コムギ栽培での尿素の葉面散布について
1.疑問点
コムギ栽培で子実のタンパク含量を上げるために、尿素を葉面散布する技術が知られているけど、なぜ粒重は増加せずタンパク含量が増加するんだろう?
2.考察
・シンク−ソースという考え方
稲葉ら(2018)※1は、パン用コムギ品種「せときらら」に対して尿素の葉面散布を行なった結果、無処理と比べてタンパク含量に有意な差があったが子実の重量には差が認められなかったと報告している。
結果の考察として、「コムギの子実生長は,シンク容量によって制限されており,特別な場合を除いてはソース能力が抑制されることでは制限されていないとも報告している.本研究でも,葉身や穂といった光合成器官が光合成に必要とする以上のクロロフィルタンパクを蓄積したものの,子実では胚乳細胞数等のシンク容量が制限されていたためにデンプン蓄積されなかったと考えられた.」とシンクサイズが足りなかったことが要因だとしている。
尿素散布によりたとえ葉色が濃くなったとしても、光合成産物をためこめる場所がなければ子実の重量は増えないということか。
・(横道にそれるが)シンクサイズはいつ決まるのか?
コムギにおいては、シンクサイズ(胚乳の細胞数)は開花期における剪葉や遮光処理によって低下し、一穂のなかの頴果を間引くことによって増加する。このことは光合成同化産物の供給の良否によって頴果のシンクサイズが影響を受けることを示唆している。※2
開花期に天候不良にあたった場合、十分な光合成ができずシンクサイズが小さくなってしまう。
光合成を行えないときに、シンクサイズを大きくする手段について、別の記事で考えたい。
3.参照
(1)稲葉ら, 日 本 作 物 学 会 紀 事, 第 87 巻(2018)
(2)植物生産生理学, p69
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