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デファクトスタンダード

80年代にアイドルブームなるモノがありましたが、実はアレ、ご存知の通りレコード会社や芸能事務所がお金を出し合い、テレビ番組を作ったりマスコミを総動員して作ったブームだったりします。情報の少ない時代には一方的に価値観を押し付ける戦略が成功しちゃったりするんですよね。

2000年以降、音楽産業は緩やかに衰退し始め、現在の音楽業界は風前の灯火といった気配です。なのでレコード会社は、当時大儲けした世界観のリメイクとして10年以上前からでしょうか、アイドルでの商売を活性化しています。僕自身はアイドルに興味が無いので冷ややかに見ていますが、あいかわらずな空気が正直、滑稽に見えています。

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ある意味、デファクトスタンダードとでも言うべきでしょうか?企業側がスタンダードを押し付けてくるのは、もう終わりの時代なんだと思うのですが、未だにアイドルというジャンルが強いのは、どの時代にも、可愛いとか、カッコいいが大好きな人口が存在していて、需要として存在し続けるという事なのでしょうね。

僕にとって当時救いだったのは、アンチテーゼとしてアイドル以外のミュージシャンが多く存在していて、そのミュージシャンを熱心に紹介してくれている人たちが、少数ですが存在してくれた事でした。現在のシーンでは、そういった紹介をしてくれる人は少ない様子で、どちらかというとapplemusicやyoutubeなんかの、ある意味、aiなんでしょうかね?プログラムが無言でオススメをしてくれる位です。

プログラム自体は、僕の聴いたジャンルなどを分析して、まぁまぁイイ感じの曲やアーティストを紹介してくれるのですが、なんて言うか説得力が無いのも事実です。きっと統計的な分析では当たらずも大きく外れない、という曲の紹介をしてくれるのですが、やはり人間の体温を感じません。

youtubeやapplemusicなどのネット系会社の社員、きっと音楽という物をデータとして捉える人たちの考え方は、音楽ファンにとっては、データ欠落が多いのかも知れません。音楽が好きな人は、音楽を掘り下げて行きます。例えば気に入ったアーティストのサポートミュージシャンやレコーディングエンジニア、どこのスタジオの録音か?コーラスは誰?作詞家とか作曲家、編曲は誰?マスタリングエンジニアは誰?誰のフォロワーとして音楽しているんだろ?なんて感じで、色々調べては作品たちを買い込んで聴いたりするものです。そんな普通の人たちが気にしない情報が、音楽ファンにとって重要なデータだったりします。

ダウンロードがメインとなり、裏方と呼ばれる人たちの名前は、全く出てこない現在の音楽。在庫を持ちたく無い。輸送コストを下げたい。人件費を下げたい。商機を逃したく無いのでスマホ上で商売したい。ブックレットとか予算に合わない!などの様々な合理主義が深く浸透しすぎて音楽というビジネスは、今、刹那商品になりすぎた気がします。音楽を愛している人たちが規格を作るべきだったのに、音楽を消費するだけの人たちが規格を作ってしまったのだから、音楽に未来なんて、ある訳が無いのです。

僕は気に入ったアーティストのCDやレコードのブックレットを見るのが好きだったのに、、、今やスマホ画面の中、小さなジャケ画像だけだなんて悲しすぎます!エンジニアやスペシャルサンクス、作品に携わった人たちの名前を見るのが好きだったのに残念すぎです。データとしては名前なんて、極めて小さい数キロバイトにも満たないデータですが、そこに人の何かが見えていたのです。それが切り捨てられてしまったなんて、ダウンロード販売が悪いというよりもフォーマット作りに問題があったと感じます。

大きな矛盾と欲望の中、音楽産業は進んで来ました。録音という技術がポピュラーになり誰もが録音出来て。レンタル屋産業が生まれたり、そのおかげでメーカーは甘い汁を飲み(一括納品とか発生しますからね)、オーディオメーカーは大きくなりました(大好きなアーティストの音を素敵な音で聞きたいですから高級コンポやカーステレオが売れました)。ラジオやカセットテープ、MD。誰もが私的録音という権利で、音楽を安く手に入れ音楽を聴いていた時代もありました(録音メディア産業は儲かりましたね)。そして皮肉にも、それが誰かの音楽を普及させ日本を活性化した事も事実なのです。

違法音楽ファイルが無料で音楽を聞ける人々を増やし、レコード会社の経営を圧迫し、デジタルプレーヤーを発売するメーカーを一瞬潤わせ、その後でアップルが音楽を鍵にして規格を牛耳って行ったように。2000年以降は規格の戦いに誰もが気づかず過ごして、気づけば誰のための規格だったんだろう?という物に包囲されている感じです。

現在進行中の、デファクトスタンダードは、レコード会社のアイドル路線とかアニメ路線の事ではありません。様々な次世代規格。一体、新しい規格達は音楽業界に何を産み出せるのか?そして、音楽ファンは何を失って行くのだろうか?ちょっと心配です。

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