防音カーテンに防音マイク、そして蛾の翅を利用した新たな吸音材の開発へーー「防音技術」の最前線を探る

Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート
2022.9/30 TBSラジオ『Session』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、最新の防音技術について、製品や研究状況について紹介します。

◾日常に溢れる防音技術

コロナ禍でリモートワークが増えたこともあり、リモート会議中に自宅の生活音をカットする技術等、「防音技術」に注目が集まってきました。昨今では、自宅でYouTubeやゲーム配信を行ったり、人も増えてきました。

例えば、吸音材を差し込むことができる防音カーテンが発売されています。部屋の壁の手前に取り付けることで、反響音を和らげたり、声が大きくなりがちなゲーム実況の音が漏れないようにするものです。

もちろん、防音環境の必要性は自宅に限りません。例えば、すでに多くの駅や公共施設等で、15分から利用可能な防音個室も増えてきました。カフェ等の環境でもオンライン会議は可能ですが、自分の話す声はどうしても周りに聞こえてしまうほか、環境音が相手に伝わってしまうからです。

一方で、防音をうたう筒状のBluetoothマイク「mutalk(ミュートーク)」は、カフェなどで声を出しても、周囲に自分の声が聞こえにくくする消音機能が搭載されています。同時に、周囲の雑音はカットされて相手に伝わるものです(ただし、筒状のマイクは大きく、目立つものと思われます)。(現在は予約受付中で、商品の発送は11月~12月とのことです)

◾蛾の翅を利用した吸音材の開発

また、近年は防音素材として、我の翅(はね)を利用した吸音材が研究されています。イギリスはブリストル大学の研究チームが2022年6月に発表した研究によれば、蛾の翅を壁の表面に貼り付けることで、音波の87%を吸収することが可能です。

蛾の翅は、天敵であるコウモリから逃れるために発展しています。コウモリは、超音波を発し、その反響から位置を特定する「エコロケーション(反響定位)」の能力を持っています。それに対して蛾は、翅に鱗状の鱗粉(昆虫のはねや体の表面を覆う微小で平たい葉状のもの)を持っており、これがコウモリの超音波を吸収し、位置の特定を困難にするのです。

この蛾の翅の構造は防音の壁の原理と似ていることから、今回の研究では、蛾の翅を硬い壁に取り付けても防音=吸音効果が生じるかについて実験しました。結果、蛾の翅は最大で87%の音をカットするとともに、この翅はどんな角度からの音も、どんな周波数にも対応できることもわかりました。さらに、蛾の翅は非常に軽量であることもポイントです。

研究者によれば、これだけの性能は従来の素材からは作成不可能とのことです。したがって、この非常に軽量で吸音効果の高い蛾の翅を利用した、新たな吸音材の開発に期待が寄せられます。今後の課題として、超音波のような高い周波数ではなく、人間の可聴域にある音の吸音に対応させるといった課題はありますが、今後の研究に注目が集まります。

ますます注目が高まる防音技術ですが、このように、日々技術開発が進んでいます。今後も防音技術について注目していきたいと思います。

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