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これからの写真展の在り方

カメラという斜陽産業は、これからどんどん衰退していきます。様々な理由はありますが、元々カメラ文化はマイナーなモノで、何かの間違いで10年ほど前にブームになったに過ぎません。スマホが高性能化しネットやSNSが進化し、人々の思考や感受性が変化変容して行く中で、思考停止したままのカメラメーカー達が生き残る訳は無いのです。

写真文化を支えてきた人たちの高齢化、これからの写真文化を担う人たちの軽薄化、そして写真という哲学への踏み込みの足りなさが今後の写真文化を更に混沌化していく事でしょう。

ネットやSNSで写真を発表できる現代において、写真家が写真展を開催する。写真愛好家がコンテストに応募する、それらの意味は、どんどん薄れてきています。そんな中で開催されている写真展の多くは昭和体質のまま。というよりも劣化コピーでツマラナイものだらけです。

写真家本人の自己満足を見せられる事が多い写真展ですが、ここを一歩進化させる事が今後は大事な事なのだと思います。

「人に写真を見てもらいたい」

という自己満足を一点に優先するだけではなく、来場者の満足も考えた写真展を考えて欲しいものです。

現実の世界での質感、存在感

掌のスマホで写真を見る事が日常化した現代ですから、写真展という現実世界で見せるなら圧倒的なサイズと量が大事になります。写真サイズの小さな写真展、写真の数が少ない写真展は退屈なだけです。

これから写真展の開催を考えている人は、とにかく展示する写真のサイズを大きくする事、そして圧倒的な枚数を展示する事、写真を見せる順番に起承転結を入れた順路を作る事。単純な羅列ではないストーリー性のある展示にする事を大前提にして欲しいのです。

写真サイズが大きくなるとセンサーサイズの小さいカメラは画質が厳しい。なんて言う人がいますが、猫写真で有名な岩合さんの写真はマイクロフォーサーズで撮影されています。カメラ性能ばかりを語る人には理解できないようですが、岩合さんの写真展は大人気なのです。

写真を見る側は、どのメーカーのカメラで撮ったか、センサーサイズが云々なんて全然関係無いのです。写真を見ているのです。心に響く写真こそ写真展をする意味があると思うのです。

アマチュア写真家の多くがフルサイズ信仰、メーカー信仰の信者ですが、そんな写真、見る側の人には興味が無いことです。このカメラ凄いだろ!なカメラ好き同士のコミュニティが身内ウケで開催している写真展、そんなの普通の人にとってはツマラナイだけのものなのです。

写真展会場に小さな市販のアルバムが置いてあるのを見かけたりしますが貧相すぎるのでダメだと思います。第一、あなたにとっての写真の価値は、そんな物なのですね。っていう気持ちにさせられます。市販のアルバムやクリアファイル?みたいな物に入れるのは絶対にヤメて、せめて自分で手作りしたアルバムにしましょう。

写真を伝える努力

写真展をする人の写真って意味がよくわからない写真が多い
このセンスがわからないのかい?って言われると悔しい気もするけど
「全くわかりません」
「なんか時間が無駄でした」って気持ちになります。

「この写真、何を伝えたいんですか?」って聞くと、大体、答えは無かったりします。「何を感じましたか?」なんて逆質問を返す人もいるのかも知れませんが、ナルシストとの禅問答で得るものは無いです。大抵は誰かの借り物の言葉をカリスマ気取りで語られて終わりです。

美術館なんかに行くと音声ガイダンスのレンタルが用意されていたりします。作品の鑑賞ポイントやバックボーンなどの説明を聞けると、作品への理解度が上がります。なので、これから写真展を開催するって言う人は音声ガイダンスを用意して自分の作品の鑑賞ポイントやバックボーンの説明がある方が良いと思います。

裸の王様は服を着ていないのに、民衆は「王様は素敵な服を着ている!」と言ったように身内の写真展の開催は「裸の王様ショー」になりがちです。好意的な身内に囲まれる事は幸せであり不幸でもあります。「いい写真展だっったよ」なんて言葉は社交辞令でしか無いのです。「王様は裸だ!」って言ってくれる人の方が大事な事もあるのです。2:8:2の法則なんてのもありますが現実には0.5:9:0.5という感じでしょうか?5%は好意的で90%は無関心、5%は敵対的なのです。敵対的な人を納得させる説得力や完成度を目指し、結果として無関心な90%の人の心を何割動かす事が出来るか?という考え方の方が健全な気がします。

知人の一人で野生動物の写真展を開催したり、野生動物の写真を販売している写真家がいたのですが、被写体である野生動物の保護には無関心でした。人間と自然、野生との距離が縮まり比較的容易に誰でも野生動物の写真が撮れる時代なのですが、本来は、それこそが重大な問題です。写真展や写真の販売収益は野生動物の保護活動や森林保護、現地動物ガイドなどに向かう事は無く、新しいカメラやレンズ、贅沢な飲食代へと消えていきました。そして、この素敵な写真は、このメーカーのカメラとレンズで撮りました!な宣伝。なんだか無意味な写真展です。写真を撮るモラルや現代社会の問題を説明する事は無く、カメラの宣伝に費やすトークショー。ちっぽけな写真文化の成れの果ては出来損ないのテレビショッピングショーのようでした。

