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松下さちこの標本室

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自身のイラストを使用したコラージュ、ペイント、手描き文字など様々な手法で作品を制作する松下さちこの小部屋。標本室に飾られた夢の欠片をお楽しみ下さい。
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ニコラス・カルペパーの窓|松下さちこ|感性の処方箋

 ニコラス・カルペパーが広め、後の世に残したものを、松下さちこが柔らかな心で受け止め表現したのは、感性の処方箋。そこには、私たちひとりひとりを癒し、刺激し、想像させる素敵なラベルが塗布されていました。  モーヴ街7番地「スクリプトリウム」では、植物と占星術が織りなす、新たな世界が私たちを優しく手招きします。  色鮮やかなハーブがまわりを囲み、太陽と月が左右で絶妙なバランスを見せる中、鉱物はその関係性を支えるかのように存在感を示している。天と地の恵みを医学に用いることで革新的

松下さちこ《2》|私のお気に入りの、ほんの一部《2》

  松下さちこさんの引き出しの秘密の菓子箱。甘やかな旋律はまだまだ続く、まだ続く。アイスクリーム、ショートケーキ、マカロン、パフェ。さちこさんの魔法は、わたしたちの心をデザート皿に変えてしまう。  「甘く/冷たく/澄み渡る/ダンス」(高田怜央「ジェラート」『SAPERE ROMANTIKA』)。アイスクリームをひとくち。もうひとくち。胸にすっと溶けゆく感覚。冷たい宝石になるわたし。 *  砕けない宝石、やわらかな宝石、包み込んでくれる宝石。ショートケーキ、ささやかな休日

松下さちこ《1》|私のお気に入りの、ほんの一部《1》

 蓋を開けると、ハミングが聞こえる。甘やかな旋律。かすかな声が、だんだんと大きくなる。そして歌になる。はっきりと聞き取れるようになる、魔法の言葉。  松下さちこさんのイラストは、まるで秘密の菓子箱のよう。鏡台の引き出しにひっそりと仕舞ってあるとっておき。それもひとつではない。「これは私のお気に入りの、ほんの一部」。さちこさんは、私たちにこっそりウィンクする。  花だけでは足りない私のもとに、純白のお菓子がやってくる。耳元で歌を歌い、目の前で踊りを踊ってみせる。いつか古い映

松下さちこ|わたしは夢見る「博物画」

 胸躍らせる人々の群れを抜けると、モーヴ街7番地「スクリプトリウム」に写字室が立ち現れていた――。新たな入居者である松下さちこ様の作品は、科学的記載を重視した「博物画」のような簡潔な表現で描かれながらも、豊かな感情が見出される植物や鉱物、生物と、生命を宿した書き文字(カリグラフィ)が見事に融合しています。  2023年9月霧とリボンにて開催予定の個展《惑星の花びら(仮)》の序章となる作品群をお楽しみください。  太陽のような薔薇として咲く「自己」、思惑の雲の涙、結晶となっ