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第3回 日本生命の本気度を見た!

 1月15日に、佐賀経済同友会が主催した「日本生命のESG投融資の取り組みについて」という講演会に参加しました。日本生命佐賀支店長の高岡俊之さんのリードで本社執行役員・財務企画部長の岡本慎一氏がオンラインで講義を行う形式でした。

 日本生命の本社の財務企画のトップ直々のレクチャーと、またとない機会なので、とても楽しみにしながら、気合を入れて聞きに行きました。講演の感想ですが、結論的に申しますと、日本生命はESGをキレイゴト、つまりポーズとしての取り組みではなく、本業の1丁目1番地としてESGに本気で取り組んでいくという本気度を確認させてくれる内容の講演でした。私にとりましても「5分でわかるSDGs基礎講座」で取り上げている内容の実践的な裏付けとして大変勉強になりました。

 日本生命は生命保険を売る会社であるとともに、資産を運用する機関投資家としての金融業の側面があります。その資産運用に関して全資産を財務情報のみではなく、環境・社会・ガバナンスなどの非財務情報を組み込むESGインテグレーションを行うことを決め、2021年4月以降全面導入をするということです。これは、日本の生保では最も早い取り組みで、同じように取り組むことを表明している第一生命よりも早い導入です。これは、日本生命の生き残り戦略としての先駆者としてステイタスを構築するためだとも考えられますが、それとともに、今すぐ本気で取り組まなければ地球は手遅れになるという赤心からの思いからだとも考えられます。

 日本生命が、なぜ、急激にかつドラスティックに舵を切るかということについて、コロナの影響とESG投資のパフォーマンス(収益性)の良さと安全性についてオーソライズされた2点にあると説明がなされました。また、企業の姿勢としても、日本生命のマテリアリティ(重要課題)として環境のみならず、社会やガバナンスも同等に重要であるという立場をとるために、ESGに取り組むそうです。

 中でも印象的だったのが次の3点です。一つ目はESGについて投資先に対してエンゲージメント(社会問題や環境問題への対応について株主の立場から積極的に経営者と話し合うこと)を行う上で、サプライチェーン(製品の原材料・部品の調達から、製造、在庫管理、配送、販売、消費までの全体の一連の流れ)についても求めていくということでした。つまり、日本生命が投資する企業の取引の川上、川下に対しても、非財務資料の開示を求めていくということで、佐賀の企業も他人事ではないということです。

二つ目はダイベストメント(資金引き揚げ)の可能性ですが、考えていないとのことでした。投資先企業のESGに対する取り組みが良くないといって、資金を引き揚げたとしても他の投資家がその企業に投資をした場合、環境・社会の問題が解決の方向には結びつかないので、対話を通してESGの取り組みを促していくのがスタンスだということです。これは、なんか、感動的でした。実際、日本生命がESGエンゲージメントを行うことで、ESG指数を上げた投資先企業の株価が上がったという事例もあり、企業にとってもうれしいことですが、日本生命も資産価値が上がるわけで、ともにメリットが大きいということになります。

三つ目はESG投資に関して経済的価値(儲かるということ)と社会的価値(社会課題が解決すること)のどちらに重視するかについて、どちらも「主」であり、どちらかが「従」であることはないということです。社会・環境を悪くする投資はどんなに儲かっても行わないが、課題解決をするが収益が発生しない投資も行わない、という立ち位置も日本生命の本気度を感じます。

日本生命は今回、全アセットクラスのESGインテグレーション型のESG投資に移行するにあたり、企業としての相当の研究と覚悟を持って挑んだことがよくわかりました。もっと若ければ、私の保険は全部ニッセイにするのに、と思いました。


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