写真は社会へのメッセージでもあるのですが、ただのお金儲けになっている写真家の多い事に寂しさを感じます。北海道なんかだとシマエナガやモモンガ、キタキツネなどがアイドル視されていますが、その撮影の影響で育児放棄されたヒナの死亡、人馴れした野生動物の自動車事故、捕食動物が餌を人からもらう習性の影響による食物連鎖崩壊、靴や衣服から持ち込まれた外来植物の異常発生など問題だらけです。写真展を得意げに開催している写真家の中には、そんな問題行動を大自然にバラまいている人も多いのです。写真展の写真だけ見ているとわかりませんよね。

写真展をして写真を見てもらうなら、そこにはメッセージが無いとダメだと思います。メッセージが無い写真展なんて、価値があるんでしょうか?ほんの少しだけでもジャーナリズムがある写真展が好きだなぁ。可愛い女の子の写真の羅列、水着やヌード、可愛い動物、そんな写真展、本当に無意味で僕には理解が出来ない。最近は岩合さんを真似して猫を撮っているアマチュアも多いですが、岩合さんの伝えたい世界観を理解していない人が多くて悲しくなります。

トークイベント、交流会

現実世界で写真展をするなら、現実である事を最大に活用すべきです。写真展を開催するならキチンと在廊し写真について語るべきです。それが必要無いのならSNSやネットで良いと思うのです。この時代にわざわざ足を運んで来てくれた人への最低限のお礼として生の声で語るべきでしょう。考えてください、著名な写真家ですら写真展開催の時は地方都市まで来てトークイベントを開催しています。有名でもなんでも無い写真家が写真展を開催して、そんなマイナーなイベントに、わざわざ足を運んでくれた人に挨拶もしていないなんて失礼な話です。

え?写真を語ろうにも有名写真家の構図と色彩を真似した写真だから恥ずかしくて説明出来ない?

何かを伝えるつもりで撮っている訳じゃ無いんで、、

知り合いだけで楽しんでるだけなんで、、

大勢の人の前で語るのはカッコいいけど、誰も見てくれない写真展だから在廊するのが恥ずかしい、、

なるほど、そもそも写真展とかしない方が良いと思います。

人間の感性に訴えるクロスオーバー展示

五感を刺激する写真展って素敵だと思います。視覚だけではなくてそれ以外。写真を魅力的に魅せる演出も写真展には大事な要素だと思います。香りや照明、音、音楽、文章、フォント、額縁のデザイン、写真の展示方法なども進歩させて欲しいものです。

僕ならネイチャーの写真を見てもらっている時の為に、その撮影場所、海の潮騒や波の音、鳥の鳴き声、木々の揺れる音、川のせせらぎ、そんな音を収録しておいて、5番の写真を見ている時はコレを聞いてください。って環境音をバックトラックにして、役者志望の人にナレーションをしてもらった音声をスマホで聞ける用意をすると思う。

ポートレートの時はモデルになってもらった人の声を入れたり、その人の香水の香りがするようにするかもしれないなぁ。小さな小瓶に香りを入れておいて、その写真を見る時は、「この香りを嗅いでください」なんて置いておきたい。衣装ブランドや使用メイクの説明はnoteに書いて、会場の中でスマホで見れるようにすると思う。使用レンズや設定値とか、どおでも良くて、メイクや服の紹介とかした方が見ている人は楽しいと思う。

一人の世界に陥りがちなのがアート志向の強い方だと思いますが、今後は異ジャンルの作家さん数人で作り上げるアートイベントが盛り上がるのかも知れません。キャンドル作家、陶芸家、服飾デザイナー、アクセサリー作家、映像作家、役者、モデル、etc、、違うジャンルの作家が集まって生み出すイベントとして写真展の存在意義があるのかも知れません。

展示を素敵にするのは良いことだけど、有名アートのパクリだけは勘弁して欲しいのです。塩田千春さんの糸の展示を真似た人が多すぎて、見ている方が恥ずかしくなります。他のアーティストへの尊敬とか敬意すら無い写真家なんて、消えてしまえば良いのに。なんて思って見ています。

noteの活用

機械レンタルの費用が無い。なんて心配する事はありません。ネットのストリーミングラジオなどに保管して、来場者はスマホで聞けば良いのです。noteにも音声を収録する機能がありますからnoteを利用する事をオススメします。写真展をnoteのマガジン機能にまとめ、写真をアップしたり音声をアップするだけで一歩進化した写真展になると思います。

会場スペースの関係で展示出来ない写真たちもnoteを併用する事によって見てもらえます。スマホで見る写真と現実の写真、説明の音声、なんならyoutubeなども併用してモデルとのトークなどもnoteに収録する事が可能です。写真集やグッズを販売しているなら、それもリンクしておけば良いのです。

これからの写真展は様々な現代技術の恩恵をフルに活用して、見る人の満足度を満たすこと、そして写真家と見る人が理解しあえる写真展、世界を変える気持ちで想いをぶつけた写真展、そんな写真展を開催すべきだと思います。

僕は、そんな写真展が見たいのです。

「売れないカメラマンにコーヒーを一杯飲ませてやるよ」っていう心優しい方、サポートおまちしております。コーヒーは我慢して交通費や制作費に充てさせていただきます。