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【0408】アーバンイノベーション神戸

先日、グランフロント大阪のSpringXのオンラインイベントで、神戸市のオープンイノベーションな取組「アーバンイノベーション神戸」の事例をお聞きしました。

アーバンイノベーション神戸って?

神戸市の取組だそうですが、スタートアップの技術力と行政のもつ社会課題をオープンイノベーション型で取り組んでいくプロジェクトのこと。

普通、行政の公募というと、細かい仕様書があってそれに答えられる企業が公募されるというものですが、アーバンイノベーション神戸では、仕様書になる前の段階の「課題自体」を公募にかけ、どんな解決策があるかを行政職員も一緒になって検討を重ねていくというフローで行うそうです。

<通常>
課題認識→調査→予算化→予算審議→仕様書→公募→調達
<アーバンイノベーション神戸>
課題認識→課題公開→公募→実証実験→検証→予算化→予算審議→調達・利用開始

というフローの違いがあるそう。これをすることで、
○行政側
調達の改革に。そもそも仕様書を作るプロでも無いのに、ここまでを時間をかけて行っていたところが無くてよくなる。
○スタートアップ側
・自治体と契約するきっかけ
・神戸新聞などのメディア露出のチャンス
・PoC:行政職員と協同でサービス開発をできる。

という双方のメリットを生むことができたそうです。解決のプロではない人間が解決方法を考える部分に時間を割くよりも、課題のプロと解決のプロで一緒に試行錯誤しちゃいましょう。ということだと思いますが、行政らしからぬ、先進的な進め方ですね。

成功する「仕組み」

とはいえ、こういうオープンイノベーションものって、各地で色々とやられているとは思います。今回はアーバンイノベーション神戸が考える成功の仕組みというものが共有されていました。

①本格始動の前の「仮説検証」
アーバンイノベーション神戸の開始前の2017年に、実は2件PoCをまわしていたそうで、その際に改善しないといけない課題がいくつか明らかにできたそうです。その上で本格スタートを切れたことが非常に良かったとのこと。
●解決が非常に困難な課題をセットするのは望ましくない
●4ヶ月ほどの短い期間で回すことも多く、その際はある程度サービスができている状態のものと組み、走り出せる進め方が良い
など。

②予算化できなかった事業が「アーリーアダプター」
先程の通常の公募の流れに書いた内容だと、実は「公募」にかける前の段階で、予算化ができなかった課題もすでにたくさんあるはず。つまりは費用対効果が明示できなかったものなどがそれに当たるはずで、それらはいわゆる「やってみなくちゃ分からない系」。その困ったペインを見える化して支援することが成功につながったのでは。とのこと。

③安打製造×本塁打狙いで「二兎を追う」
50%は「これは既存の技術をこういう風に組み合わせればうまくいくだろう。」というものを公募するそうです。それはこの取組自体も事業だから成功をさせておく必要があるため。
もう半分はホームラン狙いで成功するか失敗するか分からないものを設定することで、より高みを目指しているそう。

④期待値コントロール「幻滅期」を作らない。
ガートナーのハイプ・サイクルの幻滅期のような部分をできる限り減らす。幻滅期を経て、正しき理解が進んで利用が促進されるというものがハイプ・サイクル的な動きですが、そのギャップ期間を極力へらすため、行政側にも、期待値を高く持ちすぎないようにするそう。課題と失敗もたくさんある中で進んでいくことを、行政にもスタートアップにも正直ベースで伝えて進めていくのが良いとのこと。

⑤トップ・ミドルマネジメントとの合意形成「バリューネットワーク」
事業をする時に自分だけが熱い想いを持って取り組んだとしても、うまく行かないことがある。そのために、トップやミドルとのコンセンサスをしっかり得ながら進める。(当たり前のようで、難しいし手間に感じてしまう部分ですね。)

⑥主役は「スタートアップ」と課題を抱える「行政職員」
事務局が主役になったとしても、見えない課題に目をつぶって解決策を考えるような状態になる。なので、事務方として一歩ひいた状態で、プロジェクトが自走するようにしているとのこと。
これは、自分たちの失敗からの経験だそうで、当初は自分たちが引っ張っていくようにやっているものも多かったそう。そうしていると、自分たちが手が回らなかったものがあり、ちょっと引いてみようとやってみたところ、それがめちゃくちゃうまく行ったものがあるそう。それが気づきとなり、今の形にしているそうです。

次なる事業「アーバンイノベーション・ジャパン」

すでに動き出しているそうですが、この神戸の取組自体も「オープンイノベーション」化すべきだとのことで、神戸市の手を離れ、日本全体へ広げようとしているそうです。それがアーバンイノベーション・ジャパン。

事務局のファシリテーション力も問われるところが多いと思いますが、様々な地域での取組の知見を知れること、そして取り組んでいる人たちと繋がれることは、事務局をも孤独から解放し、居場所を持てる良きつながりになるのでは。と思いました。

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