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流川楓・15歳。映画「THE FIRST SLAM DUNK」の感想と考察。

映画「THE FIRST SLAM DUNK」を最初に観た時、流川楓というキャラクターが意外に「目立たなかったな」という印象を受けた。

特に山王工業戦の後半、流川は沢北との攻防の中で覚醒し、「ネオ流川」となっていくのだが、その描写が(宮城リョータ目線で沢北を見ていることもあってか)割と淡泊に描かれていたような気がしたのだ。

映画の主役がリョータということで、最後に「アメリカで宮城リョータVS沢北栄治が実現する」という、ある意味驚きのラストシーンにつなげるため、だったのかなという感想を持った。

もちろん、覚醒後の流川がパスという手段を獲得したことで湘北の強さが一段階レベルアップし、勝利へとつながっていくわけで、その活躍は言うまでもないのだが、流川ファンの人はちょっと物足りなかったのでは?と思ったりもした。


印象的だったのは原作でも描かれている、沢北が無双となり流川のファウルを受けながらもシュートを決め、フリースローを打つ時に不敵な笑みを浮かべるシーンだ。
原作ではフリースローを打つ前に「流川は笑った」「ありがてえ 贋者じゃねえ」という流れなのだが、映画では沢北がフリースローを打つその時に流川が笑みを浮かべ、それをリョータが目撃する、という描写に変わっている。
私はまだ映画のスクリーンで沢北の父親「テツ沢北」を見つけることができていないのだが、おそらくはこの流川の笑みを、観客席のどこかでテツ沢北も見ている、ということなのだろう。

ここでふと考えるのが、流川楓はこの時まだ15歳である、という事実だ。

ご存じの方も多いかもしれないが、流川楓の誕生日は1月1日。インターハイの時期はまだ15歳だ。
数か月前までは中学生だった、まだ身体も出来上がっていない少年…小児科だって行けちゃう年齢(!)なのに、「ありがてえ 贋者じゃねえ」という思考に至るって、どんな鍛練を積んできたのだろう?と思ってしまう。

その類いまれな容姿と研ぎ澄まされたバスケットセンス、「オフェンスの鬼」と呼ばれるほどの、獰猛ともいえるコートでの姿…そんな流川をずっと見ているから、ついつい彼にいろいろと重たいものを望んでしまいそうになるのだが、まだ15歳なんだよな…と思うと、赤木や三井、宮城といったコート内のメンバーたちが、彼を「1年生」としてちゃんと扱っていることに、ホッとするとともに、じわじわと感動を覚える。

それぞれのメンバーはきっと、「流川は将来、神奈川、いや日本を代表するバスケット選手になる」と確信しているだろう。
だからこそ、ちゃんと成長させてやりたい。
そんな思いもあったのではないだろうか。


そんな中、映画で「おっ」と思ったのが、試合途中で木暮が流川にしきりに声をかけているところだ。

「流川、お前もボールを運べ」
「お前がエースだ」

と、かなり具体的、かつプレッシャーのかかる言葉を直接流川に向けて叫んでいる。
コート外にいた木暮が、ある意味客観的に見ることができるという存在だとして、そんな彼が流川という男が「試合の中で成長を続けている」というのを目の当たりにしたからこそ、「お前がエースだ」という言葉が出てきたのかもしれないと思った。

「ボールを運べ」と言われて素直に言うことを聞いている流川に「後輩み」を感じてちょっと嬉しくなった。ちゃんと先輩の言うこと聞くんだな。

あらためてよくよく考えると、原作では流川と対比する形で描かれている沢北栄治は、父親からバスケットボールの英才教育を受け、バスケには十分すぎる環境を与えられ、山王工業というレベルの高い高校への進学を選び、さらに挑戦を続けるためにアメリカへ行く、という、いわゆるバスケエリートだ。

それに対し、流川は「富ケ丘中学校」を卒業して「近いから」という理由で湘北高校へ進学するが、中学時代のバスケの成績や活躍ぶりについて、描写はほとんどないし、例えば両親がバスケットに理解があるのか、なども描かれていない。

「ごく普通の」小中学校時代を過ごし、例えばミニバス→バスケ部、という一般的な道を歩みながら、これだけの技術とオフェンス能力を身につけていたのだとしたら、ある意味沢北より相当、伸びしろがあるのではないだろうか、と思ってしまう。

原作でも流川はアメリカへ行くことを望んでいるし、きっと近いうちに渡米するだろう。
沢北はアメリカに行ってからPGのポジションを任されることもある、とインタビューで言っていたが、果たして流川はどうなるのか。
山王工業戦で視野の広さと的確なパスセンスも見せてくれたわけで、圧倒的オフェンスの鬼が、もしかしてPGのポジションを担ったり…と思ったりもするが、いやいややはり流川は流川のままで、ひたすらにリングを目指して突き進んでほしい、という気持ちにもなる。

これは余談だが、映画の中ですごく気になっていたことがある。
今回の映画での流川、ちょっと髪が長かったですよね。
特に襟足が原作よりかなり長く描かれていた気がします。

「インターハイ行く前に散髪に行ったほうが良かったのでは…」と思ったのですが、まあそんなことを気にしないのが流川楓という男、なのかもしれないですね。


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