【0267】読了:リビング・シフト

タイミングがすごい本ということで読み始めて止まっていたリビング・シフトを読み終えました。

以前、少し読んだ段階で書いていた通り、
一極集中型の崩壊・脱センター的生き方への価値観
についての事例や考え方、カヤックさんの取組について紹介されていて、
非常に読みやすく、集中して読めばあっという間に読めてしまいます(ほな、はよ読み終わっとけというのは置いといて)。

リモートで色んなことが解決するテクノロジーの進化や、経済的に豊かになってきたことなどからの価値観の変化によって、東京一極集中から地方への分散へと少しずつ動いているというのは、なんとなく感覚としても理解できるかと思います。
本書では、そういった状態を受けて発生しているサービスやマインドセットの変化について語られているように思います。

場所を選ばない暮らし方へのサービスなど

カヤックさんが手がける地域と人のマッチングサービスである「SMOUT」

月額制で住む場所を全国どこでも選べる「ADDress」

鎌倉のコミュニティ「カマコン」

などの紹介とともに、語られていた面白い話が。
移住・定住というものが語られる際、
①まず移住がある
②そこから関係性を育んでいく
というのがわかりやすい流れだと思います。ただ、この順番、普通に考えて、移住にハードルがありすぎますよね。

カヤックさんが行ってきたカマコンやSMOUTの活動では
①オンラインでのやり取り(オンライン飲み会等含む)がはじまる
②関係性がそこで育っていき
③だんたんとコミュニティへの比重がたかまる
④はい、移住します
という流れ。これはめちゃくちゃ自然な活動だと思いました。

ZOOM飲み会や、REMOを使った飲み会が良いんじゃないか。というようなことを最近よく目にしますが、ここに「地域コミュニティ」の概念が入っていれば、徐々に移住という選択肢が濃くなっていくという動きも、一部の人で行われていたことが、もしかするとアフターコロナで一般化し、加速するかもしれないなと思いました。

関係人口とネット関係人口

地方創生を語る際に、最近出てくる言葉として、
「その地域に住む人の人口」「観光で訪れる人の人口」に加えて、住むわけじゃないんだけど関わってくれる人たちの人口として「関係人口」という言葉が良く出てきます。

SMOUTでは、この関係人口のスコアとして「ネット関係人口」というものを計測しているそうで、SDGs未来都市や第1回ジャパンSDGsアワードを受賞していた北海道の下川町などが、2019年末でランキング1位を獲得していたそうです。
SMOUTのWEBサイトには、その指標も紹介されていて

【ネット関係人口の算出に関わる指標】
定住人口
公式Facebookページのいいね!数
公式Twitter、Instagram、YouTubeのフォロワー数
Instagramの投稿数と#市区町村名の投稿数
SMOUTにおける地域のプロジェクトへの「興味あり」の数
SMOUTにおけるオンラインでの交流数
SMOUTにおける地域への応援の数
SMOUT利用者の「居住地」「関係している地域」の数

というものから算出しているそうです。

この活動を通じて、著者でカヤックの代表である柳澤さんが言うには
「どの地域にも必ず魅力はある。」とのこと。

ランキングに関係なく、その地域ごとに独特の魅力があるのだそうです。

複業で生まれる関係社員

地方創生で言う関係人口に加えて、リビングシフトでは働き方の変革にも触れていて、当然「副業・複業」の話も出てきます。

その中で面白かったのが、カヤックさんの中で「あるECサイト運営会社で働きたい」と言った社員さんが自ら制度を作って、出向という形でその会社に行った時のお話。

その会社で自身が経験を積むだけでなく、
先方からカヤックの経営についてヒアリングされる機会も多く、
その後カヤックに戻ってから一緒にビジネスをはじめるキッカケになったそうです。

元々は社員で、その人が一瞬外に出て、また戻ってきて、という事例ではありますが、これが会社の外の人間だったとしても同じことは起こりそうですよね。

そういう「関係人口」ならぬ「関係社員」という考え方も、リビングシフト的働き方の変化の中にはあるとのこと。

家族の形だって変わる

これは一概に一極集中から分散型によってのみ起こる価値観の変化ではないと思いますが、血の繋がり以外にも「家族」という形があるというお話も。

「拡張家族」という考え方で

60人もの方が一緒に「家族」として暮らす家族観があるそうです。

言われてみれば、血の繋がりはなくても、それこそ家族のように何か困ったことや嬉しいことがあった時に自分ごととして関わりたくなる、友人や同僚は自分の周りにもいますが、それも「家族」としてマインドを持ってしまうことで、何か新しいことが起こりそうな想像もできます。

山口周さんとの対談

巻末には山口周さんとの対談も収録されており、その中でも非常に面白いリビングシフトの考え方やアイデアが披露されています。

例えば、日本の省庁は東京に集中するんじゃなくて、数年に一回サイコロで全国に移動したらいいんだ。とか。
※これ、サイコロでボーナスを決めるというカヤックさん側ではなく山口さんからの発言として記録されています。

この中でも

会社で偉くなるとか都心のタワーマンションに住む、
センター的な生き方に魅力を感じなくなった

という話に触れられていますし、地方という「箱」が先に変わって、そこに人が集まるという形から、人が集い、集まった人たちでそこに「意味」的な価値が生まれで箱が定義されていく。というような、ブランド論にも通ずるようなお話も出てきます。

また、東京の良さにも触れられていて、大きな街だからこそ、マイナーな趣味でも一つの文化が出来上がるように、多様性の面白さは抜群という話にも触れられています。逆にそれは地方で言う、世間の狭さにもつながる話として。

つながる。の話

この本では、リビングシフトという考えから住み方、生き方、働き方の変化をとらえていますが、その辿る道の中や到達しそうな場所には、何か「食」というテーマや「観光」というテーマ、「働き方」に「良いチームづくり」に、と色んな方向から「サステナブル」とか「何か良き状態」というものを考えた時に辿るものと、非常に近しい考え方や具体物が出てくるなあ。と思いました。
グレートスピリッツというのかビッグストーリーというのか、何か神秘的にすら思えるつながりを感じてしまいます。

著者あとがきより、好きだなと思ったフレーズです。

どこに向かうかわからない状態で進んでいっても、個人ひとりひとりが本当に心地いいことを追求すれば、きっと世の中は良くなるし、今僕が残りの生涯をかけて取り組もうと思っている、資本主義のアップデートということにもつながってくる。

地方創生・働き方の模索・生き方の模索、そんなことを考えている人におすすめの良著でした。


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