しい。また、特定の音源が希望する定位をしているかどうかを判断することも難しい。そこで、リサジューを利用することで、これらの問題がある程度解消できることになる。ぜひ「基準信号発生機(テストトーンオシレーター)」とセットで用意してほしい。

●テストトーンオシレーター(ケーブルチェッカー)
●WaveSpectra

本編はここまでです。
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なお、ここまでに上げた画像は動画としても公開しています。

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