ヨーロッパ文化教養講座(「おわかれはモーツアルト」)

2022/09/18
モーツァルトの協奏曲をテーマにした、中山千里の「おわかれはモーツァルト」に登場した、モーツァルトのピアノ協奏曲20,21,23は、モーツァルトがパトロンからの依頼ではなく、ウィーンで、自ら企画、開催したコンサートで発表されたもので、モーツァルトが最もウィーンで人気があったときの作品である。
これらの作品は、モーツァルトの新作であるから、当時のリスナーとしては、もちろん、クラシック(古典)ではなく、コンテンポラリーなものであったはずだ。とくに、250年以上だった現在でも、名曲として繰り返し演奏されていることから、当時は、耳に新しいサウンドであったかも知れない。モーツァルトが流行作家だったとするれば、流行作家の新曲を聞きに行くという、ミーハーファンもかなりを占めただろう。
ミーハーファンには、これらの名曲を味わう力はなかったようで、モーツァルトの企画コンサートはすぐに飽きられてしまった。

ゴッホやアンリ・ルソーのように、生前の評価はゼロに近い大作家もいたことを考えると、モーツァルトはまだましであったが、その生み出した800曲近い素晴らしい作品のことを考えると、神童として、神様の恩寵は人よりはるかに受けたとしても、時代の恩寵は受けなかったということになる。

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