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狂乱のマリオネット

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両手にナイフをもった操り人形が繰り広げる物語。骨董屋のショーウィンドウに閉じ込められてしまった彼はどのように生き、どのように自滅するのか。順序は上から章立てしております。
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#アイデンティティ

時計の回想録

私は時計である。もしも、人ではなく時計が、君たちの〈人生〉を語ることが許されるのだとすれ…

マリオネットの冒険 〜自我の目覚め

黄色のまばゆいばかりの照明が顔を照らし、操り人形の性(さが)というべき本能を呼び起こした。…

マリオネットの冒険 〜自由の目覚め

日が沈んでも、照明はさらに明るく輝いてショーウィンドウを照らした。外の夜道は薄暗く、ショ…

マリオネットの冒険 〜時計とオルゴールと

マリオネットは、ショーウィンドウに飾られた一つひとつの売り物に近づいた。呼び名も知らない…

マリオネットの冒険〜壊れたオルゴール

かくしてマリオネットは、世界の秘密を暴く冒険を始めた。 まずマリオネットは、まだ音の鳴り…

マリオネットの冒険 〜もうひとつの人形

そのときマリオネットは、自らが愛を知らない道化でしかないということを理解した。しかし同時…

マリオネットの冒険 〜闇と光を生きること

絶えることなく内側を駆け巡る思考からマリオネットを連れ戻すのは、またもショーウィンドウの外での出来事であった。夜の闇が訪れたのだ。 彼は外の明かりが少しずつ暗くなっていくのを感じた。パッサージュ中の店はもうとっくに閉まっていたが、店の照明はまだついたままであったものが、ひとつまたひとつと消されていくのが見えた。パッサージュの道の両脇の街灯も向こう端から一つずつ消えていき、代わりに黒くなっていく様子が見えた。人が夜闇と呼ぶものが迫ってきて、じきにショーウィンドウの世界にも訪れて