ヨーロッパ文化教養講座(フィガロの結婚 シナリオ読破プロジェクト11 伯爵夫人のカヴァティーナ)

2022/12/08

第2幕 Atto Secondo

Scena I 第1景
伯爵夫人の私室にスザンナとフィガロが入ってくる。

No.11 Cavatina 第11曲 カヴァティーナ

伯爵夫人:
Porgi amor qualque ristoro
Al mio duolo, a’miei sospiri.
O mi rendi il mio tesoro,
O mi lascia almen morir.

-> Amor(ラテン語愛の神), porgi qualque ristoro al mio duolo, ai miei sospiri.
なにがしかの慰めを与えて下さい、私の苦しみに、私の嘆きに。

#porgiが、親称形(tuに対する命令形)なのは、愛の神は身近にいるということだろうか?
中世英語にも、親称形 thou (イタリア語ではtu)敬称形 you(イタリア語では、Lei)があって、神さまに呼びかけるときは、親称形 thouを使うということだったので、モーツアルトの時代のイタリアでも、そうだったかもしれない。

O mi rendi il mio tesoro, それとも、私の宝をお返し下さい。
O almeno mi lascia morire. それとも、少なくても、私を死なせて下さい。

-> rendi,lascia もそれぞれ、rendere, lasciare の親称形の命令法。

#「電子版」の解説によると、ボマルシェの原作では第1幕で伯爵夫人は登場済みなので、初登場するオペラでのこのセリフは、独自のものだとのこと。

感想:
第2幕のこの曲は短いが本当に美しい、静かな曲なので、第1幕のドタバタの後で、場面転換には、最高だと思う。
浮気者のアルマヴィーヴァ伯爵に苦しめられている心情を愛の神さまへ訴えている。

Recitativo レチタティーヴォ
その後は、長めのレチタティーヴォで話が進む。
伯爵夫人とスザンナ
・スザンナが伯爵夫人に伯爵から誘惑されたことを報告すると、伯爵夫人は嘆く。
・スザンナが、そんな伯爵が嫉妬するのは不可解だと言うと、伯爵夫人は、男はプライドのためにみんなそんなものだ、でも*フィガロだけはきっとと言う。

フィガロだけはきっと
*  原文 は potria( = もしかして でき 得る) で ある が、 何 が できる のか? 私 たち の 味方 に なっ て 助け て くれる こと、 で あろ う。

電子版より


フィガロが登場
・伯爵が*初夜権を復活するために、マルチェッリーナを使うと言っていると告げ、それを防ぐための計画があると説明する。
1)伯爵夫人が偽の恋文をバジリオを通じて伯爵に渡るようにする。
2)伯爵は、その件の追求が忙しくなり、その隙に、結婚式を挙げてしまおう。
スザンナは、マルチェッリーナが邪魔をすると言うと、
3)フィガロは、更に、スザンナが伯爵を夕刻庭に誘い、ケルビーノを女装させて、スザンナの代わりに庭へ行き、その場を伯爵夫人が取り押さえれば良いという。
4)伯爵夫人とスザンナはフィガロの提案に賛成したので、伯爵が狩りに行っている間に、ケルビーノをここへ寄越しますという。

*  フィガロ は“ 領主権 を 元 に 戻す” のは 当たり前 と 言い ながら、“ スザンナ が 望め ば” と 言い 添える。 これ は 領主 と いえ ど 強権 的 に 無闇 に 領主権 を 振りかざし て 女 を 手 に 入れ られる と 考え て い ない こと を 意味 し、 ボマルシェ の 原作 には 見 られ ない 一言( 原作 では“ 当然 の 話” と のみ)。 原作 執筆 から わずか な 年月 で 女性 の 立場 に 変化 が 生じ て いる こと と ダ・ポンテ 個人 の 人生観・女性 観 による もの だろ う。

電子版より


伯爵夫人が「E poi? その後はというと」

フィガロ:
Se vuol ballare
Signor Contino,
Il chitarrino
Le suonero’.

-> Signor Contino, se vuole ballare, Le suonero’ il chitarrino.
可愛い伯爵様、もし貴方が踊りたければ、小さなギターをお弾きしましょう。

と、歌って、退場する。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?