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朝が来る ★3.8

劇中、台詞回しやカメラワークがめちゃめちゃドキュメンタリーチックなシーンが何度もあって、すげぇ『光』(数年前カンヌでかなり評価された、弱視者と視覚障害者用の映画音声ガイド作る人とのラブストーリーを描いた作品)っぽいなぁって思ったら、やはり同じ監督であった(河瀬直美氏)。らしさが存分に出ていた作品だったなと思う。

特別養子縁組というか、若年で妊娠することで訪れるあまりにも残酷で苦しい現実を描いた作品だったな。
中高生で子供を授かることで、周りの大人たちはなんとか「なかったこと」にしようと奔走するが、果たしてそれを子供を授かった本人は望んでいるだろうか。テンプレート的な「幸せ」や「思いやり」ばかりを与えようとし、本人の心を土足で踏み付けていやしないだろうか。

周りの大人や友達がすべきは、恐らくそういうことではなく、本人の気持ちを分かろうとするというよりも、とにかくただ聞いてあげて、それを受け止めるという意思と姿勢をしっかり示すことなのだろう。それをすることで、本人も自ずと、今後どうするべきか、どうしたいか、気付いていけるのではないか。

そんなことを鑑賞中に思っていた。非常に鋭くていい作品だったと思う。

主演は完全に蒔田彩珠でした。『星の子』でも凄くいい演技だなぁと思ってたけど、この作品で完全にファンになった。怪演だと思う

一点文句をつけるならば!主題歌の「アサトヒカリ」を少々使いすぎな嫌いがあった。作品全体を彩る筋としての役割を果たす曲であることは理解できるのだが、観衆も馬鹿ではないので、冒頭のラジオ?から曲が流れるシーン、中学生時代のヒカリたちが歌っている場面の2つがあれば、充分製作側が意図するように受け取ることが出来たであろう。同種のミスは『天気の子』や『糸』でも見られるが、正直いただけない。制作途中に「さすがに曲流す回数多すぎないっすか?」とでも誰か言えなかったのだろうか。

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