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親は高校生のトビタテ奨学金・応募書類をどのようにサポートできるのか

文部科学省が民間企業とタッグを組んで日本の若者の海外留学を給付型の奨学金で支援する「トビタテ!」。対象は高校生と大学生。期間は多くの場合2週間〜数ヶ月、長い場合は1年近くになることもある。特に高校生は、学校の成績などよりも夢とかやりたいことの「熱量」が選考の大きな要素になるという、素晴らしい制度だ。

ありがたいことに、私の子どもは以前トビタテに応募し、採用してもらうことができた。奨学金ではカバーしきれない部分を相当家計から持ち出すことにはなったが、支援がなければ限られた期間とはいえ海外に行かせることなどできなかった。特別な才能や実績がある訳ではなく、至って普通の子どもであるが、こうした機会をいただき深く感謝している。

そのトビタテが、ちょうど今、新しい期(高校生は2024年度の第9期)を募集している。うちも応募の準備は本当に大変だった。高校生はまだ、人に見せる資料を書き上げたりプレゼンしたりという経験が少ない。それを仕上げていくのに、ほとんどの場合は大人の手助けが必須だろう。そんなことを思い出しながら、親の立場から見た応募までの過程を記してみた。

まとめているうちに書きたいことが増えてきて、正月休みの結構な時間を使うことになった。noteに有料記事というのがあるのを知り、今回は試しにその設定にしてみる。このテーマにものすごく関心がある人は相当限られるだろうが、そうした人には多少なりとも参考になる内容が含まれていると思う。それ以外の方は、あえて有料部分を読む必要はないだろう。

また、noteに高校生でアカウントを作っている人がどれほどいるのか知らないが、高校生に有料課金するのは本意でない。そのため、高校生に向けた部分はこの後すぐに無料箇所で書き、有料パートは親(大人)向けの内容とする。


高校生に助言するとしたら

トビタテへの応募を考えている高校生が身近にいたとしたら、私からは三つのことを伝える。

まず、応募資料の内容確認と添削をお願いできる、信頼できる大人をできる限り早く探すこと。

トビタテの応募資料は項目も書く分量も多い。上にも記したが、多くの高校生にとっては自分一人で良い応募資料を仕上げるのはなかなか難しいと私は思う。だから、親身になって原稿を確認し、それをブラッシュアップするために厳しくとも正直な感想や要改善箇所を伝えてくれる大人を見つけてほしい。

ここでいう「良い応募資料を仕上げる」とは、ただ自分で応募資料を完成させることではない。それはあくまで「初稿」だ。それを元に、魅力的な内容になっているか、わかりやすく書けているかを他の人の目線で確認してもらうことが大切だ。それをするかどうかで、完成度が大きく変わる。「初稿」を仕上げた時点で全体の行程の半分、というぐらいの意識を持つことをお勧めする。

信頼できる大人を探す上では、自分の両親(あるいは、大学に行っている兄や姉も候補になるかもしれない)がどこまでサポートしてくれるか、学校の先生(担任、部活、国際課のようなところ)はどうかという点をまず確認するとよいだろう。毎年トビタテ生を複数送り出しているような学校なら、独自の指導法的なものがあったりするのかもしれない。

次に、上とも重なるが「初稿を早めに仕上げる」こと。いくら親身に見てくれる人がいても、初稿を渡すのが締め切り間近では直す時間がない。内容を見てフィードバックをもらい、それを元に原稿を更新してまた見てもらうということを、できれば2〜3往復するだけの時間的余裕を持つのが理想だろう。フルタイムで働いている人に見てもらう場合は、仕事の忙しさなどによってすぐに返事が来ないこともある。仕事が休みの週末にしか時間が取れないという人もいるだろう。そのあたりの事情も考えて初稿を仕上げる時期を早めに設定することをお勧めする。

最後に、自分の家の所得がトビタテの家計基準を超えそうかどうかを事前に確認しておくこと。家計基準について詳しくは、募集要項に出ている。家計基準を超えていても応募は可能だが、「支援予定人数全体の1割程度を上限に採用する」と記載されている。そのため、家計基準を超えているかどうかで選考のハードルの高さが大きく変わることになる。

普段の暮らしでは、親が年間にどれほどの収入を得ているのかは知らないことも多いだろう。私も、自分が高校生の時はそうだった。日常的にはそれで問題ない場合がほとんどだろうが、トビタテに応募する上では知っておいた方が良い。正確な額でなくてもいいので、トビタテの家計基準を超えているのかどうかということを。また、トビタテの応募にあたっては親の収入を証明する書類を学校に提出しないといけない。親が勤務先や自治体から発行してもらうことになるので、これも締切ギリギリに伝えたりすると間に合わない可能性がある。

ただ、この3点目については「もし自分の家の収入がトビタテの基準を超えていると知ってしまった場合はやる気をなくしてしまう」と思うようであれば、あえてそれを自分は知らないままにして、とにかく全力で応募書類を仕上げるという方法もあるのかもしれない。

トビタテ応募の主役はあくまで応募する本人だ。でも、助言をもらったり必要な書類を取り寄せたりと、親や学校、その他周りの大人に行ってもらわなければならないことも出てくる。そうした人たちをうまく巻き込み、自分の協力者になってもらうことが、選考通過の可能性を上げることでもあると思う。

ここまでが、トビタテへの応募を考える高校生向けに私から伝えたいことである。

我が家の場合

と、偉そうなことを書いてきたが、私の家ではそんな風にスムーズに進むことはなかった。「早く初稿を仕上げるように」と繰り返し伝えていたのに一向に進まず、初稿を書いたら見せるように言われていたという「学校の先生による応募書類のアドバイス」も、我が家の場合はしてもらえるのが「原稿の書式を整える」だけだとわかってしまった。

そこで、「限られた時間だが、こうなったら親である自分が徹底的に子どもと向き合って原稿を見ていくしかない」と腹を決めた。もう締切まで2週間もない時点だった。

そこから残りの空き時間をほぼ全てトビタテの準備支援に費やした。といっても、私が原稿を書いたり事細かに内容を指示した訳ではない。あくまで、書くのは本人だ。私は、子どもと時間をかけて話しながら、方向性を決めていったり表現がクリアになるようにする手助けをした。

それを参考にしながら、実際の原稿は全て子供が書いた。ようやく完成した原稿は、せっかく初稿時点で書式を整えてくれた先生には申し訳ないが、それとは全く違うものになった。でも、そこで手を掛けたおかげで格段にしっかりしたものに仕上がったのは確かである。

なお私見を書くならば、高校生が書いた初稿を見て内容には一言も触れず「てにをは」や書式に手を入れるだけのことを、私の基準では指導とも助言とも呼ばない。「内容も構成もまだまだ磨いていくべき原石の段階で書式だけ整えて、どうすんの?」と正直驚いた。多分、トビタテに向けた指導経験の蓄積が学校・先生ともにほとんどなかったんだろう。それも、親として自分が何とかしなくてはと思った一因である。

では、ここから、私が親(大人)として応募書類のブラッシュアップに関して手助けしたことを書いていく。書いているのは何かの「解答」ではない。私がどのように子どもとやり取りしていったかという「過程」である。具体的な留学テーマとか行き先、実際応募資料に書いた内容などは記していない。

【追記】
この記事を、note編集部が「注目記事」に選んでくれた。ありがたい。

【追記2】
この記事はトビタテの応募書類についてのものだが、トビタテは書類を通過すると二次選考として面接が行われる。子どもの面接準備をどのように支援したのかを別の記事にまとめたので、興味のある方はぜひそちらもご覧いただきたい。


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