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BEST OF ACIDJAZZ

大好きなDJジャイルスピーターソンが、70年代イギリスで起こったジャズファンクムーブメントをディープに掘り下げ、新しい世代の人たち、新しい国々に紹介してくれたのは最高の贈り物でした。88年辺りからアシッドジャズレーベルを立ち上げ、世界中の音楽ファンをレアグルーブで熱狂させた訳ですが、現在の日本では残念ながら彼、彼らの残した偉大な作品やフォロワー達の再構築した音楽を評価してくれ続けている人が少ないのが悲しい。当時の日本は音楽=アメリカという流れが強く、これはレコード会社の流通の関係だけなのですが広い世界の中で一部の国の音楽だけを聴いていたという悲しい現実があります。クラブムーブメントの受け止め方もバブル期の影響でパーティー音楽というか、ちょっと違う方向で浮かれた感じの音楽が紹介されていました。しかし、本当のクラブムーブメントは、もっとディープにミクスチャーやレアグルーブの発掘、紹介、再構築が行われていたのです。ちなみにアシッドジャズという言葉は当時猛威をふるっていたアシッドハウスをもじった冗談として仲間内で使われていた言葉です。

今回は個人的アシッドジャズの名盤を紹介させていただこうと思い記事を書いています。

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acidjazzを聴くという方には、このコンピアルバムがオススメです。

1曲目からGoldbugがカバーしたLed Zeppelinの「Whole Lotta Love」が収録されています。zepの名曲を最高にクールにACIDJAZZさせていますのでジャズって言葉だけでオッさんの聴く小難しい音楽なんでしょ?と思っていた方もビックリしてノリノリで聴いていただけると思います。こちらは全世界で大ヒットしたので聴いたことがある、という人もいるのでは?

2曲目はMother Earthの「Almost Grown」モッズムーブメントの香りがするラウドなインストです。オルガンとオーバードライブしたギターの相性が最高にクールです。日本ではなかなか発売されないジャンルの演奏ですが、今こそ再評価してほしいです。

3曲目はA Man Called Adamの「A.P.B.」都会的なクールさが際立つパーカッションのグルーブがお洒落過ぎです。この雰囲気は日本のUnited Future Organization,U.F.O.にも影響を与えたんじゃ無いかな?なんて思っています。

4曲目はBlacknuss Allstars featuring Lisa Nilsson & Desmond Fosterの「Rising To The Top」。こちらは抑えた演奏が逆に歌詞の世界観や二人のボーカルの情緒溢れる巧みさをビシビシと心の奥に送り込んできます。僕が最高にオススメする曲です。

5曲目はThe Subterraneansの「Tauras Woman」どろーんとした雰囲気で進行する不思議な浮遊感のある曲なのですが、意欲的に入れたラップやコーラスが主役であるオルガンの音を一層おしゃれに盛り立てていて面白いです。

6曲目はR&Bソウルチョイスとして最高なRaw Stylusの「Use Me-Main Mix-」レコーディングも最高です。ボーカルのラウドな雰囲気も、ギターのどこか気だるさを感じさせる音もドラムのスネアの音もカリッとしたピアノの音もカッコいいんです。

7曲目はHumble Soulsの「Quiet Dawn」荒っぽくミックスしたサウンドにさらにレコードのスクラッチノイズなどもトッピング。渋いラップと叙情的なループがお洒落すぎて夜のドライブにピッタリです。というか、これを聴くと周囲が夜になります。

8曲目はMister eXeの「eXe Markes The Spot-D'eXe Mix-」印象的なイントロで始まるこの曲は巧みなミックスアレンジで、どんどん変化していく実験的な香りがする名曲です。この感じは日本の音楽シーンでは聴いたことが無いです。単純なパターンを繰り返す現代音楽シーンへのアンチテーゼとして今現在聴いても恐ろしく凄い曲だと思います。人間だから考えられる巧みな挑戦の曲です。AIミックスなんかでは絶対に出来ないでしょうね。

9曲目はThe Jazz Renegadesの「Manteka」ジャズはやっぱり管楽器でしょ〜という硬派な方も満足する名曲です。現代的なアレンジとレジェンドな要素が独特に絡み合った素敵な都会派サウンドが心地良いです。

10曲目はAfrican Headchargeの「World Peace」アシッドジャズの懐の広さを感じさせるのはジャズは自由だ!と語っていたマイルスの言葉を実践している点です。大胆にレゲエを取り込んだアフリカンヘッドチャージのメッセージ性の高い名曲です。後半のギミックも決まっていてお洒落。

11曲目はVibraphonicの「Can't Get Enough」目の前に映像が広がってくるようなドラマチックな演奏とサックスの音がクールです。コーラスの言葉がグッと来ちゃうんですよね。そして美味しい所を持っていくビブラフォン。こういったメンツでの演奏とか日本には皆無なので新鮮に聴いていただける名曲です。

12曲目はムーディーな前曲からいきなりシーンチェンジでモッズの香りが素敵なThe Cliqueの「Wormin」オルガンジャズはやっぱりクールです!日本だとオルガンってダサい楽器のイメージがありますが全然クールな楽器なのです。レアグルーブ感を振りまいて2分ちょっとで終わるので、え、もっと聴きたい!ってなっちゃう罪作りな曲です。

13曲目はQuiet Boysの「Let The Good Times Roll」オールドスクールな空気感がとにかく可愛いのです。今、ストリートでこの曲を使って踊っている人がいたら相当お洒落だと思います。

14曲目ラストを飾るのはSnowboyの「Lucky Fellow」レアグルーブの良さを最高に再構築している名曲です。日本のR&Bやソウルのカバーって原曲の良さを意識しすぎているのか、それとも才能の問題なのかわかりませんがイマイチな物が多いのですがsnowboyのLucky Fellowの仕上がりは最高です。snowboyのLucky Fellowに昇華されているのです。何て言うんでしょう?自分が惚れた曲を再構築する際に縛られすぎちゃう傾向が日本人のカバーにはあるのでしょうね。この曲がラストって素敵なチョイスです。

90年代ロンドンで盛んだったレアグルーブの探索と再構築。今の日本音楽シーンに必要なのは、こういった考え方と行動なんでしょうね。アイドルとかKポップって時代が変わっても続く変身ヒーローや変身魔女っ子みたいで退屈なんですよね。正当な音楽は語り継ぐ事と変革の歴史なのだと思います。

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