ウィキペディアの音に、あの超人気ゲームの音ーー「記憶に残る音」の紹介

2023.7/21 TBSラジオ『荻上チキ・Session』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、ウィキペディアの音、そしてあの超人気ゲームの音楽にまつわる話題を紹介します。

◾ウィキペディアの「サウンドロゴ」

以前も紹介しましたが、音を聞くだけで企業や商品が頭に浮かんでくる、そのような音を一般に「サウンドロゴ」と呼びます。

ラジオにおいても、番組の冒頭やCM明けの「サウンド・ステッカー」や「ジングル」と呼ばれる音楽が流れますが、これらもサウンドロゴの一種と考えられます。また2015年に特許法の一部が改正され、サウンドロゴの商標登録が可能になっています。

そんな中、2023年3月に、インターネット百科事典の「ウィキペディア」が、サウンドロゴを発表しています。ウィキペディアを運営する非営利団体「ウィキメディア財団」が、2022年9月からコンテストを開催し、135ヶ国から2094人が作成した3235作品が寄せられました。10作品が最終候補となり、アメリカはバージニア州在住のエンジニアが作成したものが選ばれました。賞金として2500ドルが送られるとのことです。

タイトルは「「Sound of All Human Knowledge(全人類の知識の音)」。今後、ウィキペディアに関わる音として聞く機会も増えるかもしれません。ちなみに、選ばれなかった残りの9つの音声も、HPから聞くことが可能です。

◾『スーパーマリオブラザーズ』のBGM、アメリカの保存すべき録音資料リストに登録される

サウンドロゴも身近な音ですが、私たちの生活には聞き慣れた音で溢れています。歌はもちろんのこと、ゲームの音楽もそのひとつでしょう。

「アメリカ議会図書館」という、アメリカの事実上の国立図書館は、予算や規模の面からみて世界最大規模の図書館です。このアメリカ議会図書館には「全米録音資料登録簿」という、将来にわたって保存すべきアメリカの録音資料リストがあります。リストは2003年から発表されており、近年は毎年25作品がリストアップされています。

登録されている音声の中には、「I have a dream」からはじまる、キング牧師の有名な演説といった、歌以外のものもあります。

そんな中、2023年4月、新たなリストの発表がありました。マドンナの「Like a Virgin」、マライア・キャリーの「All I Want For Christmas Is You(恋人たちのクリスマス)」、ジョン・レノン「イマジン」などとともに、1985年に発表された、任天堂のファミコンゲーム『スーパーマリオブラザーズ』のテーマ曲「地上BGM」がリスト入りしました。ゲーム音楽が選出されるのははじめてのことです。

※冒頭に流れるBGMがリスト入りしたものです。

この楽曲の作曲者である近藤浩治氏は、1984年に任天堂に入社し、すぐにスーパーマリオの音楽を担当しています。その後もマリオシリーズの音楽や、『ゼルダの伝説』シリーズの音楽も担当しています。また、アメリカで大人気の映画『スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の音楽は別の作曲家(ブライアン・タイラー)が担当していますが、近藤氏と常に連絡を取り合っていたとのこと。その影響力は大きなものです。

このスーパーマリオのテーマ曲について、近藤氏はあるインタビューの中で、音楽と効果音に使えるデータ量が極端に少なかったので、当時の音楽やプログラミングにおける創意工夫を行い、革新的でなければならなかったことを述べています。

ゲーム音楽は、ゲームを繰り返しプレイする中で何度も耳にするため、サウンドロゴと共に、ユーザーの記憶に強く残ります。日本のゲームが世界中で人気を博し、ゲーム音楽で誰とでもわかりあえるという意味でも、今回のリスト入りは喜ばしいことでしょう。

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