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【0308】目標15:陸の豊かさも守ろう

SDGsの17の目標、169のターゲット、232の指標を改めて今の知識で振り返ってみるシリーズ。目標とターゲットの参考は、一番分かりやすい(と思っている)Think the earthさんのサイトからお借りします。

目標15 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、並びに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する

日本語の目標タイトルが「陸の豊かさも守ろう」なので、海に対しての陸の目標だよね?と思いがちですが、中身は実は近いところもありますが、むしろ「気候変動」と双璧をなす勢いの「生物多様性」についても多く書かれている目標です。※日本では生物多様性の話は気候変動ほど聞かないですが。

<ターゲット>
15.1 2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。
<指標>
15.1.1 土地全体に対する森林の割合
15.1.2 陸生及び淡水性の生物多様性に重要な場所のうち保護区で網羅されている割合(保護地域、生態系のタイプ別)

<ターゲット>
15.2 2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。
<指標>
15.2.1 持続可能な森林経営における進捗

のように、森林を守ることを目標に置きつつも、その目的は生物多様性を守ることとも一体になって考えられているところがあります。
「陸の豊かさ」という表現ではありますが、英語では「LIFE ON LAND」という目標なので、「命」という部分にもフォーカスが強くあたっている目標です。

◯生物多様性は超おもしろい:活動家の方々に話を聞いてきた

以前に書いたnoteで、全5回に渡って書いてしまうほど、深く面白く、そして大切なテーマだと感じる生物多様性。以下に①のnoteをリンクしておきます。

生物多様性の基本の話もあり、
生物多様性COPの話もあり、
もっというと、COPというグローバルな会議にローカルな目標を持っているアクティビストたちが参加する意味についても、語られていました。

自分でも読み返してみて忘れていたこともたくさんでした。
生物多様性のことも、それ以外のことについても気づきが広がります。

コロナ影響を受け、そのまま開催されるのかどうかわかりませんが、次の生物多様性COPは10月に中国・昆明での開催予定。愛知目標で決めた枠組条約の次の10年を決める大事な会です。草案も出ているようです。

◯自然は管理し、守られるものなのか?

生物多様性の話になると、「保護」や「管理」という手段が出てくると思います。実際、ターゲットの中にも

<ターゲット>
15.8 2020年までに、外来種の侵入を防止するとともに、これらの種による陸域・海洋生態系への影響を大幅に減少させるための対策を導入し、さらに優先種の駆除または根絶を行う。
<指標>
15.8.1 外来種に関する国内法を採択しており、侵略的外来種の防除や制御に必要な資金等を確保している国の割合

こんな感じで「侵略的外来種の防除や制御」というものが書かれています。

確かに大事な活動ではありますが、ここに一つの疑義を提案している本があります。

何をもって外来種とするのか、何をもって理想の自然として「管理」するのか、実は自然というものはずっと変化しつづけながら形作られているもので、それこそが生態系。崩れた生態系も崩れた中での生き残り方を模索して変化していくということが、徹底的に管理する手法の中には、実は見落とされているんじゃないかと思わせる本です。

本の紹介より
◆人間が改変してしまった自然は、人間が介入して守るべきだ
本書は、人間の影響を排除して「過去の自然」を取り戻すことや「手つかずの自然」を守ることばかりに固執してきた従来の自然保護を批判し、もっと多様で現実的な目標を設定する自然保護のあり方を提案する本です。では「多様な現実的な目標設定」とはどのようなものでしょうか。

たとえば、「温暖化による絶滅の回避」です。動植物はそれぞれの種にとって好適な気候のところに生育していますが、温暖化に伴い、極方向や高地へ移動する必要に迫られています。しかし、温暖化があまりに急激なため、移動を自然に任せていると、多くの種が絶滅する危険があります。この危険に対し、市民ナチュラリストや林業関係者の一部が立ち上がり、樹木を寒冷な地へ人の手で引っ越しさせる「管理移転」を開始しました。しかし、移転先の土地ではそれらの樹木は「外来種」です。この行為を目前にし、生態学者たちは「自然への介入を許容するか」「絶滅を容認するか」というジレンマに陥りました。ところがいまや、この管理移転の指針づくりに協力するなど、生態学者たちも温暖化による絶滅回避に向け動き始めています。これは「過去の自然」の再現や「手つかずの自然」の防衛ではなく、「絶滅の回避」という目標を掲げて自然への積極的な介入を行う、新たな自然保護の形と言えます。

本書は、「手つかずの自然」の崇拝はアメリカで生まれた文化的信条で、それが世界中に輸出されたものであることや、「過去の自然」は安定していて環境保全などの機能も優れていたという仮説が研究により否定されていることを指摘しています。「過去の自然を取り戻せば、さまざまな問題が解決する」という考えは幻想に過ぎないのです。さらにいえば、自然そのものが持つ大きなゆらぎと、人間による環境破壊により、どの時代の過去であれ、過去の自然の回復は不可能です。盲目的に過去を取り戻そうとするのでなく、「絶滅を回避する」「鳥や蝶の渡りを助ける」「在来種の繁殖を促進する」などの現実的で多様な目標を持って、積極的に自然に介入する自然保護が今こそ必要であると著者は提案しています。

この目標に限らず言えることかもしれませんが、本当のことを分かるのが難しい中、「盲目的」な過去の理想を追うのではなく、未来に向かう活動を続けることと、それにすら「問い」をたて続けることが大事なのかもしれません。

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