基礎生命科学II(先取り履修用情報公開)③

前の記事に引き続き、授業内容の見本公開(前期に実施済の基礎生命科学Iから)
※今回から、少し深掘り解説が入って難しくなります(学校英語の範囲外)

【アンケート演習での文法解説の例】

まずは《正解は次の記事で》の答えあわせ

冠詞経験を積んでもらうための解説❶:不定冠詞 vs 定冠詞、study vs research
シャーロック・ホームズの「緋色の研究」の原題は?
正解:A Study in Scarlet
解説(一部は私の個人的解釈):まず研究はあくまで比喩、実際は1つの事件を扱っているので可算名詞が適切(可算名詞studyは1つ1つ別の研究、不可算名詞researchは集合名詞、と考えれば分かりやすいかも)。不定冠詞aだと幾つもある緋色の研究の1つ(他にも緋色の研究が存在する前提)、定冠詞theだと唯一無二の緋色の研究(他に「緋色の研究」と呼べるものが存在しない前提)。
冠詞経験を積んでもらうための解説❷:不定冠詞 vs 定冠詞
H. G. Wellsの小説「透明人間」の原題は?
正解:The Invisible Man(ヒント:作中で透明になるのは1人だけ)
解説(一部は私の個人的解釈):この作品世界の中で唯一の「透明人間」(特定個人なので実質的に固有名詞:名前も特定可能)。この"Invisible"は単なる形容詞ですが、「人間」とセットで特定修飾(透明人間がどれだけレアな存在であるかは常識で考えれば分かるはず、作中で何人登場するかは原作者が自由に決めていいので単数も複数も可能)

以下、新たな例を追加

冠詞経験を積んでもらうための解説❸
日本最初の本格的な哲学書として有名な「善の研究」(西田幾多郎 著)の英訳タイトルは、"An Inquiry into the Good"と"A Study of Good"の2パターン存在。注目ポイントは2つ。
1.Goodにtheをつけるかつけないか:上記のように両方あって議論の余地あり
2.StudyもInquiryも不定冠詞つき:この点は議論の余地なし(のはず)
 一般論として、「〜の研究」に簡単にtheをつけてはいけません。様々な人達が過去に発表してきた研究の継続の一つで、今後もそうした研究が続くものなので、不定冠詞が適切。

冠詞経験を積んでもらうための解説❹
短編集「シャーロック・ホームズの冒険」の原題は、"The Adventures of Sherlock Holmes"(the +  adventure複数形)。この"of Sherlock Holmes"は「冒険」とセットで特定修飾(シャーロック・ホームズ個人の冒険に特定、他の人の冒険は除外:ある意味、商標登録の発想に近いかも)。
 一方で、"in Scarlet"や"into the Good / of Good"は「研究」とセットでも単なる形容修飾(誰でも使える「色」や誰でも自由に語れる「抽象概念」で特定するのは困難、他の人も同じタイトルの研究を実施して発表する権利がある、と言う説明で納得していただけるでしょうか)

実は厳密な区別が必要な用語:「限定(用法)」に対する「形容修飾」と「特定修飾」(本当は「限定修飾」と言いたいところですが)

文法的に説明するなら、単なる形容修飾(不定性=他にも存在≒共通名詞/共有名詞)と特定修飾(定性=唯一無二の存在≒固有名詞)は大きく違うので厳密に区別(意味をしっかりと考えることが重要、商標登録的発想も有効)。この点が実は「不定冠詞vs定冠詞」(対立概念)を理解する鍵。
※「形容修飾」も「特定修飾」も私が勝手に使っている用語ですが、その点はご了承ください。
「限定」「特定」「形容」:学校英語の「限定用法(関係代名詞、形容詞、分詞)」は特定修飾形容修飾を区別せずにまとめている点が冠詞選択の上では大問題。特定修飾(IDを絞り込めるので、初出でもthe)形容修飾(IDを絞り込めないただの形容詞(句)で、初出のa/an(無冠詞またはゼロ冠詞))は、冠詞を選択する際には厳密な区別が必要ですが、いわゆる「限定(用法)」ではその区別ができません。この点は学術英語でもきちんとは取り扱われていないようなので、ここでいきなり言われても理解するのが難しいかもしれませんが、theを使うかan/an(無冠詞またはゼロ冠詞)にするかの違いの根拠だと言えばご理解いただけるでしょうか。
※商標登録的発想の一例:コナン・ドイルだけが"XX of Sherlock Holmes"というタイトルの作品を書く権利を有し、さらにホームズに特定することでタイトルに自由にtheを使える

冠詞経験を積んでもらうための解説❺:不定冠詞 vs 定冠詞
以下に、シャーロック・ホームズ作品リストをWikipediaから引用。
長編小説
 A Study in Scarlet(これだけ不定冠詞:the studyとしない理由は解説済)
 The Sign of the Four(特定の4名:人数)
  The Sign of Fourとも表記(theがないと4が何を意味するか曖昧)
 The Hound of the Baskervilles(特定の家族)
 The Valley of Fear(ほぼ地名≒固有名詞:正式な地名というより通称)
短編集
 The Adventures of Sherlock Holmes(固有名詞で特定)
 The Memoirs of Sherlock Holmes(固有名詞で特定)
 The Return of Sherlock Holmes(固有名詞で特定)
 His Last Bow: Some Later Reminiscences of Sherlock Holmes(ここでは限定詞hisの説明はパス)
 The Case-Book of Sherlock Holmes(固有名詞で特定)
(個人的には、短編集のタイトルとして毎回違うものを考えるのは大変だったろうな、と思います。)

冠詞経験を積んでもらうための問題❻:英作文力の向上につながる応用
①シャーロック・ホームズの長編「緋色の研究」の原題:A Study in Scarlet
②哲学書「善の研究」の英訳タイトル:An Inquiry into the Good / A Study of Good
問題:レポート等の作文でこの2作品に言及する場合、初回はフルで言及(引用)するのが普通ですが、2回目にはそれぞれ何と省略するか、①と②に分けて、英語とその和訳のセットを思いつく限り複数列挙
(いわゆる「既出のthe」表現の上級者向け問題:第一候補は代名詞it、それは除外して必ずtheを使用すること、①と②でジャンルが違う点にも注意)
《正解(候補)は次の記事で》

改めて、「初出でもthe」の例と問題:学校英語では「the=話し手と聞き手の共通認識」や「既出のthe」と説明されますが、実用的には「初出でもthe」が頻出。
(以下、太字部分は私が入力)
1. 「透明人間 The Invisible Man」の第1章タイトルと1文目
(長いので、Februaryまでで十分)
Chapter 1 - The Strange Man's Arrival
 The stranger came early in February, one wintry day, through a biting wind and a driving snow, the last snowfall of the year, over the down, walking from Bramblehurst railway station and carrying a little black portmanteau in his thickly gloved hand.
2. 川端康成先生の小説「雪国」とサイデンステッカー博士の英訳”Snow Country”の冒頭部分(英訳タイトルは無冠詞/ゼロ冠詞である点にも要注目)
 国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。
 The train came out of the long tunnel into the snow country.
問題:「雪国」で、和文と比較して英文で冒頭1文目からtheが3つ出現する理由を考察
《解説は次の記事で》


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