読書メモ:Rereading Darwin's Origin of Species

Rereading Darwinʼs Origin of Species: The Hesitations of an Evolutionist, by Richard G. Delisle and James Tierney, 2022. Bloomsbury Academic, London. 176 pp. ISBN: 9781350259577

本書は、奇妙な質問から始めている「チャールズ・ダーウィンは本当に進化論者だったのか?」

ダーウィンの『種の起源』に新たなアプローチを提供し、19世紀の学者がどのようにして近代的な進化論を提唱したのか、その過程での思想の変遷や影響を探求している。ダーウィンは確かに偉大な業績を持つが、その業績の裏にある複雑な背景や考え方を理解することで、彼の進化論がどのように形成されたかが明らかになる。本書は、ダーウィンの業績を新たな視点から再評価し、彼の思想の発展とその影響を探求する貴重な資料である。

もちろん、ダーウィンの業績は依然として驚くべきものである。ダーウィンの進化論は、静態的な世界観から進化的な世界観への転換に伴う知的挑戦の重要性を強調しており、彼の理論は古い考え方と新しい考え方の妥協の産物であると述べている。このようなアプローチは、ダーウィンをはじめとする19世紀の学者たちの成果と課題を再評価する手助けとなると指摘している。

エドワード・ウィルソンは『社会生物学』で、進化生物学がダーウィンの業績を基盤として成り立っていると述べた。また、スティーブン・ジェイ・グールドは『The Structure of Evolutionary Theory』でダーウィンの偉業に感嘆し、彼の理論が進化学の基盤となったことを強調した。

ただし、このような賞賛がダーウィンに対する誇張とも言える。ダーウィンの業績は確かに重要であり、進化学の基礎を築いた一人だが、彼の考えがそのまま受け継がれたわけではない。ダーウィン神話は、彼の天才から始まり、確固たる科学理論として現代の進化思想の基礎になったとする主張だが、実際には彼の後継者たちが独自のアイデアを加えて進化学を発展させてきたことを考慮すべきである。

さらに、ネオダーウィン主義者はダーウィンの後継であると自称することで、自らを権威づけた。

2014年に、科学雑誌『ネイチャー』が進化論の再評価の必要性について議論を取り上げた。一部の科学者は再評価が必要だと主張したが、別のグループは進化論がすでに充分に発展しており、ダーウィンの考えが有用であると述べた。

科学の多くは発見と説明の技術にあるが、科学的思考はまた、批判的で懐疑的なものであり、仮定に疑問を投げかけ、訓練を受け、かつては揺るがないと考えられていた土台を揺るがすものである。ダーウィン自身、この問いかけの精神の典型的な例であり、当時の科学的思考だけでなく、深く根付いた文化的・宗教的秩序をも脅かすいくつかの仮定にあえて挑戦した。

『種の起源』は一見難しそうな書物である、それはダーウィンが論証や事実を微妙に錯綜させ、想像上のシナリオを多用することで知識のギャップを埋め、隠された、しかし重要なコミットメントを目立たなくする傾向のある論証戦略で矛盾を隠しているためであるとしている。

ニュートンが”巨人の肩の上に乗っている”と言ったように、科学は過去の進歩の上に成り立っている。また、自然科学といえども、社会の影響を受ける。19世紀のダーウィンのような学者が独力で近代的な進化論を提唱できたかについて疑問を投げかけ、彼らが当時の考え方にどのように影響されたかを探求している。本書は、ダーウィンの『種の起源』には17~18世紀の古い思想が混在しており、現代の進化論を支えるには不向きな要素もあることを指摘している。

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