【0067】インクルーシブデザインとサーキュラーデザイン ―モノが自由に捨てられない時代のものづくり ①

本日はセミナーに参加してきました。タイトルの通り、

インクルーシブデザインとサーキュラーデザイン
 ―モノが自由に捨てられない時代のものづくりー

というセミナーです。インクルーシブや包摂、ダイバーシティというテーマもそうですしサーキュラーエコノミーもSDGsの中で非常によく聞く単語だと思います。

登壇者は、インクルーシブデザインといえばこの人な、NHKの番組カガクノミカタなどの番組制作委員も行っている塩瀬隆之先生でした。

インクルーシブデザインとは

製品やサービスの設計過程の早い段階からエクストリームユーザーをおさえて、協働的な設計チームを形成し、社会課題解決に資する革新的なデザインを得る方法について

というようにセミナーでは紹介されていました。
インクルーシブやインクルーシブデザインという単語を聞くと、パッと思いつくのは「障害者向けのデザイン(広義の)」と思う方もいらっしゃるかと思います。実際によく聞かれる質問として、
「インクルーシブデザインとユニバーサルデザインの違いは何ですか?」という質問は非常に多いそうです。
インクルーシブデザインは上にあるように、「エクストリームユーザー」を開発・設計チームとの協働スキームの中に、スタート地点で一緒に入れてしまい、そこから得る気づきを元に、他のユーザーにひろげていくデザインの手法とのことで、必ずしも障害者を対象にしたデザインではないとのこと。

ある製品やサービスを
使わない人
使えない人
使おうと思わない人
をリードユーザーとして観察から他のユーザーとも共有可能なことを探す。

という表現もされていました。使わない・使えない・使おうと思わないというエクストリームなユーザーを想像した時に、障害者というのがあてはまりやすいということでした。

気づきのキッカケ

モナリザの絵
と聞いて、知らないと答える人はあまり多くはないと思います。が、次に、じゃあモナリザの手は右手を上にしている?左手を上にしている?服は長袖?半袖?髪の毛はセンター分け?七三分け?と聞かれると、あまり答えられないと思います。
これは実際に塩瀬先生が体験されたことで、目の見えない方に美術館を案内するという活動をされた時の経験だそうです。目の見えない方に絵画を説明しようとすると、絵画に描かれている上記のような情報をお伝えすることになると。
他にもきっと歴史的な情報なども合わせて伝えることになると思うんですが、そうしたときに、自分が普通に絵画を鑑賞しにきた時とは、全く異なる新たな気づき・発見が多く、終わった後にはその人を”助けてあげていたはず”の自分の方が、「ありがとうございました」と心からのお礼が口から出てしまった。という経験があるそうです。
その経験を経て、インクルシーブデザインという発想で、商品・サービスの価値を一緒に高めていくことが可能になるんじゃないかと考えたとのことです。

他に出た例としては、例えば自分が今、右手を骨折していたとする。その時、駅の改札を抜ける様子を想像してほしい。または、自動販売機でジュースを買う手順を想像してほしい。そうすると、かなりの確率で右手・右側へのアプローチが多くなり、残った左手での操作に難しさをおぼえないでしょうか?という内容。
普段、何も気にせず生きていると気づけないことですが、「右手が使えない」というエクストリームな状態になると、この社会がいかに右利き用に構成されてしまっているかに気づくことができる。

というものでした。

Disable PeopleからDisabled Peopleへ

ヨーロッパでの障害者の表現の仕方の変化について。
昔はDisalbe people=できない人という表現だったそうですが、今は、Disabled peopleという表現になっているそうです。Disabled peopleつまり、受動的に「できないという状態にさせられている人」という考え方です。先ほどの駅の改札や自動販売機の例もそうですが、できない・やりにくいという状態は、社会の側に存在しているのであって、障害者の側にはない。という考え。これが認識されていれば、「はいはい、対応しましたよね?」というステレオタイプな障害者対応デザインは本来的にはなくなるはずだとのことでした。
例えば、

ダウンロード

こういうタイプのエレベーターの点字ボタン。これも、おそらく目の見える人がデザインしたものだということ。それは、左側の23を押そうと探した時は、左に点字があり、23だなと分かる。そのまま右に手をスライドしていくと、今度はいきなりボタンが出てきて点字がない。このボタンは何を意味しているの?となるという状態になることがあるそうです。
他にも、耳の不自由な人向けに手話を導入している施設があったとして、その施設は(すべての)耳の不自由な人にやさしい施設のように思えますが、実際には手話を扱える人はそのうちの19%ほどだそうです。
こういったステレオタイプになってしまうのは、「個人」の側に障害があるという認識になってしまうからで、これが「社会」の側に障害があると認識すると、障害者が本当に求めることを確認し、それに合わせて状況を変化させていくことになるとのことでした。

非常に濃い内容でしたので、続きはまた明日、書かせていただきます。
ちなみに、塩瀬先生のインクルーシブデザインとダイバーシティの記事もありますので、下記にリンクさせていただきます。

②はこちら↓


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