ヨーロッパ文化教養講座(「マエストロ」「ミュジコフィリア」原作」

2022/11/03
さそうあきら の「マエストロ」と「ミュジコフィリア」の原作漫画を読んで。

「マエストロ」は、原作の筋書きや内容をほぼ踏襲し、全体の雰囲気をそのまま映画に移したことがわかる。漫画の練習場の舞台は大森、蒲田の商店街も出てきて、下町感が良く出ている。
漫画だけ読んでも、映画だけ観ても、両方みても同じ物語としての印象と感動が残る。

一方「ミュジコフィリア」は、原作と映画は別物である。
親違いの兄にコンプレックスを抱えていて、入りたくもなかった、兄の専門分野である現代音楽の世界に足を突っ込んでしまった主人公。
兄は、新進気鋭の現代音楽の作曲家として成功を収めようとするが、同じ分野の大作曲家である父を超えられずに葛藤する。
父を超えられない子、兄を超えられない弟がテーマであることは変わらない。

ただ、映画は、時間の制限もあったのか、父を既に故人にして、父から子に渡された鍵を使い、この「超えられない」状態をクライマックスでは一挙に解決する道へと持ってきた。

漫画は、父は健在であるが登場せず、兄の恋人(バイオリン奏者)を妊娠させ、弟と恋人(歌手)も同棲を始めたが恋人がスカウトされて上京し売れっ子になってしまうという流れを後半に持ってきて、こちらのエピソードが中心となってエンディングを迎える。

「ミュジコフィリア」は、原作が「マエストロ」より長く、エピソードを多いため、2時間足らずの映像にすべての要素を取り入れるのは不可能であったことはわかる。ただ、映画はアダルトな描写もほとんどなく、青春音楽ドラマという日本のクラシック音楽映画の枠は飛び出していない。
文化庁の後援などを得て青少年育成の一環としているのなら、小生の年齢には物足りないものになるのも、致し方ないのだろう。

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