人工知能があなたを表す音をつくるーー「サウンド・ロゴ」を考える

放送の様子はこちら(下記サイトでは音声配信も行っています)。
「人工知能があなたを表す音をつくる〜『サウンド・ロゴ』を考える」(Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート)
2019.8/16 TBSラジオ『Session-22』OA

 Screenless Media Labは、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は企業と音の取り組みを「サウンド・ロゴ」の観点から紹介したいと思います。

◾サウンド・ロゴとは

 音を聞くだけで企業が頭に浮かぶことがあります。正露丸でおなじみの大幸薬品「ラッパのメロディ」やインテルの「パン・パパパパーン」(この音は1994年に作曲されています)など、誰でもきいたことがあるのではないでしょうか。

 これらは一般に「サウンド・ロゴ」と呼ばれます。ラジオ業界でも、番組の冒頭やCM明けに「サウンド・ステッカー」や「ジングル」と呼ばれる音楽が流れますが、これらもサウンド・ロゴの一種と考えられます。

 日本では2015年に特許法が一部改正され、音声情報も商標として企業に登録されることとなりました。それに伴い、大正製薬の「ファイトー! イッパーツ!」や小林製薬の「ブルーレットおくだけ」といった有名商品を示すサウンド・ロゴに加えて、企業全体のイメージを示す、前述のインテルのサウンド・ロゴも商標登録されています。こうして、音を使った企業のブランディングが改めて注目されているのです。

◾私たちひとりひとりがサウンド・ロゴを持つ可能性

 企業がサウンドロゴを制作するにあたっては、企業イメージや顧客像の把握、うまく顧客の感情を引き出しているかなど、いくつか注意すべき点があるでしょう。またサウンド・ロゴにも、特定の商品に限らず、企業全体のイメージにかかわるサウンド・ロゴもあります。とりわけスマートスピーカーが普及する現在においては広告など、サウンド・ロゴは企業イメージにとって非常に重要な意味を持つようになっています。

 興味深い試みとして、サウンド・ロゴをAIが制作する技術があります。「クリムゾンテクノロジー」という企業は、企業(フコク生命)の従業員の歌声を分析し、そこからサウンドロゴを自動生成する、というサービスを開発しています。この技術の元となっているのは、脳波を測定しながら音楽を聞いた個人の感情を分析し、それに合わせた楽曲を自動作曲する「ブレインメロディ」という人工知能技術です。

 多くの人々の声から企業のサウンド・ロゴを制作するこの技術ですが、将来的には企業だけでなく、個人だけのサウンド・ロゴを制作することも可能なのではないでしょうか。とりわけグローバル化により様々な国の人々と交流が進む中、特定の言語だけでは自分を表現することが困難になっています。そうした中で、他者に自分を示す時、自分だけのサウンド・ロゴがあってもいいのではないでしょうか。自分だけのサウンド・ロゴで自分を紹介する未来は、十分考えられるのです。

 このように、サウンド・ロゴは企業だけでなく、将来的には個人にとっても身近で重要なものになるかもしれません。そうした意味でも、音の研究は今後も注目されていきますが、ラジオはこうした領域で昔から活躍しているメディアです。AIといった最新技術を用いながら、ラジオが活躍する場は、確実に増えていると思われます。

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