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ヨーロッパ文化教養講座(2022年12月16日 庄司紗矢香+ジャンルカ・カシオーリ)

2022/12/20

ヴァイオリン:庄司紗矢香
フォルテピアノ:ジャンルカ・カシオーリ
日時:2022年12月16日 開場:18:20 開演:19:00
会場:サントリーホール

プログラム:
1.モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第28番 ホ短調 K.304 (300c)
2.モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第35番 ト長調 K.379 (373a)
15分休憩
3.C.P.E.バッハ:ファンタジア Wq.80 (H.536)
4.ベートーベン:ヴァイオリン・ソナタ 第9番 イ長調 Op.47 「クロイツェル」
アンコール:
5.C.P.E.バッハ:ヴァイオリン・ソナタ Wq.78より 第2楽章 Adagio ma non troppo

・庄司紗矢香が小生の一推しヴァイオリニストになったのは、メナヘム・プレスラーとの共演をNHKのクラシック倶楽部で見て以来(2015年?)だが、なかなか生演奏を聴く機会に恵まれなかった。
・好きなところは、一言で言えば、彼女の奏でる音が、だれよりも柔らかく繊細なのに、それでありながら芯があるように、小生の耳には届くからである。(以下「庄司紗矢香サウンド」)
・コロナ渦真っ最中の2年前2020年12月23日にオラフソンとの共演で、彼女の演奏を生で初めて聴くことができ、1曲目のバッハのソナタ5番の出だしで、「庄司紗矢香サウンド」を確認して、震え思わず涙した。

・2年ぶりに同じサントリーホールで、好きな曲「クロイツェル」を弾くことを知り、発売日に前から10番目くらいの席をゲットして、ずっと楽しみにしていた。
・今回は、ガット弦+バロック弓とフォルテピアノのデュオだと知った。
公演前にCDが発売されたので、予習のために購入して聴いたところ、今までのヴァイオリン・ソナタとは音が違ったので、びっくりした。
・今回は、予習のおかげで、冒頭から落ち着いてジックリ聴くことができた。

・感想: 1.と2.は、CDで何度も聴いていたが、
1)CDでは、フォルテピアノの音量のメリハリがありすぎるくらいあったが、生演奏では、フォルテピアノの音量は小さかった。
 カシオーリがヴァイオリンを引き立たせるために、音量を抑えめにしていたのか、それとも、実際のフォルテピアノの音量は小さくが、CD録音はマイクを使うためメリハリがあったのか、理由はわからない。
 実際、フォルテピアノの生演奏を聴いたのが初めてだったので、この点はわからない。

2)ガット弦については、ヴァイオリン講師のYOUTUBERによると、柔らかい綺麗な音がするが、レスポンスが悪く、湿度の弱く、調弦が狂いやすく、扱いが難しいとのことだった。
 元々の「庄司紗矢香サウンド」にガット弦の柔らかい音でさらに柔らかさが増すかと予想していたが、そのとおりで、特にビブラートを思い切りかけて弓を弾く部分や、ゆったりと音量を小さく弾くべき部分は柔らかすぎるほど、伸びやかで、本当に胸が切なくなるほどの「琴線に触れる」音を奏でた。
 一方、3.「クロイツェル」の出だしなど、高速でバリバリと強く弾く部分は、結構力を入れて弾いているように見えた。そのためか、音のアーティキュレーションが通常の弦の演奏よりも良くないのではないかと思った。(これも、観客の心をかき乱す効果を狙ったのかもしれないが。。。)

3)二人とも、装飾音やアドリブ的な要素をたくさん入れていた。集中して聴いていないと、これらの音を捕り逃すので、全体で2時間くらいのコンサートが、あっという間に終わってしまった。しかも、終わってからも、耳や体全体に音が残った。(演奏から、3日たった今でも、まだ、頭の中に残っている。)
新しい庄司紗矢香サウンド、「=ネオ庄司紗矢香サウンド」を見つけた感じがする。

4)アンコールのC.P.E.バッハの曲は、ヴァイオリンの音がさらに抑えられていてすすり泣くようだった。よく見ると、ヴァイオリンの駒(ブリッジ)の部分にミュートが付けられているようだった。

5)2年前のオラフソンとの共演は、彼女が足を痛めたため、椅子に座りながらの演奏だったが、今回は、立って演奏するのが新鮮だった。
 フォルテピアノがグランドピアノより小さいためもあってか、奏者二人の距離感が近いような気がした。それだけ、二人の息が合っていたということだろう。

6)ツィッターの感想を見ていると、ほとんどの観客は好意的な評価だが、中には、「酷い」演奏だと言っている人がいた。
 確かに、通常演奏の、モーツァルトやベートーベンとは、極端に音や演奏法が違うということで、extraordinary な演奏であることは間違いないと思う。
 小生や多くの観客には、良い方にextraordinary なのだが、人によっては、悪い方に、extraordinaryだったのだろう。
 小生は、このextraordinaryさも、「庄司紗矢香サウンド」も大好きなのだが、この日のサントリーホールも満席ではなかったように、好き嫌いのわかれる、「とんがった」演奏なのだろう。
 「とんがった」演奏でも、客が集まり続ければ本当に良いのだが、でないと、庄司紗矢香サウンドを聴くために、海外へ行かないといけなくなることになるのを心配している。

7)2023年は、ソロではないが、N響との共演や、室内楽をサントリーホールで演奏するスケジュールとなっているようなので、今から「庄司紗矢香サウンド」を聴けることを楽しみにしている。

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