【0191】新しい時代の共生のカタチ

こんな本を読みました。

東京の小金井市にある施設で、保育所・認知症デイホーム・地域の寄り合い所の3つが一つになった施設「また明日」が紹介された本です。

全編にわたって書かれているのは、表紙にも記載のある、まさに「新しい時代の共生のカタチ」についてでした。
いや、新しい時代と言いつつ、古くて新しいと言う方が良いのかもしれない、そんななんか大事な話が書かれています。

「また明日」の特長

保育所・認知症デイホーム・地域の寄り合い所が一緒になった施設とのことで、「富山型デイサービス」というものが有名なものとしてはあるそうですが、著者によるとこの「また明日」はそれを目指したというよりも、自分たちの大事だと思うことを突き詰めていったところに、独自に出来上がったものだろうということ。そして、「また明日」はさらに地域に開けているという印象を受けたそうです。

富山型デイサービスはこちら

どんな特長かと言うと、まず「分けない」。保育園の子どもたちも、デイホームに通うおじいちゃんおばあちゃんも、なんだったら、この地域に住んでる小学生や中学生も、みんな一緒に生活を作っている場所。とのこと。

みんなが助け・支え合う、たくさんの光景

認知症の方でも、子どもの世話をすると、自分にとってもプラスになったり、子どもの側からもおじいちゃんおばあちゃんのお世話をするという光景も広がっているそうです。
子どもからすると、お散歩の途中で見つけた草を使って舟や笛など色んなものを作ってくれるおじいちゃんで、認知症患者としては見てないんだろうなというシーン。
お年寄りからすると、食事を食べるのにサポートが必要だったとしても、スタッフからの「あーん」は、なんかイヤだけど、子どもから「あーん」とされると、照れながらも食べちゃうというシーン。
小学生が友達を連れてきて、「おばちゃん、お腹空いた!そうめん茹でて!」と自分の家と勘違いしてるんちゃうか。というシーン。
小さい頃にこの「また明日」で育ち、中学生になっても顔を出す子。しかも友達と恋バナをしながら子どものお世話を手伝うというシーン。
3歳の女の子と90歳を越える認知症のおばあちゃんが、日常の一つとして死について話しているというシーン。

助けあい・支え合いという言葉でさえ、足りないのでは?と思えてくるような「共生のカタチ」がたくさん紹介されています。
全てをまとめると、「新しい時代の共生のカタチ」なんですが、一つ一つのエピソードに、深い発見や考えさせられるもの、他人事ながら感動してしまうものがあるので、ぜひ読んでいただきたい内容です。

保育や介護。だけじゃない考えさせられること

この本では、保育や介護に関する視点だけでなく、色んなことについて考えさせられます。
子どもも大人も老人も世代も人種も障がいも、世界にはみんなが一緒に住んでいるのに、施設になると「保育所」「介護施設」と隔たりを作って分けることがそもそも変だったんじゃないか。
分けるということは効率を生むかもしれないけれど、効率を重視しまくった先に本当にやりたかったことは、つながっていないかもしれない。
仕事が出来るということへの憧れや自己顕示欲で動いていくと、学生の頃に心に想っていた理想の福祉とかけ離れていってしまう(だけど、福祉はだいたいそういう仕事の回り方になってしまう)。
法律や縦割り組織による、連携の難しささえ、担当者やその組織の置かれた状況によっては、ポジティブに解決していく動きになることもある。

福祉の話だけじゃなく、「生きる」ということについて、色々と考えさせられるお話が多かったです。

保育園に通う子どもと、定年した親を持つ身としても、家族や社会との関係性を考えさせられる本でした。
一つ一つのエピソードがじんわり色々と考えるキッカケや種をくれているような気分になる読後感で、また何か大事な時や、なんでもない時に読み返したいなと思います。

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