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サガンというか、上白石萌音 【読書記録】

最近、暇な時にYouTubeの『木曜日は本曜日』企画をちまちま見ている。芸能人が、自分の人生を変えた本を3冊紹介する(企画としては10冊挙げる)という内容。

そのなかで上白石萌音さんがあまりにも生き生きと感情豊かに紹介するもんで無性に気になってしまい、フランスワーズ・サガンの『悲しみよ こんにちは』を即買い。

<ストーリー>
ものうさと甘さが胸から離れないこの見知らぬ感情に、悲しみという重々しくも美しい名前をつけるのを、わたしはためらう――。

セシルはもうすぐ18歳。プレイボーイ肌の父レイモン、その恋人エルザと、南仏の海辺の別荘でヴァカンスを過ごすことになる。そこで大学生のシリルとの恋も芽生えるが、父のもうひとりのガールフレンドであるアンヌが合流。父が彼女との再婚に走りはじめたことを察知したセシルは、葛藤の末にある計画を思い立つ……。
https://onl.tw/BV5Pr1C

読み終わってからパッと思い浮かぶ単語はlivelyやvividなど、内容というよりは文章表現に対する印象。真夏の日照り、汗ばむ体にザラつく砂の感触、地中海や浜辺の椰子の木など、そういったものが本を閉じた後も感覚的に残る。

主人公父子が遊び人すぎて、正直ストーリーとしては共感度が低いが、感情の機微のフルコースといった感じで、これぞ読書体験と言えるような微細な心情が一人称で語られている。映像媒体で再現しても同じ楽しみ方はできないと思う。本を最も本らしく楽しめている気持ちになる本。上白石萌音が「読書の熱が再燃した」と言っていたのも頷ける。そして微細だけど、どれも人間の感情の動き方として違和感無く共感ができる。

クライマックスにはハッとさせられるものがあり、ずっしりと尾を引く。「罪は現代社会に残った唯一の鮮明な色彩」なのである。


もやもやしてるひとや世の中が嫌になってきた人におすすめとのことだったが、上白石萌音でも嫌になることがあるというのが一番の救いだと思う。「本は逃げ場所」というのは本当に大共感。自分に寄り添ってくれる本を一冊知っているだけでも大変心強い。

自分が紹介するとしたら、迷いなく村上春樹の『風の歌を聴け』です。


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