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干潟について 1

2003年に書いたものですが…

a.          干潟の類型と構造

干潟は,潮の干満によって干出と冠水を繰り返す傾斜の緩やかな砂泥地である。干潟のできる場所によって河口干潟,前浜干潟,潟湖干潟に分けることができる(図1)。また,底質によって,砂干潟,泥干潟という分け方もされる。砂と泥(シルトおよび粘土)の境界は0.063mmである。-河口干潟は,河口の岸や中洲,河口前面に形成される,川幅や川の地形によって,規模や底質に多様性が大きい。前浜干潟は,内湾の湾奥にできる遠浅の海岸で,有明海など大面積なものがみられる。波によって洗われる場所では,砂質の干潟となるが,波の影響の少ない場所では泥干潟となる。潟湖干潟は,河口域に形成され,海水の入り込む湖や沼のような半閉鎖型水域である。

図1 干潟の分類

干潟の成因は主に河川からの土砂や栄養塩の供給による。したがって,遠方の山地から海までのひとつづきの要素がそろってはじめて成立する生態系と言える。さらに,干潟の最上位の捕食者である水鳥は,シベリアやオーストラリア,東南アジアを往復する渡り鳥であり,地球規模での健全な生態系の維持なしには成立し得ない。
 干潟は潮の干満によってできるため,干満差が重要である。干満差は地域によって異なり,わが国で干満差の大きいのは,九州の有明海で最大6m,瀬戸内海沿岸で2-4m,日本海沿岸は小さく,30cm程度である。
 干潟はもともとヨシ原,海岸林と変化する後背地を伴っているのが普通である。ヨシ原は,鳥などに隠れ場所や餌を提供したり,川によって運ばれてきた有機物のプールとして,また,波を緩和するなど,さまざまな機能を持つ重要な環境要素である。また,亜熱帯では,干潟の背後にマングローブが発達する。
 地盤の凹凸によって干潟には微地形が形成される(図2)。タイドプールは,干潮時に出現する浅い水たまりである。クリークは潮の干満時に水が流れることによってできる澪と呼ばれる流路で,感潮クリークともいう。また,干潟の表面には砂が川や潮の流れによって堆積するときにできたカレントリップルや波の作用によってできるウェイブリップルという模様が形成されている。干潟の背後や内湾の波の静かな河口付近に形成された砂州の内側には,塩分を含んだ塩沼と呼ばれる池や,潮汐の影響を受ける湿地である塩性湿地が形成される。

図2 干潟とその周辺地形
HWL(朔望平均満潮位):新月または満月の前後に観測される最高潮位の平均値 LWL(朔望平均干潮位):新月または満月の前後に観測される最低潮位の平均値

わが国の干潟は,1994年の自然環境保全基礎調査では,51,443 ha,1978年から3,857 ha,7.0%が消滅した。(1998年には49,573 ha)1945年には82,621 haであったとされる(磯部1994)。これに対して,人工干潟の造成は2001年までの間に300haに過ぎない(https://www.mlit.go.jp/kowan/new-hp/index5-3.htm)。

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