防音環境を構築するーー「生活と音」を考える

2023.4/07 TBSラジオ『荻上チキ・Session』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、生活環境における騒音や、自宅でできる防音対策などについて紹介します。

◾騒音対策の必要性

4月から新生活がはじまる人もいますが、生活環境において音は重要です。以前も紹介した通り、騒音は私たちのメンタルヘルスに悪影響を与えるほか、高血圧や心臓発作、脳卒中等のリスクにもなります。

人は通常45デシベル以下を静かだと感じますが、60デジベルを超えるとうるさいと感じはじめます(40デシベルは図書館、60デシベルはトイレの洗浄音等が該当します)。また、昨今は騒音レベルを測定する無料のスマホアプリもあるので、これらを活用することもおすすめです。

また、アメリカで一番騒音が問題となっているニューヨーク州では、交通カメラに騒音計を搭載し、スピード違反同様に、「騒音違反」のドライバーを検挙するというシステムを警察が発表しています。最初の違反では罰金800ドルで、交通裁判所の審理を3回無視すると2625ドルの罰金となります。

ニューヨークでは騒音が昔から問題となっている他、コロナ禍で静かなニューヨークを多くの市民が体験したこともあり、騒音に対する意識が高まっています。実際、2022年にはマフラーや排気装置の違法改造に対して罰金を引き上げる州法が施行されています。

◾防音環境を自作する

このように、外から入ってくる音を防ぐことは重要です。一方、自分が発する音を外に響かせないための防音も、近年は重視されています。実際、自宅からのオンライン打ち合わせ等ではついつい声が大きくなりがちであり、動画配信など、自分から発する音を防ぐニーズもあります。

こうした防音ニーズの高まりを受けて、昨今は手軽に防音を可能にする商品なども多くあります。とはいえ、防音に関する製品は値段が高いものも多く、手軽な反面費用がかかります。そんな中、近畿大学2年生の大学生である中井七海氏は、近畿大学の情報を発信するキュレーションサイト「Kindai Picks」に、学生ライターとして記事を執筆しています。

中井氏は軽音サークルにボーカルとして出演しており、自宅で歌を練習する必要がありますが、し音漏れが課題でした。そこで防音環境を整えるため、音響・音響機器の専門家で、騒音対策等も手掛ける近畿大学の西村公伸教授にインタビューし、実際に自分で防音環境を整えています。

西村教授によれば、防音には音を吸収する「吸音」と、外部へ抜ける音量を小さくする「遮音」の2つの考えがあるといいます。また、吸音のための素材には綿素材などが使われることがある他、音楽室などにある穴の空いた「有孔(ゆうこう)ボード」も、音を吸収するためのものです。

西村教授のアドバイスから中井氏は、ポリエステル素材の断熱材(パーフェクトバリア)で吸音を、遮音としてプラスチック製のダンボールを利用し、机を囲むように高さ60センチ、奥行き90センチの防音室を作成しました。吸音材やプラスチックのダンボールにテープなど、費用は13000円程度で、作成には数時間がかかりました。

実際に音を測定すると、会話は防音なしだと最大74.7dBのところ、防音ありでは56.4dBまで下がりました。歌を歌っても、防音なしだと最大86.6dBで、防音ありでは73.7dBとなり、かなり音量を下げることに成功しています。

このように、DIYでも防音環境を整えることは可能です。いずれにせよ、生活環境の中で「音」は重要です。自宅や自宅周辺の音響環境に意識を向けることも重要であるように思われます。

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