遊覧船の死亡リスクと情報の非対称性

「情報の非対称性」という言葉があります。大雑把にはあるサービスに対する売り手と買い手の持つ情報の差異を意味しており、遊覧船では運営者と利用者の持つ情報の差異になります。情報は死亡リスクも含みます。

知床遊覧船事故では事故が起きてから救命いかだや通信設備の不備、近隣海上保安署の船舶の旧式などが明らかになりました。運営者はこれらの死亡リスクを概ね認識しており、利用者は認識が困難でした。直前にこちらの遊覧船に乗り換えた母子がいたことも報道されており、死亡リスクは隠蔽されていたと推察されます。明らかに情報の非対称性が生じており、運営者は情報優位者、利用者は情報劣位者でした。

事故を受けて様々な対策が報道されていますが、死亡リスクにおける情報の非対称性の解消もひとつだと思います。組合は抑止できなかったので行政の管轄にすべきだと思います。安全基準と確認項目を定め、認定だけでなく確認項目への適合を公開すべきだと思います。他にも情報の非対称性に対する一般的な対策も適用可能だと思います。

冷水だけど救命いかだはない。通信設備は圏外。つまり有事の死亡リスクはかなり高い。これらの情報を開示されても選んだなら、子との大切な思い出を作ろうとしたお母さんや他の利用者の方々もまだ報われたのではないかと思います。あくまで妄想で、押し付けがましいものですが。

追記(2022/5/28)

寒冷地の小型旅客船へ救命いかだの設置を義務付ける方針を国交省が示しました。また、通信設備や非常用位置指示無線標識についても見直しが図られるようです。消費者に選ばせるのではなく、規制で縛る選択肢が選ばれました。

「寒冷地の小型旅客船 「スライダー付き救命いかだ」搭載義務化へ」(2022/5/27、毎日新聞、Yahoo!ニュース)

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