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ヨーロッパ文化教養講座(「黄金のアデーレ 名画の帰還」鑑賞記)

2023/01/06
映画の内容は実話に基づいているが、正に「事実は小説より奇なり」である。

WIKIに詳細が書いてあるので、ここは、要点だけ記する。

オーストリア出身のユダヤ系アメリカ人、マリア・アルトマン(演 ヘレン・メリル)が、オーストリア政府からクリムトの絵「黄金のアデーレ」を取り戻すというお話。

この絵は、マリアの叔母(アデーレ・ブロッホ=バウアー)をモデルにクリムトが描いた絵。
アデーレの夫(マリアの叔父)はチェコの砂糖王と言われた大富豪で、多くの芸術家のパトロンとなっていた。
第二次世界大戦中、ナチスドイツがオーストリアを併合し、オーストリアでもユダヤ人迫害が始まった。
マリアは新婚の夫と共に、イギリス経由でアメリカへ亡命する。
マリア一族の資産は、ナチスに没収され、「黄金のアデーレ」を含むクリムトの絵も、戦後ウィーンのベルベデーレ美術館で展示されていた。

戦後数十年たち、ナチスが没収した美術品を持ち主に返還すべしという機運がオーストリアでも起こった。

そこで、「黄金のアデーレ」を(法的には)相続してた、マリアが、若き弁護士エリック・ランドール・ショーンバーグ(作曲家のシェーンベルクの孫 演 ライアン・レイノルズ)に本件訴訟を依頼する。

オーストリアという国を相手に、帰化してアメリカ人となった、マリアという個人が、訴えて、最終的には、絵を取り戻す。

感想:
 オーストリアとアメリカの外交問題に発展する可能性があったため、両国の行政担当から、妨害は多々あったとは思う。
 それでも、最終的に、法的手続を取って、所有者の元に返還されたということは、オーストリアもアメリカも法治国家である印だと思った。
また、オーストリア国民としても、ナチスが犯した大罪に対する、謝罪の気持ちは今でも持ち続けているのだろう。(でないと、3億ドルの価値がある美術品を国外へ渡すということに抵抗したはずだ。)
 為政者に忖度してしまう情けない行政官を見てきた日本人としては、この点はうらやましい。

 弁護士のシェーンベルクが、世界的作曲家の孫だということは、本事件を門前払いにできなくする効果は大きかったと思う。そういう意味では、ナチスによる悲劇によって、一般社会の事件とはなったが、本来は上級社会内での抗争なのだろう。と思った。

「ゴスフォードパーク」でもそうだったが、ヘレン・メリルの演技は素晴らしい。
名優は存在感自体が周りを圧倒すると思った。

その他:
英語版WIKIによると、マリア・アルトマンとその夫は、イギリスのカシミア織りをアメリカに広めたとのこと。映画で、マリアがブティックを経営していたのも、この関係だろう。

アメリカの地裁の判事役が、「ダウントン・アビー」のコーラ伯爵夫人(演 エリザベス・マクガヴァン)だった。

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