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ヨーロッパ文化教養講座(日本映画「敦煌」鑑賞記)

2023/07/25
何十年も前に読んだ井上靖の「敦煌」は、面白い小説だという記憶のみが残っていた。
映画になっていたのは、知らなかったので、今回WOWWOWで初めて観た。

戦乱の世、11世紀のシルクロードで、敦煌の文化遺産を守ろうとした青年の活躍を描く。井上靖原作の同名小説の映画化で、脚本は「必殺! ブラウン館の怪物たち」の吉田剛と「植村直己物語」の佐藤純彌が共同で執筆。監督は同作の佐藤、撮影は「春の鐘」の椎塚彰がそれぞれ担当。
1988年製作/143分/日本
原題:Dun-Huang
配給:東宝

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ストーリー
11世紀の宗。科挙の試験に落ちた趙行徳は、街で西夏の女を助けた礼として、西夏への通行証をもらった。
西夏の文字に興味をもった趙は西域へと旅立つ。
灼熱の砂漠を尉遅光の隊商と共に歩いていたが、途中で西夏軍漢人部隊の兵士狩りに会い、無理矢理入れられてしまう。
隊長の朱王礼は文字の読める趙を重用した。
漢人部隊がウイグルを攻略した際、趙は美しい王女ツルピアと知り合い恋におちた。二人は脱走を試みるが失敗、趙は西夏王・李の命令で都へ文字の研究に行くことになった。
二年後、趙が戻ると、李はツルピアと政略結婚しようとしていた。
趙も朱にもどうすることもできなかったが、婚礼の当日ツルピアは自殺した。
ツルピアに思いを寄せていた朱の怒りは爆発し、敦煌府太守・曹を味方につけて李に謀反を起こした。
敦煌城内で死闘を繰りひろげる漢人部隊と西夏軍本部隊。初めは漢人部隊が優勢だったが敦煌城に火矢が放たれ、朱側は火に包まれた。
戦うことより文化遺産を戦火から守ることに使命を見出していた趙は、教典や書物、美術品などを城内から莫高窟へ運び込んだ。
それから900年が経ち、莫高窟からこれら文化遺産が発掘され、敦煌は再び世界の注目を集めたのだった。

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コメントと感想:

1.1988年製作ということで、日本はバブル経済の真っ最中。
これほど大がかりな海外ロケをして、50億円近いお金を掛けられたのが、今では信じられない。
先日始まった、日曜劇場「VIVANT」もモンゴルロケで相当お金を使ったらしいが、今の時代はCGを駆使できるので、そこが大きく違うところだろう。

2.内容は、1900年くらいに、西夏文字で書かれた仏典が大量に発掘されたという事実を基に、井上靖が想像力をフルに発揮して書かれた小説をかなり忠実に再現しているようだ。

3.今は亡き渡恒彦が演じた、西夏の創始者李元昊の時代なので、西暦1040年ごろの話。
日本では藤原道長が亡くなったのが、1028年。
ヨーロッパでは、カトリック教会と東方教会が分裂する、いわゆる大シスマが1054年。
このころの時代だということになる。

4.日本人俳優(西田敏行や、佐藤浩市など)が西夏人や宋人の役を演じるのだが、ほとんど日本語で会話する。
のだめカンタービレ的?

5.映画としては、歴史ロマンスということになる。
最後まで面白く観たが、この時代の中国の歴史の知識がほとんどないので、結局、経典が何者かによって、隠されて、それが発掘された、という事実しか残らないように思った。

6.いずれにせよ、このような歴史ロマンを創造する井上靖の作家としての能力は凄いと思った。

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