【0094】スペインに学ぶガストロノミーツーリズム

本日は、まちづくりや地方創生系の流れで、三重県の取り組みがニュースに取り上げられていたので、その紹介。

食と観光はたくさんの目標に通じる

食の自給率向上や、持続可能な農業、そして観光といったテーマは複数のSDGsの目標にまたがって記載されています。観光だけでも、目標8・12・14に直接的にターゲットに設定されていますし、食についても、目標2「飢餓をゼロに」はもちろんのことながら、目標12「つくる責任・使う責任」でもそう。直接的ではなくても、「食」については自給率の向上や、タイトルにもある食にまつわる観光が盛んになることで、地方創生ならびに日本全体の「関係人口」の増加によって人口減少問題への対策にもなったり、「食」を通じて働き方について見直すことになったり、生産方法を見直すことで「環境」につながったりと、非常に広くつながっていきやすいテーマです。

スペイン・バスクの成功例

そうした背景からか、記事に記載されていますが、日本の自治体がガストロノミーツーリズム(食の観光)や、美食の中で食の地産地消の成功事例として、スペインバスク地方に視察に行く機会が増えているそうです。記事でメインに取り上げられているのは三重県の視察とその内容。紹介されている「アクアイグニス」はSDGsとは関係なく、美食等の方面で気になっていたお店でした。

Transforming Society Through Gastronomy

この視察先になっているバスク地方、「食を通じて社会を良くするシェフ」に賞をあげているそうで、しかもなんと賞金1300万円だそうです。えぐい。選考基準は、料理の技術でも味でもなく、「数ある社会問題の中から世界に向けて何を発信すべきか」を審査員で話しあうとのこと。

絶滅が近いとされるアンデスの食用原生植物の種子を採集・保存し、調査研究のためのリサーチセンターを運営するペルーのヴィルヒリオ・マルティネスや、シリア難民キャンプで女性たちに調理を教えることで、雇用を創出するプロジェクトを創設したトルコのエブル・バイバラ・デミールなど、いずれも料理人でなければできない、そして社会的インパクトの大きな活動を行う10人のなかで、今回最終的に選ばれたのは、スコットランド人のジョック・ゾンフォリロだった。

というように、料理人であることを起点に今ある社会課題の何かを解決しようとしている人を表彰するんだそうです。今年のグランプリに選ばれたジョック・ゾンフォリオ氏は、「アボリジニの食文化の復興と自立」を行った方だそうです。
ちなみに、この記事の中には、こんなアワード創設に対する想いが書かれています。

BCWPは、まさに時代の声にこたえるかたちで生まれたアワードと言えるだろう。しかしそれはとりもなおさず、現代社会の危機感が生み出したものでもある。成澤は言う。「レストランの人間が、おいしさや調理技術の向上だけを考えていればよかった幸せな時代は終わりました。食材ひとつとっても、今は集めるのに困ることが増えています。たとえば30年前とは違い、世界のどの国に行っても海の食材が少なくなり、質も低下しているのです。消えてしまった食材もあります。日本は市場の「集める能力」が発達しすぎて、東京にいると気づきにくいのですが、日本の各産地の惨状は世界とまったく変わりません。
地球環境はもう手遅れかもしれないところまで悪化していますし、飢餓などの社会問題も山積みです。世界中の料理人がそんな危機感から動き始めている。食に直接関わる人間だからこそ、責任を持って環境や社会の問題に取り組む必要がありますよね。BCWPの創設と、私たちのように協力する料理人の多さは、その焦りを体現しているのではないでしょうか」

食を通じて社会について考える。食は本当に色んなこととつながっていきますね。

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