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【エッセイ】モロッコで交わした約束が忘れられない

テレビリサーチャーの通常業務の一つとして、行方調査ということもやっています。「生き別れの家族に会いたい」といったものや、タレントの「音信不通になった同級生を探してほしい」といった探偵業のようなものです。

そのような会社に勤めているにも関わらず、10年以上行方調査をためらっているものがあり、ずっともモヤモヤが残っています。

それは2009年末にモロッコに旅行に行ったときのことです。

無料ツアーをしてくれた男。見返りに提示してきた条件

当時、私はスペインの南端にあるタリファ(Tarifa)という港町から、国際船に乗ってアフリカ大陸モロッコに入り、バスでフェズ(fez)という迷宮都市に向かいました。

都市が迷路になっているので攻められずらいという場所で、狭い路地が入り組む散歩が楽しい町でした。

こんな感じの路地が入り組む町です

そんな街で、一人のモロッコ人に出会いました。
カマルという名前でした。
「日本人か?」「広島、長崎、どっちだ?」と言われ、東京だと答えると、はいはい東京ねという感じで、ダンディ坂野さんの「ゲッツ」をされました。

めちゃくちゃ怪しいなと思いながら、「日本人にあえてうれしいから、俺にガイドさせてくれ。無料でいいから。旅行者に優しくするのがイスラムの教えなんだ」みたいなことを言われました。
目がキラキラしていたので信頼できる気がしたのと、ある程度のリスク管理はできるだろうと思い一緒に行動することに。

そして、地球の歩き方などに記載してある観光スポットを案内してくれ、レストランで一緒に食事し、ミントティーを一緒に飲みました。

自宅で撮影。ビルの屋上に布団を敷いて3世代で生活していました

そんなこんなで、夜になってくると「俺んちにこないか?」と言われたのでついていくことに。
カマルさんは日干し煉瓦で出来たビルの屋上に3世代で雑魚寝しながら生活していました。もちろん屋根とはなくて、外で生活している感じでした。
こんな場所で生活してるんだと、衝撃を受けたのを覚えています。

「俺、アート書いてるから見せてやるよ」
そんなことを言いながら、ミントティを出してくれましたが、睡眠薬を入れられる可能性もあったので、手は付けられず。
スケッチブックに書き溜めているというアートは「ちょっと病んでるな」という印象のものでした。

赤い染料でハートとかを描いています(右ページ、左下)

ここで、彼がついに本題を話し出します。
「実は俺には日本人のガールフレンドがいるんだ。彼女が旅行で来た時に出会って、一緒に砂漠ツアーとかも行ったんだ。結婚しようという話もして、日本に帰国してからも、ずっと連絡取りあってたんだけど、半年前からメールを返してくれなくなったんだ」

そして、その日本人の連絡先と名前を渡され
「日本に帰ったら、この人に電話してカマルが連絡を待ってるって伝えてほしい。俺は彼女のことを毎日想ってるんだ。絶対に彼女と話してくれ。約束だからな」
彼女に対する想いはすごい伝わりました。本気なんだなと。

私は日本に戻りましたが、
結局その番号に電話することはありませんでした。
その先に、いい結果がないだろうと感じていたからです。
本気で思いを寄せる人に、辛い現実を伝えるのは嫌でした。

今、カマルさんは何をしているのでしょう。
幸せになっているといいなと思いながら、まだ引きずってたりもしないよな、とモヤモヤがずっと残っています。

当時のメモ。KAMAL(カマル)さんと、
090から始まる携帯番号・日本人の名前が書かれていました
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