声出し応援は選手に効果があるのかーー「声援の影響」研究の紹介

2023.3/24 TBSラジオ『荻上チキ・Session』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、声援が人に与える影響について紹介します。

◾盛り上がるスポーツ観戦と「音」

2023年3月はWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が盛り上がりました。WBCでも声出し応援が解禁となり、細かなルールはありますが、スポーツ観戦やコンサート会場でも、声出しルールが緩和されています。

コロナ禍では、声出し応援が規制される中、スマホアプリに表示された「歓声」「拍手」「激励」等のボタンを押すことで、会場のスピーカーから声援が発生するシステムが利用されたこともありました。このシステム自体は、無観客試合等で利用するため、コロナ以前から開発されたものではありました。

あるいは、こちらも以前紹介したように、スポーツ試合現場における観客の声などをデータ化し、音や振動を再現するシステムの開発も進められています。現状では自宅ではなく、設備を整えた会場(スポーツ会場とは別の会場)限定にはなりますが、音や振動を再現する技術開発も行われています。

◾リアルな声援が与える影響

では、実際の声による応援はアスリートのどのような影響を与えるのでしょうか。例えば、スポーツブルというメディアを運営する「運動通信社」は2018年、高校生のハンドボールの試合においてある実験を行いました。まず、選手たちに活動計測デバイス(「Knows」)を装着してもらい、試合の前半は観客なしの中で試合を行います。その後、選手たちには知らせていなかった数多くの応援団が、試合の後半に現れて声援を送ります。

活動計測デバイスから得られたデータから、声援が送られた後半の試合は、選手の走行距離やステップ数、心拍Zone等といった運動量の値が、前半に比べて約20%アップしていたことがわかりました。

これは、見られたことや応援されたことにより、疲れていてもがんばれたことであると考えられます。

次に、室内ジョギングの声援について研究した2015年の研究(「室内ジョギングにおける遠隔音声による声援効果に関する研究)では、いくつかのことがわかります。

例えば、予備実験として行われた10分間のジョギング中の声援では、距離を目安とした声援が送られると(今、どの程度走っているか等について伝えつつ声援を送ると考えられます)、やる気が持続するといったことがわかりました。また、被験者の多くはラストスパートでの声援で力が出ると述べており、実際に声援のあるとなしでは、声援ありの状態の方が速度が上がる傾向がわかりました。

他にも、同研究では同じ10分間のジョギングを、被験者と距離の近いところでの声援、遠隔カメラを利用したオンライン越しの声援等で比較しました。いずれも声援なしで走る時より声援があると速度が上昇しますが、近くでの声援は速度は出るがプレッシャーとなり、オンラインの場合はリラックスできるなど、距離感に応じて感じ方は異なることがわかります。

声援については他にも様々な研究があり、強すぎる声援が時にプレッシャーになることもあります。とはいえ、概ね声援があること、特にリアルの現場での声援はプレイヤーに大きな影響を与えることは確かです。

声援については今後も、様々な状況に応じた声援研究が続けられるでしょう。人の声はやはり、大きな影響を与えるのです。


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