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淡水湿地のシギチドリ

海外の文献の紹介、第1回。
Conservation implications of flooding rice fields on winter waterbird communities. Elphick, C. S., & Oring, L. W. (2003). Conservation implications of flooding rice fields on winter waterbird communities. Agriculture, Ecosystems & Environment, 94(1), 17-29.
はじめに

カリフォルニア州には14 万から 18 万 haの水田があり、その大部分はセントラルバレーの北半分にある。ちなみに、日本の水田面積は236万haである。セントラルバレーでは少なくとも200 000から375 000羽のシギ・チドリ類が越冬する(Shuford et al. 1998)

カリフォルニア州で、収穫後に稲株を燃やす面積を減らして大気質を改善する法律が導入された(Rice Straw Burning Act, AB 1378, 1991)。この法律により、多くの稲作農家が冬期に田畑に湛水し、稲わらの分解を促進するようになった(Brouder and Hill, 1995)。

この研究では、(1)湛水した水田と湛水しなかった水田では水鳥の利用が異なる、(2)藁の管理方法が異なれば水鳥の利用も異なる、(3)水深によって水鳥の利用が異なる、という三つの仮説に基づいて、水鳥密度、種数、水鳥保護に対する場所の貢献度を評価する指標について農地間の差異を検討した。また、降水量が大きく異なる2つの冬(Elphick and Oring, 1998)、およびデータを収集した地域間の違いも検討した。


方法

調査は、1993/1994年と1994/1995年に行われた。最初の冬には37の湛水田(総面積=797.2 ha、平均面積±S.E.=21.5 ± 4.1 ha)と16の非湛水田(486.5 ; 30.4 ± 7.1 ha)が、次の冬には25の湛水田(699.3 ha;28.0 ± 5.4 ha)と15の非湛水田(398.3 ha;26.6 ± 6.4 ha)。

湛水田では6種類の藁の管理方法が区別できた:(1) 藁の管理なしで湛水、(2) 藁と株を平らにするために転圧した後に湛水、 (3) 泥に固まる藁の範囲を広げるために湛水後に転圧、 (4) 表面積を広げるために藁を切った後に湛水、 (5) 耕耘して藁を切り、一部を埋めて湛水、 (6) 焼却または梱包により、藁を取り除いてから湛水。

 カリフォルニアの水田の多くは、水深管理を容易にするために、畔で細分化されている。その区画を調査単位とした。サイズは0.51~19.14 ha(平均±S.E.=6.64±0.28 ha)であった。

 11月中旬から3月末まで、約10日間隔で、水田と畔にいる鳥の個体数を記録し、上空を飛ぶ個体は記録しなかった。


結果

湛水田はそうでない畑よりも有意に多くの種が利用していた。藁の管理方法も水鳥の種数に影響し、湛水後に転圧された圃場では豊かさが最も高く、湛水前に藁が取り除かれた圃場では最も低かった。

図1. 異なる管理処理における平均±S.E.種の豊かさ。(A) 湛水(fld)と非湛水(unflood)の圃場。(B)藁の処理による。(B)藁の処理方法:刻んだ後に湛水(chp & fld)、湛水のみ(fld only)、湛水後に転圧(fld & rl)、耕耘後に湛水(inc & fld)、湛水後に転圧(rl)。土壌に混ぜた後浸水 (in & fld)、転圧後湛水 (rl & fld)、取り除いた後湛水 (rmv & fld). サンプルサイズは各棒の上に記載されている。

水鳥の種数は水深10-15cmと35-40cmにピークがあった(図2)。水深別の面積を考慮すると種数は中間の水深にピークがあった。
水鳥総個体数は年による違いはなかったが、シギチドリは1993/1994の乾燥した冬に高密度であった。
 ガンカモ、シギチドリ、全水鳥の密度は湛水田が非湛水田より有意にに高かった(図3)。シギ・チドリ類は、1994/1995年には耕作によってわらを鋤きこんだ水田は、湛水前にわらを刻んだ水田よりも有意に多く利用したが、1993/1994年には差が見られなかった

図3. 湛水田と非湛水田における鳥類の平均±S.E.密度(鳥類数/ha)。の鳥類密度(鳥類数/ha)。(A) 渉禽類、(B)ガンカモ、(C)シギ・チドリ類、(D)水鳥の合計。湛水田と非湛水田のそれぞれのサンプルサイズは、それぞれ 37と16(1993/1994年)、25と15(1994/1995年)、47 と26 (両年とも) であった。統計量は、順位変換後のMann-Whitney検定による。

水深が深くなるにつれて、渉禽類、ガンカモ、水鳥全体の密度は増加し、シギ・チドリの密度は減少した。

図4. 鳥類がいなかったプロットといたプロットの水深の平均±S.E.。(A) 渉禽類,(B) ガンカモ,(C) シギチドリ,(D)水鳥の合計。有意差統計量は分離変量t検定の場合。


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