自動車や飛行機の音が私たちの生活に与える影響とはーー「環境騒音」を考える

Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート
2022.4/22 TBSラジオ『Session』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、車や電車等の「環境騒音」が私たちに与える影響について紹介します。

◾長期間の騒音は身体にダメージを与える

道路を走る車や電車等の環境騒音(交通騒音)は、私たちのメンタルヘルスに悪影響を与えるだけでなく、高血圧や心臓発作、脳卒中等のリスクにも関連があることが、これまでの研究、特にこの10年間の研究で判明しています。

ただし、環境騒音が人体に与える悪影響について、多くの人はその危険性に気づいていないと専門家は指摘します。つまり、そうしたその事実を知らないか、知っていても過小評価しているということです。

まず、騒音が私たちに与える影響のメカニズムを簡単に説明します。人は騒音を感じると聴覚野とともに感情的反応を司る扁桃体が反応し、コルチゾールやアドレナリン等のストレスホルモンを発生させます。これらのホルモンが慢性化、つまり長期間に渡って騒音の影響を受けると、血管の機能等に干渉し、結果的に心血管系疾患のリスクを上昇させるのです。

次に音量についてですが、一般に通常の会話は約60デジベルで、自動車やトラックは約70~90デジベルです。人は通常45デシベル以下を静かだと感じますが、60デジベルを超えるとうるさいと感じ始めます。また、夜間は40デジベル以上の環境は健康に悪影響を与えると考えられており、交通量の多い騒音環境で生活を続けることは、リスクになることがわかります。

例えば、ドイツのフランクフルト空港周辺に住む人は、環境は似ているが静かな地域の住民に比べて、脳卒中のリスクが最大7%上がることを、100万人以上の健康データを用いて分析した2018年の研究もあります。

一方、こうした研究には個々人の音の感じ方に差異がある等の理由から、その正確性には議論の余地があるという指摘もあります。とはいえ、騒音環境そのものに対して注意する必要があるのは間違いのないことであり、WHO(世界保健機関)も2018年のレポートで、環境騒音によって多く人が健康を害していると述べています。

◾自分の住居環境の音量を知る

騒音はある程度暮らしていると慣れてくるものですが、実際には身体に悪影響を与えているのです。では、自分の住んでいる環境音を知りたい時、どうすれば良いでしょうか。

現在、音の大きさ(デシベル)を計測するスマホアプリがあります(より精度の高いものを希望する場合は専用の計測器も販売されています)。また、アプリによっては計測した騒音をシェアし、場所ごとの騒音レベルを検索できるものもあります。

また、近畿大学建築学部は日本ミシュランタイヤと協力し、24時間の交通量と車速から推計した「騒音レベル」を地図上にマッピングしたサイトを公開しています。

現在公開されているエリアは東大阪市に限定されますが、こうした研究が増えることで、引っ越し等の参考にもなることでしょう。いずれにせよ、音は私たちの生活や健康に大きな影響を与えているのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?