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インクルージョンと教育

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皆さん、こんにちは。S.C.P. Japanの井上です。いつもコラムを読んでいただきありがとうございます。

今回は先日UNESCOにより公表された『グローバルエデュケーションモニタリングレポート(GEM Report)』について書きたいと思います。
このレポートはSDGsの一つのゴールである"教育”について多角的な視点から評価を行うため、2016年より毎年異なるテーマで発行をされています。
そして2020年GEMレポートのテーマは"インクルージョンと教育”でした。今回はこちらのレポートで印象に残った点を引用しながら紹介したいと思います。

※GEMレポート日本語要約版ダウンロードはこちら

1.“インクルージョンは一つのグループに対して一度に達成され得るものではない”

海外でも日本でもインクルーシブ教育というと、障がいのある子ども達に対する特別支援教育と普通教育の関わりとして捉えられることが多いですが、このレポートではそうでないことを述べています。インクルージョンとはすべての子ども達を対象にしており、すべての子ども一人一人が当事者であるということです。

(以下GEMレポート2020日本語要約版P10の図)

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2.プロセスとしてのインクルージョン。そして「平等」と「公平」について。

インクルージョンというと、目指すべき状況やゴールをイメージしかちですが、このレポートの中では以下のように説明をされています。私たちがよく混乱しやすい「平等」と「公平」についてもはっきりと定義されていました。

“インクルーシブ教育は、社会的包摂という目標の達成に貢献するプロセスである。公平な教育を定義するには「平等」と「公平」の区別が必要である。平等とは物事の状態(何が)であり、インプットやアウトプットや成果で確認可能な結果を指す。一方、公平とはプロセス(どのように)であり、平等の担保を目的とした行為である。”

3.インクルーシブ教育における大きな障壁。

インクルーシブ教育には二つの大きな障壁があ ります。

①インクル―ジョンがエクスクルージョンを生み出してしまう場合もあるということ。

②「インクルージョンなんて不可能である」という観念が、インクルージョンを更に遠ざけてしまうということ。

まず①については、十分な準備なしにインクルージョンを進めると、かえってマイノリティへの差別や偏見を強化してしまう可能性があるということです。レポートの中では以下のように述べられています。

もし熟慮を欠いたインクルージョンが行われると、ある状況においては順守への圧力が強まる可能性がある。グループのアイデンティティ、慣習、言語、信念は、価値がないとされたり、危険にさらされたり、根絶されたりして、帰属意識が損なわれることもある。”

私は、多様な子ども達(例えば障がい児童など)と一緒に活動し、インクルーシブ教育を真剣に考えている人ほど、”インクルージョンが生み出すエクスクルージョン”について嫌というほど理解をしていると思います。

そして、

『エクスクルージョンを結局生み出してしまうインクルージョンなんて、ない方が良いのでは?』

『そもそもインクルージョンなんて理想論で不可能なのでは。。』

という迷いが生まれます。そうしたことから、時に、分離政策を選択してしまうこともあります。

しかし、このレポートでは分離政策は決して推奨されるべきものではないということと一緒に、以下のようなことが述べられています。

“インクルーシブ教育は、最良の意志と責務をもってしても手に負えないことが判明するかもしれない。それゆえに、インクルーシブ教育の野心を制限することを主張する人もいるが、前進するための唯一の方法は、障壁があることを認め、その障壁を解体することである。”
”教育におけるインクルージョンの達成に対する主な障壁は、それが可能であり、望ましいという信念の欠如です。”

日々の迷いや葛藤に打勝たなければインクルージョンは決して達成されないのです。

4."All means all:学習者の多様性は祝福されるべき強みです。"

“性別、年齢、場所、貧困、障がい、民族性、先住民性、言語、宗教、移民や避難民という立場、性的指向または性自認の表現、投獄経験、信念、態度は、教育の中で誰に対しても差別の根拠とすべきではありません。”

教育現場では、多様性が「強み」とされるべきであるのにも関わらず、多様性が差別や不平等に繋がってしまっていることが、今回様々なデータによって示されました。更に、それらの差別と不平等が、特に新型コロナウイルスにより混乱をした社会情勢の中では、顕著に表れたことが確認をされています。

多様性は素晴らしいと、表面上は言われながらも全く逆の現象が生まれている理由は、教育的にも社会的にも多様性が扱いづらいものだとされるからではないでしょうか。人々が多様であればあるほど衝突や面倒を生むことがあるし、共同で行う活動(コロナで言えばこれから始まる「新しい日常に向けた再開活動」)の効率性を下げてしまうと考えられがちです。

しかし、
多様なことが当たり前に素晴らしいことであるという教育環境で、もし育っていたら、そもそも私たちは多様性によって生まれる衝突や面倒を厄介に感じたり、それらのことでつまずいたりしたでしょうか?

教育が変わることで社会自体も多様性を強みにすることができると私は信じています。

5."仲間から学ぶ:インクルージョンへの移行は簡単ではない。"

日本においても、これまで本当にたくさんの人たちがそれぞれの立場でインクルージョンというテーマの下葛藤とチャレンジを繰り返してきたことと思います。そしてどの取り組みも間違いではないと私は思います。なぜならインクルージョンはプロセスであり、一つのゴールや正解を指すものではないからです。多様な子ども達の数だけ、多様な形のインクルージョンがあっていいのです。ただこのレポートでは最後に「仲間から学ぶ」という当たり前に大切なことを示してくれています。「多様なインクルージョンの考え方や取り組み、それらを推進する人々がそれらの経験をしっかり共有することで互いに学べることがあるよ」ということです。

大切なのは協力し合う事。

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