無観客時代の新しい音体験ーー「リモート応援の音」を考える

放送の様子はこちら(下記サイトでは音声配信も行っています)。
「無観客時代の新しい音体験~「リモート応援の音」を考える」(Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート)
2020.7/03 TBSラジオ『Session-22』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、スポーツのリモート応援における最新技術についてご紹介します

◾リモート応援で届ける声援

プロ野球やサッカーなど、新型コロナウイルスの影響で延期されていた各種のスポーツが再開されています。とはいえ、観客数や応援方法に制限が課されているため、これまでのようなスポーツ観戦を行うことは困難になっています。

中でも、声援を送ることが困難なため、スポーツにおける「音」は大きな課題となっています。そこで、各種スポーツでは様々な形でリモート応援システムが開発されています。

例えばインターネット動画配信サービス「DAZN(ダゾーン)」は2020年6月、サッカーの試合を生配信する中で、アプリ上にある「歓声」「拍手」「激励」などのボタンを押すことで、会場のスピーカーに声援を送る、という試みを行いました。このシステムはヤマハが開発した『Remote Cheerer powered by SoundUD」というもので、新型コロナウイルスに関係なく以前から開発が進められていました。


声そのものは録音されたものでありましたが、実際に選手に与えた影響は大きなものであり、リモート応援をしている観客にとっても、声を届ける機会を得ることができます。

◾音を利用した新しい応援体験

とはいえ、リモート応援ではどうしても実際の臨場感を体験することは困難です。しかし近年では、音を含めた五感を利用したリモート応援の方法が開発されています。

例えばNTTは超高臨場感通信技術「Kirari」を開発しています。これは試合中の選手だけでなく、背景の空間や音響をまるごと転送するもので、映像に奥行きを感じたり、振動を感じることも可能です。さらに臨場感を感じることも可能です。

また以前紹介したように、スポーツの試合会場における観客の声を可視化し、音やそれに伴う振動を再現する装置の開発も進んでいます。これは会場の熱気を別会場で再現するものでしたが、こうした装置を個人化する需要もあるように思われます。

将来的には、次のような装置の開発が求められます。例えば自宅からリモート応援をすることで、それらの声が会場に設置された装置から発せられ、実際の会場が音で震える=振動するとします。選手はその声に励まされる一方、音のフィードバックがリモート応援をしている自宅のユーザーに届けられ、振動が起こる。このように観戦の音が会場と自宅双方にフィードバックされることで、より多くの感動が体験可能になるかもしれません。

無論、技術的なハードルは多くあります。しかし、音による振動を感じられるなど、離れていても一体感を感じるための装置の開発が進んでいます。また、選手だけに与えられる振動などを再現する装置の開発も進んでいることから、将来のスポーツ観戦には、まだまだ多くの可能性があるように思われます。

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